14-3 相対論的マクスウェル方程式の記述
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電磁場が静止座標系と速度z方向へ等速度vで進行する運動座標系でどのように違って見えるか,相対論的な記法を用いてきちんと書き下すことがここでの目的です。  

(表記の問題だけで,14-2に記載されている内容より電磁気学として新しいことは含みません。読み飛ばしても構いませんが,電磁力学へ進もうとする方は必須です。このページを理解するためには線形代数入門第3部を理解しておくことが望ましいです。)

1.相対論的な記法

[1]  前ページで述べたように,4元ベクトル (ct,x,y,z),(φ/c,Ax,Ay,Az),(cρ,jx,jy,jz) は静止座標系から+z方向へ等速度vで進む運動座標系への座標変換によって,

x’0=γ (x0 − βx3)
x’1 = x1 
x’2 = x2
x’3 =γ (x3 − βx0)
ただし,γ = 1  , β = v
 1−β2
c

のようにローレンツ変換されます。この4元ベクトルの変換はベクトルと行列の計算を利用して,

x’0 γ 0 0 -γβ x0  ・・・[*]
x’1 0 1 0 0 x1
x’2 0 0 1 0 x2
x’3 -γβ 0 0 γ x3

と書くことができます。ここで,ローレンツ変換を表す(対称)行列を,

 L=(Lij )= γ 0 0 -γβ ,  逆変換:L-1=((L-1)ij )= γ 0 0 γβ
0 1 0 0 0 1 0 0
0 0 1 0 0 0 1 0
-γβ 0 0 γ γβ 0 0 γ

と定義します。 [*]のような座標変換に従うベクトルを反変ベクトルといいます。

ローレンツ変換を成分で表すと,

x’i =Lij xj      ←相対論でしばしば用いられる表記法

と表すことができます。

同じことですが,[*]の両辺に逆行列L-1をかけて,

γ 0 0 γβ x’0 x0  ・・・[*]’
0 1 0 0 x’1 x1
0 0 1 0 x’2 x2
γβ 0 0 γ x’3 x3

という表式も得られます。


[2] 一方,時間,空間の微分演算子は次のように変換されました[#]

 =γ   −γβ
c∂t c∂t’ ∂z’
∂x ∂x’
∂y ∂y’
 =−γβ   +γ
∂z c∂t’ ∂z’

これら微分演算子の変換は行列を用いると,

γ 0 0 -γβ ∂/c∂t’ ∂/c∂t
0 1 0 0 ∂/∂x’ ∂/∂x
0 0 1 0 ∂/∂y’ ∂/∂y
-γβ 0 0 γ ∂/∂z’ ∂/∂z

のように表されます。ここで,ローレンツ変換の行列 L がかかる方向が先程の[*]とは逆であることに注意してください。成分がこのように変換される一般の4元ベクトル,すなわち,

γ 0 0 -γβ x’0 x0  ・・・[**]
0 1 0 0 x’1 x1
0 0 1 0 x’2 x2
-γβ 0 0 γ x’3 x3

のように変換されるベクトル x=(x0,x1,x2,x3) を共変ベクトルと呼び,そのようなベクトル成分の添え字は下に書きます。

L-1[**]の両辺に左からかけると,

x0 γ 0 0 γβ x0   ・・・[**]’
x1 0 1 0 0 x1
x2 0 0 1 0 x2
x3 γβ 0 0 γ x3
↓↑
x’m =(L-1)mnxn    ←相対論で用いられる表記法

と表すこともできます。特に微分演算子の4元ベクトルに対して,

i
c∂t ∂x ∂y ∂z

のような記号がしばしば用いられることもあります。

ここで,共変という言葉が使われていますが,ローレンツ共変というときの共変とは意味が違います。
ローレンツ共変とは,慣性系の間で, (時空座標に対する) ローレンツ変換則と同様に変換される物理量に対してそのように呼ぶのでした。

しかし,共変ベクトルというときの共変は,座標変換(=基底変換)において,基底の変換の規則と同じく変換されるベクトルを共変ベクトルといいます。
一方,基底にかかる係数,すなわち,座標変換においてベクトル成分の変換規則に従うベクトルを反変ベクトルと呼びます。
実際,ベクトル場の基底として,微分演算子を並べたベクトル ∂i をとることができます。  ⇒ 
[#]

