14 電磁ポテンシャル
f-denshi.com  [目次へ] 最終更新日:04/06/11         タイトルを変更しました。 08/07/01

 1.ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャル

[1] ベクトルポテンシャルの存在

 ベクトル解析によると任意のベクトルA に対して,div・rotA=0 [#] なので,磁束密度B を適当なベクトルA を用いて,B=rotA と表せばマックスウェルの方程式のひとつ,divB =0 は自動的に満たされることがわかります。このAベクトルポテンシャルといいいます。

定義 [ベクトルポテンシャル]

   B = rot A   を満足するベクトルAr )         ・・・・・・・・ (1)

ただし,A は一意的ではなく,

A’ = A + grad χ 

もベクトルポテンシャルとなります。なぜなら,

   rot A’ = rot (A +grad χ)
          = rot A + rot (grad χ )
          = rot A    (rot・grad χはいつも 0 ⇒ ベクトル解析公式 [#]

[2] スカラーポテンシャル

ベクトルポテンシャル ( B = rot A ) を用いると,ファラデーの法則 [#] は, 

rot E B  = 0  ⇔ rot 
E A
∂t
 = 0
∂t

となります。すると,ベクトル解析の定理 [#] より,(←ストークスの定理の系)

E A  = grad (-φ) なるスカラー関数 -φ が存在する。
∂t

ことがわかります。もちろん,このφは静電ポテンシャル[#]と同じ物理的な意味を持っています。

 定義 [スカラーポテンシャル]  
E =−gradφ− A      を満足する φ (r )       ・・・・・・・ (2)
∂t

先ほどのベクトルポテンシャルと併せて,φとA電磁ポテンシャルと呼びます。

ここで,ベクトルポテンシャルの変換: A’ = A + gradχ によって,

E =−gradφ− A
∂t
    = −grad φ−   A’−grad χ)
∂t
    = −grad (φ− χ )− A’
∂t ∂t
    = −grad φ’ − A’
∂t

と書けることに注意しましょう。これをみると,   (←上式を逆にたどればよい)

[ゲージ変換]
A’ = A + grad χ  
φ’ = φ − ∂χ
∂t

を満足する A’,φ’によって与えられるBEA,φによって与えられるBE とが同じものであることがわかります。このようにBE  を変えないようにA,φを別のA’,φ’に変換することをゲージ変換可換ゲージ変換)といいます。また,ゲージ変換によって ”形” を変化させない物理量,方程式などをゲージ不変であるというように言います。

マックスウェルの方程式(4つ組)は,ベクトルポテンシャル,とスカラーポテンシャルを用いて,

(1) divD = ρ
Δφ+ divA  =− ρ
∂t ε
(2) rotE =− B
∂t
 E =−gradφ− A
∂t
(3) divB = 0  B = rot A
(4) rotH = D j
∂t
ΔA −εμ 2 A  −grad εμ ∂φ  + divA  = −μ j 
∂t2 ∂t

のように書き直せば((1)で Δ≡div・grad,(4)でrot・rot=grad・div−Δ を用いよ。),ゲージ変換の式を代入する簡単な計算で,これら右辺の方程式がゲージ不変であることが確かめられます。 

2.ローレンツ・ゲージとクーロン・ゲージ

ゲージ変換の定義式は,問題に応じて任意関数χを定めてやることで,都合のいいポテンシャルを選べることを示唆しています。もっとも基本的なものを挙げると次の2つです。

[ゲージ変換]
div A +εμ ∂φ  = 0     [ ローレンツ・ゲージ ]
∂t
div A = 0                     [ クーロン・ゲージ ]   

( I ) クーロン・ゲージ

クーロンゲージ : div A = 0 を用いると,マックスウェルの方程式の(1),(4)は,

(1)”   −Δφ  = ρ                
ε
(4)”   −ΔA+εμ 2A  + εμ  gradφ = μj
∂t2 ∂t

となります。(1)” 式がクーロンの法則に等価なポアッソンの方程式そのもです。つまり,このゲージをもちいると,一般的な電磁気現象を取り扱う際に,静電気学の方程式を基に計算を進めることができるのです。

( II ) ローレンツ・ゲージ

もう一つのローレンツゲージ :

div A +εμ ∂φ  = 0 
∂t

を用いた場合の重要な特徴は,ローレンツ変換に対して,マックスウェルの方程式が式の形を変えないことです。

(1)’   −Δφ+ εμ 2φ  = ρ       ⇔     □ φ =  ρ
∂t2 ε ε
(4)’   −ΔA+εμ 2A  = μ j        ⇔     □ A  =μ j 
∂t2

