10 ストークスの定理
f-denshi.com   [目次へ] 最終更新日:04/05/11
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1.ストークスの定理

[1] 単一閉曲線Cで囲まれた曲面S を,2つの媒介変数 u,t のベクトル方程式

r =(x(u,v),y(u,v),z(u,v))=r (u,v)

で表わし,x,y,z は u,v についてC2級の関数とします。このとき,面積分と線積分とを相互に変換する次の定理が成り立ちます。

ストークスの定理
 単一閉曲線C で囲まれた曲面S上で定義されたC1級のベクトル関数:

      A =(A1(x,y,z),A2(x,y,z),A3(x,y,z)),

に対して,
(∇×A )・n dS= At ds rotA・dS A・dr

[直交座標での成分表示]

これは曲面の各点での単位法線ベクトル,n =(n1,n2,n3) を用いて成分で書けば,
∂A3 ∂A2 n1 ∂A1 ∂A3 n2 ∂A2 ∂A1 n3 dS
∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
  =   (A1dx+A2dy+A3dz)

また,この式は次の3つの式を足し合わせたものである。

∂A1 n2 ∂A1 n3 dS = ∂A1 dzdx− ∂A1 dxdy  A1dx     ・・・ (1)
∂z ∂y ∂z ∂y
∂A2 n3 ∂A2 n1 dS = ∂A2 dxdy− ∂A2 dydz  A2dy     ・・・ (2)
∂x ∂z ∂x ∂z
∂A3 n1 ∂A3 n2 dS = ∂A3 dxdy− ∂A3 dzdx  A3dz     ・・・ (3)
∂y ∂x ∂y ∂x

ストークスの定理の物理的な意味については,Appendix3 三角形のストークスの定理 で説明していますので,そちらを参考にしてください。

(証明)  ↓ 媒介変数u,v を経由して証明します。Sに対応する uv空間の領域をU,その境界を C1とします

有界な曲面S上の任意の閉曲線をC とするとき,n dS=(ru×rv)dudv を用いれば[#],定理の,

 左辺 →  rotAndS 
   = rotA ・(r u×r v)dudv 
  = ∂A3 ∂A2 (yuzv−zuyv)+ ∂A1 ∂A3 (zuxv−xuzv)
∂y ∂z ∂z ∂x
.                            + ∂A2 ∂A1 (xuyv−yuxv) dudv ・・・・・・ [*]
∂x ∂y

 ただし,各Ak は変数xyzの関数として与えられているので,変数u,v についての積分はこのままでは実行できません。そこで,[*]の被積分関数から,A1 が関係する2つの項だけを抜き出して次のように式を変形します。

     ∂A1 (zuxv−xuzv)− ∂A1 (xuyv−yuxv)
∂z ∂y
   = ∂A1  yu ∂A1 zu  xv ∂A1  yv ∂A1  zv  xu
∂y ∂z ∂y ∂z
   = ∂A1  xu ∂A1  yu ∂A1  zu  xv ∂A1  xv ∂A1  yv ∂A1  zv  xu
∂x ∂y ∂z ∂x ∂y ∂z
   = ∂A1  xv ∂A1  xu      ← 合成関数の微分公式[#]を用いました。
∂u ∂v

ここで,x(u,v)はC2級なので,xvu=xuv であることに注意して[#],A1に関する項を積分すると,

  ⇒  ∂A1  xv ∂A1 xu dudv
∂u ∂v
   = ∂A1  xv+A1xvu−A1xuv  ∂A1 xu dudv
∂u ∂v
   =  (A1xv)−  (A1xu) dudv
∂u ∂v
      グリーンの定理[#]を用いて,(∂U=C1))
   =  (A1xu)du+(A1xv)dv
   = A1 (xudu+xvdv)    ←(・・・)はx (u,v) の全微分になってます。
   = A1dx

A2,A3 に関する積分も同様に求まり,結局3つの式を合計すると,

 左辺 [*] =  (A1dx+A2dy+A3dz)= A・dr

となります。

 このようにある閉曲線Cを指定すると,このCを縁とする任意の曲面S上でのrot A の積分が,曲面の形によらず縁の形状だけで決まることはガウスの定理から導かれます。

 ガウスの定理

divB dV= Bn dS 

において,B ⇒ rotA とすると,div・rotA=0 なので

   0= rotAn dS 

が成り立ちます。いま,この平曲面を右図のように単一閉曲線Cによって2つの曲面S1とS2に分けて考えます。ここで閉曲線を図のように定めると法線の正の向きはS2の領域においては分割前と較べて180°反転することに注意して下さい。[#]結局,

   0= rotAn dS+ rotAn dS  [分割前]
   0= rotAn dS− rotAn dS  [分割後]
すなわち,C を縁とする任意の曲面(S1,S2)について
rotAn dS= rotAn dS 
となります。



2.ストークスの定理の系

[1]  ストークスの定理の関わる電磁気学等で使われる重要な定理を示しておきましょう。

ベクトル関数 A =[A1(x,y,z),A2(x,y,z),A3(x,y,z)] について次の3つは同値

(1) 任意の閉曲線 C についてcA ・dr =0       ( r = ( x,y,z) )

(2) A∇φ=grad φ となるスカラー関数φ が存在する。 [ ポテンシャル関数の存在 ]

(3) つねに,rotA 0

(つねに,rotA 0 のとき、ベクトル場Aうずのないベクトル場 といいます。また,(2)の条件をみたすとき,Aポテンシャル場といいます。)

(証明)

(1)⇒(2)

媒介変数t を用いて計算するために,位置ベクトルを,

r =(x(t),y(t),z(t))  

と表すことにします。また,ある滑らかな曲線 C の始点を o =(x(0),y(0),z(0)),終点を r =(x(t),y(t),z(t)) とします。このとき,(1)ならばあるスカラー関数φ(r) が存在して,[#]

φ(r )= A・dr A1 dx  +A2 dy  +A3 dz dt
dt dt dt

が成り立ちます。この両辺を t で微分すれば,

∂φ  ・ dx ∂φ  ・ dy ∂φ  ・ dz A1 dx +A2 dy +A3 dz
∂x dt ∂y dt ∂z dt dt dt dt

これが任意の曲線 C上で成立するためには,

∂φ  =A1(t), ∂φ  =A2(t), ∂φ  =A3(t)  ⇔  A =∇φ
∂x ∂y ∂z

が成立しなければいけません。

(2)⇒(3) 証明済み[rot grad φ=0 [#] ]

(3)⇒(1) ストークスの定理と(3)の rotA0 を使うと,

 A・dr  rotA ・dS =0 

以上,おしまい。

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