[3] 次に,ミンコフスキー計量テンソルを次のように定義します。

η=ηij=ηij -1 0 0 0
0 1 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1

ηそれ自身がηの逆行列になっています。(幾何学ではgij のような記号が普通です。)

[**]’の両辺にηをかけて,

ηx’=ηL-1x =(ηL-1η-1)ηx  


を考えますが,右辺の左から3つ目まで(  )の積を計算すると,

 ηL-1η-1 -1 0 0 0 γ 0 0 γβ -1 0 0 0
0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0
0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 0
0 0 0 1 γβ 0 0 γ 0 0 0 1
    = γ 0 0 -γβ L
0 1 0 0
0 0 1 0
-γβ 0 0 γ

となります。したがって,

(ηx)=L(ηx)

が成り立ちます。これは,共変ベクトルx から作られるベクトル(ηx )が反変ベクトルと同様,[*]にしたがって変換されることを意味しています。すなわち,

ηx -1 0 0 0 x0 -x0 x0
0 1 0 0 x1 x1 x1
0 0 1 0 x2 x2 x2
0 0 0 1 x3 x3 x3

[4] これは共変ベクトルの第0成分の符号を反転させることで対応する反変ベクトルが得られると解釈してもよいでしょう。この変換を相対論で使われる記号を用いて書くと,

xi=(ct,x,y,z)  ⇔  xi=(-ct,x,y,z)  
および, xi=ηijxj ,逆に xi=ηijxj 

電磁場の記述に必要な反変・共変ベクトルについてまとめておくと,

反変ベクトル 共変ベクトル
座標 xi ≡ (x0,x1,x2,x3)
=(ct,x,y,z) 
xi ≡(x0,x1,x2,x3)
 =(-ct,x,y,z) 
電磁
ポテンシャル
Ai ≡ (A0,A1,A2,A3)
  =(φ/c,Ax,Ay,Az)
Ai ≡(A0,A1,A2,A3)
    =(-φ/c,Ax,Ay,Az)
電流 j i ≡ (j0,j1,j2,j3)
  = (cρ,jx,jy,jz)
j i ≡(j0,j1,j2,j3)   
  = (-cρ,jx,jy,jz)
微分演算子
i≡ 
∂x0 ∂x1 ∂x2 ∂x3
 =
c∂t ∂x ∂y ∂z
 ∂i
∂x0 ∂x1 ∂x2 ∂x3
  =
c∂t ∂x ∂y ∂z

となります。

このような表記の下では,

 xixi = x0x0+x1x1+x2x2+x3x3 =-(ct)2+x2+y2+z2 = 0

 ∂iAi ∂A0 ∂A1 ∂A2 ∂A3  = ∂φ ∂Ax ∂Ay ∂Az
c2∂t ∂x ∂y ∂z c2∂t ∂x ∂y ∂z
 ∂iAi =− ∂A0 ∂A1 ∂A2 ∂A3  = ∂φ ∂Ax ∂Ay ∂Az  =∂iAi
c2∂t ∂x ∂y ∂z c2∂t ∂x ∂y ∂z
  □  = ∂ii =− 2 2 2 2
c2∂t2 ∂x2 ∂y2 ∂z2
i j i =  ∂jx ∂jy ∂jz ∂ρ   =0
∂x ∂y ∂z ∂t

などと表記できます。

[5] ここで,上下に同じ添え字が付いた,

xixi

における和の記号 は省略されており,xixi のように書かれます。(アインシュタインの縮約)

[6] 反変ベクトルと共変ベクトルとの縮約は座標変換に対して不変量を与えます。

任意の反変ベクトルXi と共変ベクトルYm の積 XiYm を考えてみましょう。

それぞれのベクトルはローレンツ変換は, 

X’i  =Lij Xj 
Y’m =(L-1)mnYn

で与えられるとします。すると,変換後ベクトルの積 X’i  Y’m

X’i  Y’m =Lij (L-1)mn Xj Yn

となりますが,とくに,i=m であるとき(縮約によってスカラーを得るとき),

X’i  Y’i = Lij (L-1)in Xj Yn    
      =δjn Xj Yn
      = Xn Yn

つまり,スカラー Xn Ynは座標系によらないことを示しています。

例えば,座標系Σ’とΣについて4元座標は,

x’ix’i = −(x’0)2+(x’1)2+(x’2)2+(x’3)2
    = −(γ (x0 − βx3))2+(x1)2+(x2)2+(γ (x3 − βx0))2
    = −γ2(1−β2)(−(x0)2+(x3)2)+(x1)2+(x2)2
    = xixi

と計算できます。具体的には,

−(ct')2+ x'2+y'2+z'2 = 0 = −(ct)2+x2+y2+z2  

とローレンツ変換則を導出 [#] するときに仮定した光速度不変の原理を表しています。

これらの記法を用いれば,ローレンツゲージ条件は,

∂Ai =∂iAi=0  ⇔  div A ∂φ  = 0 
∂xi c2∂t

と表記できます。

[7] さらに,前ページで示したようなローレンツ共変性は,

ii = ∂’i∂’i  ⇔  □ = □’

iAi = 0 = ∂’iA’i

i j i = 0 = ∂’i j’ i

Ai= 0= □’A’i

と縮約で表されます。 

最後の3つの式はベクトル(場)の縮約がスカラー(場)であって,その値(=0) は座標系の選び方に依存しないという自明のこととして理解されます。 

なお,ゲージ変換は,

A’i=Ai+∂iχ  ⇔
A0=φ’/c=φ/c − ∂χ
∂t
  A’ = A + grad χ

のように記述されます。


2.電磁場テンソル

[1] 相対論的な電磁気学では,4元ベクトルに対応するように電磁場テンソルと呼ばれる2階反対称テンソルが定義されます。

Fij ∂Aj ∂Ai  =∂iAj−∂jAi ; Fij =∂iAj−∂jAi  ・・・[***] 
∂xi ∂xj

ただし,i,j は 0 から 3 までの値をとり,次のとおりの対応とします。

(A0,A1,A2,A3)=(φ/c,Ax,Ay,Az)

また,電磁場は,

E =−gradφ− A
∂t
B = rot A

によって得られることは,記号の意味も含めこれまで述べてきたとおりです。

この関係より電磁場テンソルの成分を電場,磁場で表すと,

 Fij 0 -Ex/c -Ey/c -Ez/c
Ex/c 0 Bz -By
Ey/c -Bz 0 Bx
Ez/c By -Bx 0
Fij 0 Ex/c Ey/c Ez/c
-Ex/c 0 Bz -By
-Ey/c -Bz 0 Bx
-Ez/c By -Bx 0
ただし,E=(Ex,Ey,Ez)=(E1,E2,E3), B=(Bx,By,Bz)=(B1,B2,B3) と対応させる。
(計算) 例えば,0行1列目は,[***] より,
F01 ∂A1 ∂A0 =  ∂Ax (φ/c)= 1 Ex
∂x0 ∂x1 c∂t ∂x c
となる。

天下り的説明ですが,先人が試行錯誤の末見つけ出したものと,受け入れて進むことにします。

この電磁場テンソルから作られる2つのテンソル方程式,

∂Fik =μ0 j i                ・・・ (1)
∂xk
∂Fij ∂Fjk ∂Fki =0         ・・・ (2)
∂xk ∂xi ∂xj
(j0,j1,j2,j3) = (cρ,jx,jy,jz)

を考えると,これらは次のようにマクスウェルの方程式に等価であることが確かめられます。

 マクスウェルの方程式 (電磁場テンソル表現)

 
 ∂Fik  =μ0j i
 ∂xk
    ⇔    (1)’    ε0divE =ρ
 
 rotB =ε0μ0  ∂E  +μ0j
 ∂t
 
 ∂Fij  +  ∂Fjk  +  ∂Fki  =0
 ∂xk  ∂xi  ∂xj
ビアンキの恒等式
 ⇔ (2)’    divB =0
 
 rotE =−  ∂B
 ∂t

計算は Fij の定義式にしたがって具体的な成分計算をコツコツ進めれば出てきます。

一番上の場合だけ計算を示せば,

左辺 =  ∂F0k  =  ∂F00  +  ∂F01  +  ∂F02  +  ∂F03
 ∂xk  ∂x0  ∂x1  ∂x2  ∂x3
     = 0 +  ∂Ex  +  ∂Ey  +  ∂Ez  
 c∂x  c∂y  c∂z

右辺 =μ0j0 = μ0

⇒  ε0divE =ρ 

残りは自分で確かめましょう。 ガンバレ〜 加油!

このコツコツ行った計算を逆に遡ればマクスウェル方程式から電磁場テンソルへたどり着くように (=必然的に導かれたように)見えますが,・・・・・,

ベクトルポテンシャル用いたマクスウェル方程式は,(1)[***]を代入するだけですぐに得られます。

マクスウェルの方程式 (4元ポテンシャル表現)

∂Fik =μ0j i  ⇒ ∂k(∂iAk−∂kAi) =∂ikAk−□Ai =μ0 j k
∂xk

(2)’については電磁ポテンシャルを用いる限り,自動的に満たされるのでしたね[#]

さらにローレンツ条件[#]:∂kAk=0 の下でこの式は,

 −□Ai =μ0j i    [ローレンツ条件下のマクスウェルの方程式]

となります。

[2] 2階テンソルは座標変換(=基底変換)によって,

F’ij=Lip Ljq Fpq    ←p,q について,0から3まで和をとる。

のように変換されます[#]

Lipは一般的な座標変換であっても構いません,ここではもちろん,ローレンツ変換[#]を考えます。

電磁場テンソルの成分 Fij のローレンツ変換をいくつかの成分について具体的に計算すると,

-E’x/c =F’10=L1p L0q Fpq 
      =L11 L00 F10+L11 L03 F13
      =γ(-Ex/c)+(-γβ)(-By) 
      =−γ(Ex/c−βBy)
∴  E’x=γ(Ex−vBy)
-E’y/c =F’20=L2p L0q Fpq 
      =L22 L00 F20+L22 L03 F23
      =γ(-Ey/c)+(-γβ)(Bx) 
      =−γ(Ey/c+βBy)
∴  E’y=γ(Ey+vBx)
-E’z/c =F’30=L3p L0q Fpq 
      =L33 L00 F30+L30 L03 F03
      =γ2(-Ez/c)+(-γβ)2(Ez/c) 
      =−γ2(1−β2)(Ez/c)
      =−(Ez/c)
∴  E’z=Ez

これらの計算の途中,p,q の組み合わせによって,各式の右辺に16個の項が現れますが,0とならない項だけを書き出しました。

[3] さらに磁束密度の関与する成分に関して,

 B’x=F’23=L2p L3q Fpq 
    =L22 L30 F20+L22 L33 F23
    =(-γβ)(-Ey/c)+γBx 
    =γ(Bx+vEy/c2)
 B’y=F’31=L3p L1q Fpq 
    =L30 L11 F01+L33 L11 F31
    =(-γβ)(Ex/c)+γBy 
    =γ(By−vEx/c2)
 B’z=F’12=L1p L2q Fpq 
    =L11 L22 F12
    =Bz

これらの結果をまとめると次のようになります。

静止座標系の電磁場と運動 (+z方向) 座標系の電磁場との関係
(ローレン共変性)
E’x=γ(Ex−vBy)
E’y=γ(Ey+vBx)
E’z=Ez
B’x=γ(Bx+vEy/c2)
B’y=γ(By−vEx/c2)
B’z=Bz
ベクトルで書くと,

    E’=γ(Ev×B )
    B’=γ(B−(v×E )/c2)

当然のことですが,これらは電磁場のローレンツ変換を個別に計算したとき[#]と同じ結果を与えます。

また,これらの関係式からビオサバールの法則を導くことができることも同様です ⇒ [#]



3.マクスウェル方程式の微分形式

電磁場テンソルから微分形式 (下書き)