という対称性のよい式になります。 ただし,

ダランベルシアン演算子:  □ ≡ −Δ+ εμ 2  = −Δ 2
∂t2 c2∂t2
(ローレンツ変換の下で ダランベルシアン□ は形を変えない。)

を定義して用いてます。 詳しくは別のところで。

.電磁場のハミルトニアン

[1] 力学がそうであるように電磁気学の体系もラグランジュ形式で書き換えることができます。ここでは古典論から量子論へ移る際にすぐに必要となる時間変化しない電磁場中におかれた荷電粒子のハミルトニアンだけ紹介しておきましょう。
    (ハミルトニアン H とは導くものではなく,見つけ出すものです。←念のため。)

ハミルトニアン H はラグラジアン L がわかれば,そのルジャンドル変換から計算することができます[#]。

H(qp ) = qp − L(qq’)                       ・・・・・・・・・・   [*]

一方,ラグラジアン L(q,q’) は下のラグランジュの方程式

∂L d  ∂L  = 0   [ ラグランジュ方程式 ]                     ・・・・・・   [**] 
∂q dt ∂q’

を満たし,( ただし,q = x,y,z ; q’ = x’,y’,z’ ) また,これは電磁中に置かれた電荷Qを持つ荷電粒子に対する ”ニュートンの運動方程式”

F = Q( Ev × B ) = mr” : E= ( Ex,Ey,Ez ); B = ( Bx,By,Bz ); v = ( x’,y’,z’ ) 
成分だと,
m d2x  = Q{ Ex + ( y’Bz − z’By
dt2
m d2y  = Q( Ey + ( vzBx − vxBz
dt2
m d2z  = Q( Ez + ( vxBy − vyBx
dt2

または,各ポテンシャル: B = rot A  ,E =−gradφ を用いた,

F = Q( grad φ+v × rot A )      [ ニュートンの運動方程式 ] ・・・・・  [***]
成分だと,
m d2x  =−Q ∂φ  − y’ ∂Ay  − ∂Ax  − z’ ∂Ax  − ∂Az
dt2 ∂x ∂x ∂y ∂z ∂x
m d2y  =−Q ∂φ  − z’ ∂Az  − ∂Ay  − x’ ∂Ay  − ∂Ax
dt2 ∂y ∂y ∂z ∂x ∂y
m d2z  =−Q ∂φ  − x’ ∂Ax  − ∂Az  − y’ ∂Az  − ∂Ay
dt2 ∂z ∂z ∂x ∂y ∂z

と等価でなければなりません。したがって適当なラグランジュ関数を探し当てて,それをラグランジュ方程式 [**]に代入することでニュートンの方程式 [***] が導かれることを示せば良いわけです。

そこで,ラグランジュ関数を次のようにおいて,

L = m  ( x’2+y’2+z’2 ) − Qφ + Q( x’Ax+y’Ay+z’Az )  ・・・・・   (1)
2

まず,

∂L   = −Q ∂φ  − x’ ∂Ax  −y’ ∂Ay  −z’ ∂Az           ・・・・・・・・・・   (2)
∂x ∂x ∂x ∂x ∂x
次に,正準運動量 ( px = )  ∂L  = mx’ + QAx [#]  より,          ・・・・・ (3)
∂x’
d ∂L  = mx” + Q ∂Ax  x’+ ∂Ax  y’+ ∂Ax z’+ ∂Ax         ・・・・・    (4)
dt ∂x’ ∂x ∂y ∂x ∂t

これら(2),(4) からラグランジュ方程式の x 成分について,

∂L d  ∂L  = 0
∂x dt ∂x’

が確かめられます。他の成分も同様です。 ハミルトニアンは,[*] に(1)と(3)を用いて,

H = pxx’ + pyy’ + pzz’ − m  ( x’2+y’2+z’2 ) − Q( x’Ax+y’Ay+z’Az )+ Qφ
2
  ↓  (3)を用いて
m  ( x’2+y’2+z’2 ) + Qφ
2
  ↓  もう一回 (3)を用いて
( px − QAx2  + ( py − QAy2  + ( pz − QAz2  + Qφ
2m 2m 2m
p − QA2  + Qφ
2m

となります。

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ローレンツ変換:

x’ = x 
y’ = y
z’ = γ ( z − vt )
ct’= γ ( ct − βz )
ただし,  γ = 1  > 1,    β = v
 1−β2
c

また, 

Ax’ = Ax 
Ay’ = Ay
Az’ = γ Az v φ
c2
φ’= γ ( φ − vAz
jx’ = jx 
jy’ = jy
jz’= γ ( jz − vρz
ρ’ = γ ρ − v  jz
c2

4元ベクトル: