| 4 電位 | ||
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[1] まず,ベクトル解析の結果[#]を引用すると,
なめらかな(閉)曲面の方程式が「 φ(x,y,z)- c = 0 ; c 定数 」と表されているとき,この曲面上の単位法線ベクトル[#]は,
n ( x,y,z ) = 1 ( φx,φy,φz )
(φx)2+(φy)2+(φz)2
と表すことができます。ここで,φx はφ の x に関する偏導関数,他も同様です。また,ベクトル,
(φx,φy,φz) = grad φ=∇φ
は関数 φ(x,y,z) の勾配(グラジエント)[#] と呼ばれます。 なお,係数の[(φx)2+(φy)2+(φz)2]-1/2 はn (x,y,z)の大きさを1とするための規格化因子で,ここでの議論ではあまり重要ではありません。この単位法線ベクトルの定義式を少し言い直して,
「 φ ( x,y,z ) = c (一定) なる曲面上の点(x,y,z) で勾配ベクトル(φx,φy,φz) を考えると,このベクトルはこの曲面に(必ず)直交している。 」
とすることができます。もちろん180°反対を向いたベクトル (−φx,−φy,−φz ) も曲面とその点で直交しています。
そこで,電場ベクトルE (x,y,z)に対して,
−gradφ=(−φx,−φy,−φz) =E (x,y,z)
を満たすような φ(r )≡φ(x,y,z) を考えると,電場 E =(−φx,−φy,−φz ) は φ(r )=c (定数) となる曲面に垂直となっていることがわかります。このようなφ(r )を静電ポテンシャル,または電位といいます。ここで,わざわざマイナスの符号が付くように定義するのは,φ( =c )が減少する方向を電場の正方向と一致させたいためです。
(そうすると,電場中に置かれた ”正電荷” に働く力の方向と電場の方向が一致して気分がいい!)
| 電位の定義 電場E (r ) に対して, −grad φ(r ) = E (r ) を満たすような φ(r ) を電場E (r ) の電位と言う。 |
また,φ(r ) =c 一定の曲面を等電位面といいます。電場は等電位面に垂直であり,電位の小さい方向を向いています。なお,φ(r )が電場E (r )の電位であるならば,gradχ(r )=0 となるχ(r )を付加したφ(r )+χ(r ) もE (r )の電位です。つまり,電位は一意的に定まる関数ではありません。
[2] 具体的に点電荷Qの作る電場の電位を求めて見ましょう。いま,電場を
E = kQ ・ r |r | 3
とすると[#],電位 φ(r ) を,
φ (x,y,z) = kQ ・ 1 |r |
とすれば,−gradφ = E を満足することが簡単な計算からわかります→[#]。先ほど述べたように,このφ に gradχ =0 なる項χ(積分定数)を加えてもよいのですが,ふつうは,r→∞ で電位が 0 となるようにこの項を 0 と定めます。これを,
「電位の基準を無限遠が0 となるように定める。」
という言い方をします。また,電位 φ(x,y,z) = c (一定),すなわち,点電荷からの距離|r|が一定値となる面たちを考えると,これはもちろんいろいろな半径r をもつ球面の集合ですが,それぞれの球面に対して電場は,したがって,電気力線[#]は垂直となっています。
一般に電荷が ρ(r) で分布している場合は,スカラー量であるφ(r )は単純な足し算ができるので,
φ ( x,y,z ) = k ρ(r) dV |r |
となります。
[3] ここまで φ を数学的な技巧として導入し,説明してきましたが,もちろん,このφが
静電的なポテンシャルエネルギーを表していることは言うまでもありません。
この事実は,ある点から dr 離れた点へ電荷q を運ぶときに,力F=qE が行う仕事(=エネルギー) dW が,
dW = F ・dr
= qE ・dr
= −q (φxdx+φydy+φzdz)
=−q (dφ)
のように計算されることからわかります。 (単位[V]の定義: [N][m]=[C][V] から決まります。)
ここで,電場ベクトルを E =(−φx ,−φy ,−φz ),位置の微小変位を dr = (dx,dy,dz),位置の関数の全微分を dφ=φxdx+φydy+φzdz としています。
[4] 上の最後の等号=はφが全微分可能である場合に成り立ちます。このとき,3次元空間の点P からQ へ電荷 q を運ぶための仕事は積分:
F ・dr = −q dφ =−q {φ(Q)−φ(P)}
で求まり, (↑記号が多少アバウトですが,意味は汲み取れますね?)