電磁場テンソルに対して,

Fij 0 -Ex/c -Ey/c -Ez/c
Ex/c 0 Bz -By
Ey/c -Bz 0 Bx
Ez/c By -Bx 0

に対して,微分形式,

F= Fij dxiΛdxj
2

を定義します。ただし,dx0=cdt,dx1=dx,dx2=dy,dx3=dz とし,アインシュタインの規約に従っています。具体的に計算すると,

F=−ExdtΛdx−EydtΛdy−EzdtΛdz+Bxdy∧dz+Bydz∧dx+Bzdx∧dy

と書くことができます。この外微分は,

 dF =−dExΛdtΛdx−dEyΛdtΛdy−dEzΛdtΛdz+dBxΛdy∧dz+dByΛdz∧dx+dBzΛdx∧dy

   =− ∂Ex dx+ ∂Ex dy+ ∂Ex dz+ ∂Ex cdt ΛdtΛdx− ・・・ ΛcdtΛdy− ・・・ ΛcdtΛdz
∂x ∂y ∂z c∂t
      + ∂Bx dx+ ∂Bx dy+ ∂Bx dz+ ∂Bx cdt ΛdyΛdz+ ・・・ ΛdzΛdx+ ・・・ ΛdxΛdy
∂x ∂y ∂z c∂t
(・・・)は書かなくてもわかるでしょう
  = ∂Ez ∂Ey dtΛdy∧dz+ ∂Ex ∂Ez dtΛdz∧dx+ ∂Ey ∂Ex dtΛdx∧dy
∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
     + ∂Bx dtΛdyΛdz+ ∂By dtΛdzΛdx+ ∂Bz dtΛdxΛdy+ ∂Bx ∂By ∂Bz dxΛdyΛdz
∂t ∂t ∂t ∂x ∂y ∂z

となります。ここで,dF=0 とすると,各4つの基底の係数が0となる条件から,

∂Ez ∂Ey ∂Bx =0
∂y ∂z ∂t
∂Ex ∂Ez ∂By =0
∂z ∂x ∂y
∂Ey ∂Ex ∂Bz =0
∂x ∂y ∂z
∂Bx ∂By ∂Bz =0
∂x ∂y ∂z

これらをベクトル解析の記号で書けば,

∇×E B =0,   および, ∇B =0
∂t

となります。これはマクスウェル方程式の中の2つの式です。

今度は,d*F を計算します。まず,内積が,(dxi,dxj)=δij,(dx0,dx0)=-1,(dx0,dxi)=0,( i,j=1,2,3) で定義されるミンコフスキー空間では,ホッジ作用素*は,[#]

*(cdtΛdx)=dyΛdz, *(cdtΛdy)=dzΛdx, *(cdtΛdz)=dxΛdy
*(dyΛdz)=−cdtΛdx, *(dzΛdx)=−cdtΛdy, *(dxΛdy)=−cdtΛdz

とで働くこと[#]に注意する必要があります。すると,

F=−ExdtΛdx−EydtΛdy−EzdtΛdz+Bxdy∧dz+Bydz∧dx+Bzdx∧dy
  ↓ 
*F=−(Ex/c)dy∧dz−(Ey/c)dz∧dx−(Ez/c)dx∧dy−BxcdtΛdx−BycdtΛdy−BzcdtΛdz

これは先程のdF計算で,Ei→cBi,Bi→−(Ei/c) と置き換えたものに等しいので,*Fの外微分は,

d*F =

∂Bz ∂By cdtΛdy∧dz+ ∂Bx ∂Bz cdtΛdz∧dx+ ∂By ∂Bx cdtΛdx∧dy
∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y
     − ∂Ex dtΛdyΛdz− ∂Ey dtΛdzΛdx− ∂Ez dtΛdxΛdy− ∂Ex ∂Ey ∂Ez dxΛdyΛdz
c∂t c∂t c∂t c∂x c∂y c∂z

であることがわかります。すると,電流密度j =(j1,j2,j3),電荷密度ρを用いて,3-形式,

J =−cρdxΛdyΛdz+j1cdtΛdy∧dz+j2cdtΛdz∧dx+j3cdtΛdx∧dy

を定義して,方程式 d*F =μ0J を考え,その各基底の係数を比較することで,

∇×B E =μ0j ,および,    ∇E =ρ/ε0  
c2∂t

と,残りの2つのマクスウェル方程式と等価であることがわかります。ただし,c2μ0=1/ε0であることを用いています。まとめるとマクスウェル方程式は,電磁場テンソルから作られる微分形式を用いて

dF = 0
d*F = μ0J

となります。

**********************

さらに,ポテンシャルによる表示を求めるために,電磁ポテンシャルA,φ を用いた微分形式,

A=−φdt+Axdx+Aydy+Azdz

を定義すると,

dA=F

であることが確かめられます(演習)。すると,マクスウェルの方程式は,

d*dA=μ0J

の一つで表すことができます。なぜなら,これは,d*dA=d*F=μ0J を意味すると同時に,任意のp-形式に対して成立する(数学上の)恒等式 d(dω)=0 から dF=d(dA)=0 も自動的に成り立つからです。



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電荷保存の法則

∂jk =0   ∂kjk=0
∂xk