Appendix B3 電場・磁場の応力
f-denshi.com [目次へ] 更新日: 03/05/26

1.マクスウェルの応力

[1] 誘電性と磁性を合わせ持つ物体が,電場E (r ,t),磁場(磁束密度B(r ,t))におかれたときに働く力についての一般論を考えます。この物体には,

(1) 真電荷密度:                 ρ = ρ(r ,t),

が存在し,また,

(2) 真電流密度:                 j  = j (r ,t)

が流れ,物体の持つ分極[#]P ,磁化[#]をM とします。

真電荷,真電流の他には,

(3) 分極電荷密度 [#] :   ρP =− div P  
(4) 磁荷の電流密度 [#] : j Mrot M
μ0
(5) 分極電流密度 [#] :    j P P
∂t

も存在することができます。 したがって,この物体にはたらくローレンツ力[#]は,

F =  { (ρ+ρP)E +( jj Mj PB }dV
(ρ−divP )E jrot M P  ×B dV
μ0 ∂t
div0EP ) = ρ[#]
rot H = rot BM  = j ∂ε0E  + P   [#] を用いて,
μ0 ∂t ∂t
div0E )・E rot B ∂ε0E  ×B dV
μ0 ∂t
∂(ε0E × B )  = ∂ε0E ×Bε0E × B
∂t ∂t ∂t
∂(ε0E × B ) dV + ε0E × B dV + div0EE )+ rot B  ×B dV
∂t ∂t μ0
ファラデーの法則 rotE+∂B/∂t = 0 [#] とdivB =0 [#] に注意して 0 となるを最後に一つ付け加えて,
∂(ε0E × B ) dV
∂t
第1項
+   ε0rotE ×E + div ( ε0E  )E dV + 1  rotB ×B 1 (div B )B dV
μ0 μ0
第2項 第3項

[2] 第1項 はここでは詳しく述べませんが,p =ε0E × B を電磁場の持つ運動量密度と解釈できて[#],

F (電磁場) =− p(電磁場)
∂t

とみなすことができます。  ⇒ 物質と材料の掟(物質の光学的性質/古典論)参照[#]

[3] 第2項 について,x 成分の計算をさらに進めると,( E = ( Ex,Ey,Ez ) とします。 )

x方向: f(E)x =ε0 ∂Ex ∂Ez Ez ∂Ey ∂Ex Ey ∂Ex Ex ∂Ey Ex ∂Ez Ex dV
∂z ∂x ∂x ∂y ∂x ∂y ∂z
↓ 少し並び替え工夫して 
=ε0  2 ・ ∂Ex Ex ∂Ey Ex ∂Ez Ex ∂Ex Ey ∂Ex Ez ∂Ex Ex ∂Ey Ey ∂Ez Ez dV
∂x ∂y ∂z ∂y ∂z ∂x ∂x ∂x
=ε0   Ex2 (ExEy) (ExEz) 1 (Ex2+Ey2+Ez2) dV
∂x ∂y ∂z 2 ∂x
 div ε0ExEx ε0(EE ) ε0ExEyε0ExEz dV
2
↑ もちろん,最後のdiv(*,**)の(*,**)はベクトル成分を意味する括弧です。
ε0ExEx ε0(EE ) ε0 ExEyε0ExEz  ・n dS =  T xn dS
2

最後はガウスの定理 [#] を使いました。 

ベクトルT x の物理的な意味は最後の面積分で表した式から,
物体の表面の単位面積あたりに働く x方向に働く力を,

  T x ≡( x 軸に垂直な面を通して働く力y 軸に垂直な面を通して働く力z軸に垂直な面を通して働く力,)

に分解して表していたものとみなすことができます。このベクトルT x と面の単位法線ベクトル n との内積:T xn がこの微小面積に働く力の x成分 fx です。

[4] 同様にy,z成分は,

 y方向: f(E)y ε0EyExε0EyEy ε0(EE )   ,ε0EyEz n dS
2
 z方向: f(E)z ε0EzExε0EzEy,EzEz ε0(EE )  ・n dS
2

[5] 第3項 の磁束密度に関する項も数学的な形式が第2項と全く同じなので,同様な計算のあとに,第2項の結果において,E → B,ε0 → 1/μ0 と置き換えただけの式が得られます。これら第2項,3項の部分の結果だけをまとめて行列(テンソル)を用いて書けば次のようになります。

マクスウェルの応力

n に垂直な単位面積に働く力 f は,
Tn T x  n
T y
T z
ε0ExEx ε0(EE ) BxBx (BB )
2 μ0 0
ε0ExEy BxBy
μ0
ε0ExEz BxBz
μ0
n1  
ε0EyEx ByBx
μ0
ε0EyEy ε0(EE ) ByBy (BB )
2 μ0 0
ε0EyEz ByBz
μ0
n2
ε0EzEx BzBx
μ0
ε0EzEy BzBy
μ0
ε0EzEz ε0(EE ) BzBz (BB )
2 μ0 0
n3
                 
この行列 T はマクスウェルの応力と呼ばれ,2階テンソル[#] であって,成分では,
Tjk = ε0EjEk ε0 δjk(EE ) + 1 BjBk 1 δjk(BB )       [ 応力テンソル ]
2 μ0 0
と書くことができます。

これらの用語・記号を用いると,はじめに考えた物体に働く力は,

F = − ∂(ε0E × B ) dV  +  T n dS
∂t

と書くことができます。 続きの考察は物性論の中で行いました。


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