”電荷を運ぶ仕事は途中の経路によらず,始点と終点のポテンシャルだけで決まる。”
ことがわかります。 つまり,ポテンシャルを導入することで,エネルギー変化を求めるための計算が,左辺の線積分[#]から右辺のようなタダの引き算に還元できるというメリットがあるのです。
[5] いま,電場E が微分可能で,その導関数が連続とします。点電荷の場合, r = 0 の点を除けば確かにそうなっています。また,この条件は,電位 φ にとっては,2回連続微分可能なC2級関数[#]ということになります。
このとき,次のE の回転( rot E,または,∇ × E ) と呼ばれる(ベクトル)量
rotE= ∂E3 − ∂E2 , ∂E1 − ∂E3 , ∂E2 − ∂E1 ∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
を考えます。 E = (E1,E2,E3) = −( φx,φy,φz ) として,
rot E =− ∂φz − ∂φy , ∂φx − ∂φz , ∂φy − ∂φx ∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
=−( φzy−φyz,φxz−φzx,φyx−φxy )
とφの2階偏導関数で表せます。ところが,φ が C2 級関数についての解析学の教えから
φzy=φyz,φxz=φzx,φyx=φxy
が成り立ちます[#]。すなわち,成分はすべてゼロで,
| 点電荷の作る電場の回転 (r =0 の点を除く) rot E = 0 (零ベクトル ) |
となります。ベクトルの回転がゼロというのはベクトル場が渦を巻いていないという意味 ⇒ [#1],[#2],[#3] で,これは,
「電場が発生,消滅する場所は電荷の存在する点(この点ではポテンシャルは微分できない!)だけである。」
と解釈することもできます。
[6] 一方,E = −grad φ をガウスの定理の微分形 [#]: divE =ρ(r) /ε に代入すると,
divE =− ∂φx − ∂φy − ∂φz =− ∂2φ + ∂2φ + ∂2φ =−Δφ ∂x ∂y ∂z ∂x2 ∂y2 ∂z2
なので,ポアッソン方程式と呼ばれる次の微分方程式が得られます。
[ ポアッソン方程式 ]
特に,点電荷の場合は, ρ(r ) = Qδ(r ) とかけるので, ( デルタ関数 ⇒ [#] ) −Δφ = ρ(r ) / ε= Qδ(r )/ε
|
また, ポアッソン方程式で,ρ(r ) = 0 ( 右辺 = 0 ) とした微分方程式をラプラス方程式と呼びます。ここで,
Δ≡∇2 ≡ ∂2 + ∂2 + ∂2 ∂x2 ∂y2 ∂z2
はラプラス演算子と呼ばれます[#]。
[7] 最後に電位差と電圧の定義を書いておきましょう。
位置 r1,r0 の電位φ( x1,y1,z1 ),φ( x0,y0,z0 ) について,
φ(x1,y1,z1)−φ(x0,y0,z0)
を電位差といいます。またその絶対値,
V =|φ(x1,y1,z1)−φ(x0,y0,z0)|
を電圧と呼びます。単位は[V]です。
[1] 金属のように両端に電圧をかけて連続的に電気を流し続けられる物質を導体,そうでない物質を不導体,絶縁体,または誘電体といいます。右図は均一な電場の中に球状の導体と誘電体を置いたときの物質内外の電気力線の様子を示しています。導体内部に電場は全く侵入できないのに対して,誘電体中にはいくらか電場が進入している様子を描いています。
[2] なぜこのようになるかといいますと,導体中には自由電子と呼ばれる導体内部を自由に移動できる電子が多数存在します。従って,もし導体内部に電場が存在すると,その電場によって導体中の電子が力を受けて移動し,(1)最終的に電子は境界(導体表面)に集まり,その電荷分布が作る電場と外部の電場が導体内部で完全に打ち消し合ってゼロとなったときはじめて電荷分布は安定します。この様子を
「導体内部には電気力線が侵入できない」
という言い方で表現します。もう一つの特徴は導体内部に電場が存在しないということは(2)導体内部の電位はすべて等しいことを意味します。したがって,(3)導体表面で発生・消滅する電気力線は導体表面(=等電位面)に垂直[#]でなければいけません。それで電気力線は右上のように導体表面に直交するように描かれます。
[3] 一方,誘電体中で電子は個々の分子や原子に強く束縛されており,内部に電場が存在しても電子は分子・原子の束縛の範囲内でしか変位(小さな移動)しません。この変位によってできた電場は外部電場の一部を打ち消すように働きますが不完全です。つまり,
「誘電体内部には電気力線が一部侵入する」
と言うことができます。この様子は右のようになります。
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V [V] =[N][m][C]-1