3 オイラーの方程式
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前章の続きです。

1.第一変分とオイラーの方程式

[1] もう一度,問題を確認します。

[ 固定端変分問題 ]

すべての y(t)∈K ={y(t)|y∈C2[a,b],y(a)=α,y(b)=β} に対して,

S[y(t)] ≧ S[y*(t)]

なる y*(t) を求めよ。ただし,

S[y(t)]= F[t,y(t),y'(t)]dt   ; y'(t)= dy
dt
F[t,y(t),y'(t)]∈C3[a,b] 

[2] まず,このままでは許容関数族 K の範囲[#] があまりにも広すぎるので一般性を失わないように制限することから始めましょう。

ステップ1  
 許容関数族 K の部分集合族としてある関数η(t)をひとつ選んで固定し,y(t)として,

y(t,ε)=y*(t)+εη(t)

なる型のものだけを考えます。正確にいうと,次のようなパラメータεを含む関数族 Kε⊂K に定義域を制限して考えます。

Kε={y(t,ε)|y(t,ε)=y*(t)+εη(t), 
          =y*(t)+δy   ←εη(t)=δy  
ただし,
    η(t)∈K0={η(t)|η(t)∈C2[a,b],η(a)=0,η(b)=0}} 

このように制限する意味は右図を参考にするとわかるように,y(t) として,真の曲線 *(t)に対して,選ばれたη(t)のε倍の”肉付け”をした曲線群しか考察の対象にしないことを意味します。しかし,ηは任意の関数なので結局,A-B を通る任意の関数を最終的には考えていることになるのです。

すると,条件: 任意のy(t)にたいして,S[y(t)]≧S[y*(t)] は 

任意の y(t,ε)∈Kε にたいして,
   
S[y(t,ε)]≧S[y*(t,0)]=S[y*(t)]
 
           ・・・・・・・ [1]

と等しく置き換えられます。 y(t,ε)=y*(t)+εη(t) を S [y(t,ε)] に代入すると,

S [y(t,ε)]= F [t,y*(t)+εη(t),y*'(t)+εη'(t)] dt

ステップ2
[3] S[y(t,ε)] をεの関数と見なし,   ← 偏微分を考えるようなものです

φ(ε)≡S [y(t,ε)]

とおくと,[1]は,任意のε∈R に対して, ( φ(0)=S [y(t,0)]=S[y*(t)] なので,)

φ(ε)≧φ(0),                            ・・・・・・・ [2]

に帰着します。この必要条件は,

 φ'(0)=S' [y(t,0)]=0                       ・・・・・・・・・ [3]  
ただし,y(t,ε) =y*(t)+εη(t),および,  φ'(0)= dφ(ε)
ε=0

でなければならないということに帰着されました。 

ステップ3

[4] 計算を実行すると, 

φ'(ε)= ∂F ∂y ∂F ∂y' }dt
∂y ∂ε ∂y' ∂ε
(↓ y(t,ε)=y*(t)+εη(t), y'(t,ε)=y*'(t)+εη'(t)
ただし,  ∂F =Fy ,  ∂F =Fy'  )
∂y ∂y'
{Fyη+Fy'η'}dt

ですから,φ'(0)=0 は,    ↓ y(t,0)=y*(t) に注意

φ'(0)= {Fy[x,y*(t),y*'(t)]η+Fy'[x,y*(t),y*'(t)]η'}dt = 0

となります。この条件式を第一変分といいます[#]

ステップ4

[5] 汎関数に極値を与える y*(t) は方程式, (Fy[x,y*(t),y*'(t)] → Fy などと書いて)

{Fyη+Fy'η'}dt=0

を満たしますことがわかりましたが,さらに第2項の部分積分(t の関数として)を実行すると,

Fy'η'dt=[Fy'η] dFy' ηdt
dt

この第1項はη(a)=η(b)=0 なので0 です。 結局,φ'(0)=0 は,

 Fy dFy' }ηdt=0                               ・・・・・・・・・  [4]
dt

となります。

[6] すでに目的の式は被積分関数の{  }中に見えているのですが,厳密に{  }=0 をいうには次の補題が必要です。

補題  (証明略)

G(x)∈C[ a,b ]とするとき,任意のη(x)∈K0 にたいして,

G(t)η(t)dt=0

ならば,[ a,b ]において,常に

G(t)≡0

[7] これを先程の式[4]に用いると,

Fy dFy'  = 0                [ オイラー方程式 ] 
dt
または解析力学でなじみのある記号を用いて書けば,
∂L d  ∂L = Lq dLq'  =0  [ ラグランジュ方程式]
∂q dt ∂q' dt

を得ることができます。最後のなじみのある記号というところでは,
     y(t) → q(t), F → L  ;  つまり,F[t,y(t),y'(t)] ⇒ L[t,q(t),q'(t)]
と書き直しています。これがラグランジュ方程式の数学的な意味です。そして,物理学では,

「力学法則(微分方程式)はこの方程式に従うものとする。」

とし,これを最小作用の原理といいました[#]。いわば,この式は「物理法則の憲法」です。すべての物理法則はこの原理を満たさなければならないのです。もちろん,この原理を満たす関数がただ一つ決まるというワケではありません。C3級の関数の中でラグランジュ方程式を満たす関数は無数にあります。その中から選ばれたある関数が物理法則して適当かどうかは,数学的に証明するものではなく,それから予測される物理現象が実験結果と一致するかどうかによって判断されるのです。

[8] まとめると

定理

y(t)=y*(t)が汎関数,

S[y(t)]=  F[t,y(t),y'(t)]dt

を最小にするための必要条件はy*(t)がオイラーの方程式:

Fy dFy'  = 0
dt

を満たすことである。

 この第一変分が0という条件は一般的には汎関数の停留条件といいます。停留というのは,この条件だけでは汎関数がこの
y*(x)で最小値をとるのか,最大値をとるのかまたは鞍点なのかわかりません。最小値であることの十分性を示すには,第二変分(2次の微分量)を調べる必要があり,これは普通の関数の極値を調べるときに2階導関数まで調べるのと同じ理屈です。この辺については後ほど論じます。


(注意)
第一変分:

このように呼ぶ理由は

  φ'(0)ε= {Fy[t,y*(t),y*'(t)]εη+Fy'[t,y*(t),y*'(t)]εη'}dt = 0

を考えると,置き換え[#]

δy =y(t)−y*(t)=εη(t),
δy'=εη'(t)           (もちろん,δy'=δy'(t)のこと)

が可能なので,

0 =φ'(0)ε= {Fy[t,y*(t),y*'(t)]δy+Fy'[t,y*(t),y*'(t)]δy'}dt
 =δS[y(t)] (1次の微分量)

と見積もることができるからです。*

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