7 テンソルの基底変換・座標変換 | ||
f-denshi.com [目次へ]最終更新日:07/10/19 | ||
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[1] 2つの座標系の基底とそれらの関係が,
Σ = {e1,e2,e3 }, Σ' = {e'1,e'2,e'3 }
e'j = Σ pkjek
で与えられているとします。すると,ベクトルx ,y をそれぞれ,
x = x1e1+x2e2 +x3e3 = x'1e'1+x'2e'2+x'3e'3
y = y1e1+y2e2 +y3e3 = y'1e'1+y'2e'2+y'3e'3
と一次結合で表すとき,ベクトル成分の座標変換は,
xs = Σj psjx'j
yt = Σk ptky'k
で与えられます。ここまでは前章のベクトルの座標変換で説明したとおりです[#] 。
[2] さて,この基底変換のもとでの双線形関数φ(x,y )がどのような影響を受けるのか考えましょう。5章と同じ記号 [#] のもとで,2つの座標系で,テンソル T の成分が,
φ(e1,e1 ) = T11, φ(e1,e2 ) = T12, ・・・ ,φ(e3,e3 ) = T33
φ(e'1,e'1)= T'11,φ(e'1,e'2 ) = T'12, ・・・,φ(e'3,e'3 )= T'33
とそれぞれ表されるとしましょう。これを用いて双線形写像 φ(x,y )を2つの座標系で,
φ(x,y ) = φ(x1e1+x2e2 +x3 e3, y1e1+y2e2 +y3e3)
= x1y1φ(e1,e1 )+x1y2φ(e1,e2 )+・・・+x3y3φ(e3,e3 )
= x1y1T11+x1y2T12+・・・+x3y3T33
= ΣsΣtxsytTst ・・・・・ [*] (座標系Σ )
φ(x,y ) =φ(x'1e'1+x'2e'2+x'3e'3,y'1e'1+y'2e'2+y'3e'3)
= x'1y'1T'11+x'1y'2T'12+・・・+x'3y'3T'33
=ΣjΣkx'jy'kT'jk ・・・・・ [**] (座標系Σ')
と成分で表すことができます。
[3] さて, TjkとT'stとの関係を求めるために,ベクトル成分の座標変換,
xs =Σj psjx'j ,yt =Σk ptkx'k を上の [*] 式に代入すると,
φ(x,y ) =ΣsΣt xs ytTst
=ΣsΣt( Σj psjx'jΣkptkx'k)Tst
=ΣjΣkx'jx'k (ΣsΣtpsjptkTst)
これを座標系Σ' での [**] 式 , ΣjΣkx'jy'k T'jk と比較すれば,以下の結果を得ます。
T'jk=ΣsΣt psjptkTst
となります。一方,V*×V* の基底 {ej×ek } の座標変換の式は,{ej×ek } が双線形関数である[#]ことを思い出し,ベクトルの基底変換,ej =Σ s pjse's [#]におけるpjs をスカラー係数とみなせば,
{ej×ek }={ Σspjse's×Σtpkte't }=ΣsΣt pjspkt {e's×e't }
と計算できることから得られます。以上をまとめると,(他も同様な計算なので計算省略します。)
共変テンソルの座標変換 基底の座標変換が, P=[pkj],(その逆行列をQ=[qkj]とする),すなわち, e'j = Σ pkjek で与えられるとき,
{e'j×e'k }=ΣsΣt qjsqkt {es×et } [V*×V*の基底変換] ⇔比較 e'j = Σ qjkek {ej×ek }=ΣsΣt pjspkt {e's×e't } [V*×V*の基底変換] ⇔比較 ej = Σ pjke'k |
⇔比較 ベクトルの座標変換との比較です。
[1] 反変テンソルの座標変換の場合も考え方,導出,まったく同じようになりますので,結果だけ書きます。
反変テンソルの座標変換 基底の座標変換の行列が,P=[pkj],(その逆行列をQ=[qkj]とする),すなわち, e'j = Σ k pkjek で与えられるとき,
[ej×ek ] =ΣsΣt qsjqtk [e's×e't ] [V×Vの基底変換] ⇔ 比較ej =Σ qkje'k |
⇔比較 ベクトルの座標変換との比較です。
「4 標準的な同型対応」で示したように計量テンソルを用いて,反変ベクトル(成分)を共変ベクトル(成分)へ変換したり,その逆の変換を行ったりすることができます。もう一度その変換則を示すと,次のとおりです。
反変成分と共変成分の関係 xj =gj1x1+gjnx2+・・・+gjnxn =gjkxk xj =gj1x1+gj2x2+・・・ +gjnxn =gjkxk |
改めて眺めてみると,これもベクトルの座標変換 ( x'j = Σpkjxk ) の一つとみなせます。ただし,(反変・共変) 計量テンソルによる場合は,基底と双対基底との間で基底が変換されています。
この変換規則は,2階以上のテンソル (積) にも一般化できて,テンソルの上下共通の指標1つに着目して,その指標に関するベクトル (線形関数) とみなせば,
テンソル指標の上げ下げ
gjkTxk=Txj 指標を下げる |
という関係が成り立ちます。このような計算を行うことをテンソルの指標を下げる,テンソルの指標を上げるといいます。指標が上下にもつテンソルを混合テンソルといいます。
指標をひとつ下げるときは,2階テンソル基底はes×et から es×ek に変換されています。つまり,共変的テンソルの基底から混合テンソルの基底に”基底変換されているワケです。このような指標の上げ下げは任意の高階数のテンソルに対しても行われます。
指標の上げ下げ = 座標変換 |
ところで,反変ベクトルどおし,または共変ベクトルどおしの間での座標変換では,pkj のように変換行列の添え字(指標)を上下に分けて表してきましたが,その理由は混合テンソルも含めた様々な座標変換の表記に統一性を持たせるためです。もう一度,共変ベクトル成分の座標変換を見直してみると,
x'j = pkjxk
となりますが,これは,右辺の上下にある指標 k について縮約 [#] をとると,x'j が得られるというようにも解釈できるでしょう?