2 ベクトルの微分法と公式 | ||
f-denshi.com [目次へ] 最終更新日:03/05/06 | ||
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[1] ベクトル値関数の微分は各成分を媒介変数で微分することで定義します。
1変数ベクトル値関数 A =A (t) = (A1(t),A2(t),A3(t)) の微分は,
A ’= dA = dA1 , dA2 , dA3 dt dt dt dt
このA '(t)のすべての成分が0 となる t =t0 の点を特異点,そうでない点を正則点といいます。すべての t でA'(t)が連続関数で正則点であるとき A(t) をなめらかなベクトル値関数といいます。(特異点では何が起こるのでしょうか⇒[#])
[2] 3変数ベクトル値関数 A =A(x,y,z)=(A1(x,y,z),A2(x,y,z),A3(x,y,z)) の偏微分は,
x についての偏微分 ⇒ ∂A = ∂A1 , ∂A2 , ∂A3 ∂x ∂x ∂x ∂x y についての偏微分 ⇒ ∂A = ∂A1 , ∂A2 , ∂A3 ∂y ∂y ∂y ∂y
z についての偏微分 ⇒ ∂A = ∂A1 , ∂A2 , ∂A3 ∂z ∂z ∂z ∂z
などと定義します。
[3] ベクトルの微分に関する初等的な公式です。
基本公式
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これから述べるような微分演算子を成分とするベクトルを考えることで,多変数ベクトル値関数の微分計算を形式的に進めることができます。以下この表記法の定義と計算規則をまとめます。
[1] 微分演算子の定義
・ハミルトン演算子とラプラス演算子
定義1
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∇をナブラ[ nabla ]とかデル[ del ] ともいいます。 ∇2 =Δ とも書きます。
[2] 演算規則
定義2 [∇の混じった演算]
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∇・φは∇φとも書きます。
(1)gradφ 勾配[ gradient ] といいます。 なぜ,勾配というのか ⇒ 方向微分 [#]
(2)divA 発散[ divergence ] といいます。
(3)rotA 回転[ rotation ] といいます。 ( curl A とも書きます )
(1)gradφ,(2)divA (3)rotA の物理的な意味ついては,Appendix2,Appendix3,および,Appndix A4 を参考にしてください。
( 注意) ∇φはただのベクトルです。一方,φ∇= φ ∂ ,φ ∂ ,φ ∂ はベクトル演算子です。 ∂x ∂y ∂z
重要なテクニック:
∇(φψ)=φ∇ψ+ψ∇φ の計算を,
⇒ ∇(φψ) =(∇ψ+∇φ)(φψ)
=∇ψ(φψ)+∇φ(φψ)
=φ∇ψ+ψ∇φのように進めると見通しよく計算できます。ここで,∇ψ はψだけに作用する微分作用素,∇φ はφだけに作用する微分作用素という意味です。添え字に記した関数以外に作用するときは演算子∇は定ベクトルのように扱われます。
(注意) ついでに,コメントしておくと,∇(A・B)≠B(∇A)+A(∇B) です。 正解は→ 公式2-(1)。
[3]
定義3 [ Δ の混じった演算 ]
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Δ がスカラーのように扱われていることに注意してください。
[1] よく使う公式
公式1 [2階微分]
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(1)∇×(∇φ) = (∇×∇)φ = 0 (← 外積公式 5.公式(3),(1) より )
(2)∇・(∇×A ) = (∇×∇)・A = 0 (←スカラー3重積[#]より,中央はA ・(∇×∇) であるが,常に∇をA の左におくことに注意して⇒ (∇×∇)・A と表記している。)
これから常に,div B = 0 ならば, B = rot A なる A が存在する。 A をベクトルポテンシャルという。
(3)∇×(∇×A ) = ∇(∇・A )−∇2A (←ベクトル三重積[#] ∇をA の左におくことに注意して)
公式2 [分配法則]
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(1) 左辺=∇A(A・B )+∇B(A・B )
ここで,ベクトル三重積[#]から,
B ×(∇A ×A ) = ∇A(A ・B ) −(B ・∇A)A
A ×(∇B ×B ) = ∇B(A ・B ) −(A ・∇B )B
が成り立ちます。これらの辺々を足して移行し,整理すれば,
∇A(A・B )+∇B(A・B )
=B ×(∇A ×A )+(B ・∇A)A +A ×(∇B ×B )+(A ・∇B )B
=(B・∇)A+(A・∇)B +A×(∇×B )+B ×(∇×A )
(注意)
∇A・(A・B )=(∇A・A )・B+A・(∇A・B )=(∇A・A )・B +0 =B ・(∇A )
とは形式的な結合法則が成り立たないのでできない! (A・B)はスカラーです。
(1)’ もし,ここで,B が定ベクトルならば,
∇(A ・B )=(B・∇)A+B ×(∇×A ) ⇔ B ×(∇×A ) =∇(A ・B )−(B・∇)A
(電磁場中の正準運動量を求めるときに利用します ↑)
(2) 左辺 = ∇A・(A×B)+∇B・(A ×B ) ←スカラー3重積[#],演算子∇BをB の左におくことなどに注意して
= B ・(∇A×A )−∇B(B ×A )
= B ・(∇A×A )−A ・(∇B×B )
= B ・(∇×A )−A ・(∇×B )
(3) 左辺 = ∇A×(A×B )+∇B×(A×B ) (←ベクトル三重積[#] 演算子∇AをA の左におくことなどに注意して)
= (∇A・B )A −( ∇A・A )B +{(∇B・B )A −( ∇B・A )B }
= (B ・∇A)A − B(∇A・A ) + A(∇B・B ) − (A ・∇B)B
= (B ・∇)A − B(∇A ) + A(∇B ) − (A ・∇)B
(4) 左辺 = ∇φ×(φA )+∇A ×(φA )
= ∇φφ×A +φ∇A ×A
= ∇φ×A +φ∇×A
= −A ×∇φ+φ∇×A
(5) 左辺 = ∇φ・(φA )+∇A ・(φA )
= ∇φφ・A +φ∇A ・A
= A ・∇φ+φ∇A
[3]
公式3
(1) ∇・(φ∇ψ)=∇φ・∇ψ+φ∇2ψ (2) ∇・(φ∇ψ−ψ∇φ)=φ∇2ψ−ψ∇2φ (3) ∇2(φψ)=φ∇2ψ+2∇φ・∇ψ+ψ∇2φ |
(1) 左辺 = ∇φ・(φ∇ψ)+∇ψ・(φ∇ψ)
=(∇φ・φ)・∇ψ+φ(∇ψ・(∇ψ)) = 右辺
(2) 左辺 = (1)の右辺−(φとψを交換した(1)の右辺) = 右辺
(3) 左辺 = ∇ψ・(∇(φψ))+∇φ・(∇(φψ))
=∇ψ・(φ∇ψ+ψ∇φ)+∇φ・(φ∇ψ+ψ∇φ)
=φ∇2ψ+∇ψ・∇φ+∇φ・∇ψ+ψ∇2φ)
=φ∇2ψ+2∇φ・∇ψ+ψ∇2φ
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