| 4 多項式環 | ||
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いよいよこの章から代数を学ぶの最終目的である「代数方程式を解く」ことに直接切り込んでいきます。代数方程式を解くということは多項式が 0 に等しくなるような元(不定元)の値を求めることです。まず,多項式とその因数分解について定式化します。
[1] 1変数多項式の定義から出発です。 ←”1変数”という言葉はクドイので以後省略。内容的には簡単なことなのですが,これまでの ”代数用語” できちんと表現しておきましょう。
| (1) [多項式]
可換環R 上の多項式 r とは,係数と呼ばれる r1,r2,・・・rn ∈ R と不定元 x を用いて, r = r0+r1x+r2x2+・・・+rnxn ,n ∈ 整数 (= r0+r1・x+r2・x2+・・・+rn・xn ) の形で表せるものを多項式いう。 (2) [多項式環] また,2つの多項式, r =r0+r1x+r2x2+・・・+rnxn , の演算として, r+s = (r0+s0)+(r1+s1)x+(r2+s2)x2+・・・+(rj+sj)xj +・・・ (加法)
と定義すれば,(高校生までに習った多項式の普通の計算規則です↑)これらの演算のもとで環R 上の多項式の集合は環になる。この環を,多項式環 R[x] という。 |
* ここでは,係数をより汎用性があるように可換環として多項式を定義してますが,係数を整域,体としてもでも同様に定義できます。そのときは,「 体F上の多項式 f 」というような言い方になります。
特に整数を係数にもつ多項式を整式といいます。また,最高次の係数が 1 である(rn=1である)多項式をモニックな多項式といいます。
係数が R に 0 以外に零因子をもたない場合は,
| R が整域(体)ならば,R 上の多項式環は整域である。 |
ことが言えます。
[2] 多項式の整除
さて,任意の整数 s はある整数 q が与えられたとき,s = tq+r ( r<q ) と一意的に表されます。同じことが多項式においても成り立ちます。
s,t (t≠0) を体 F上の多項式( deg s > deg t )とする。そのとき s は F上の多項式 q,r ( deg r < deg t )を用いて
s = tq+r と一意的にかける。q を商,r を剰余という。 |
(証明) → 参照
特に r = 0 のとき,t は s を整除する(割り切る)といい,
t|s
と書きます。逆に整除しないときは,
t | s
と書くことにします。t が s を整除するとき,t は s の因子,または s は t の倍元であるといいます。
例
F5において,
=( )( )+・・
=( )( )
[3] また,二つの多項式 s1,s2 の両方を整除する多項式のうちで次数が最高の多項式を s1,s2 の最大公約因子といいます。最大公約因子は定数倍を除けば一意的に定まります。最大公約因子が 1(定数)であるとき,s1,s2は互いに素であるといいます。
最大公約因子については,整数の最大公約数の場合と同様にユークリッドの互除法(Apendix 2)によって求めることができます。整数の場合と同様に次の定理は重要です。
| 定理 s1,s2 を体 F 上の 0 でない多項式で, s1,s2 の最大公約因子とを d とすると,F上の多項式 p,q が存在して d = ps1 + qs2 とできる。 |
(証明) 略 (整数環の場合とまったく同じです。)
[4] 可換環 R 上 ( もしくは体 K 上 ) の多項式がそれより次数の低い二つ以上の多項式の積で表せるとき,それを可約といい,そうでないとき既約であるといいます。ここで多少注意が必要です。例えば,
x2+4x+3 = (x+3)(x+1) 可約
x2+1 実数上で既約
x2+1 = (x−i )(x+i ) 複素数上で可約
のように数の範囲をどこまで考えるかによって可約か既約かの判定結果は違ってきます。また,方程式は整数が素数の積で表せるように,
f =(既約多項式 1 )((既約多項式 2 )・・・・・(既約多項式 n)
と表すことができます。すなわち,
| 体 F上の 0 でない任意の多項式は F 上の既約多項式の積として表すことができる。また,その表し方は定数倍,因子の順序を無視すれば,一意的である。 |
[5] 整数が素数かどうか判定するのがたいへんな作業であるのと同じように,与えられた整式が既約かどうかの判定も難しい問題です。判定作業の中でしばしば次のEisensteinの判定基準が役立ちます。
| 既約の判定方法 [Eisensteinの判定基準」
Z(整数)上の多項式 r = r0+r1x+r2x2+・・・・+rnxn ( rj ,n∈整数,x:不定元 ) は次の条件を満たす素数 p が存在するとき,Z 上,及び Q 上で既約である (1) p (2) p|rj (j=0,1,・・・,n-1) (3) p2 |
上の既約の判定基準はそのままでも使われますが,準同型 Z[x] → Zn[x] を考えて,「多項式の像が Zn 上で既約ならば,もとの多項式は Z 上で既約である」 ことと組み合わせて使われます。
しかし,Zn 上で可約であるから Z 上で可約とはいえないことに注意して下さい。
[1] 多項式 = 0 とおいた一般的な代数方程式の定義をします。
R を可換環とし,f(x) = r0+r1x+r2x2+・・・・+rnxn を R 上の多項式とする。
f(x) = 0 の形の方程式を R 上の n次方程式 ( R係数をもつ n次方程式 ) という。また, f(α) = 0 となるような元 α∈K を f の K における根という。 |
[2] n次方程式の根の数がどれくらいあるのかは次の定理で示されます。
| 定理 [根の数]
環 R上の多項式の根の個数はその多項式の次数以下である。 |
(証明)数学的帰納法
[3] 具体的に解を求めるためのてがかりとして重要なものは
| [因数定理]
f(x)を体 F上の n 次多項式とする。元α∈Fが f の根である必要十分条件は,(x−α) が f(x) を割り切る, (1) (x−α)|f(x) または,言い換えると,f(x) は (x−α) を因数にもつ, (2) f(x)=(x−α)q(x),ただし,q(x)は,(n-1)次多項式 と表せることである。 |
代数方程式 f(x)を体 F上の多項式とする。元 α∈K が,
(x−α)|f(x) かつ,(x−α)2|f(x)
のとき,α を f の単根といいます。また,
(x−α)m|f(x) かつ,(x−α)m+1|f(x)
のとき,α を f の m重根といいます。
[4] 定義
体Lを体Fの拡大体として,F上の多項式の集合 F[x] の元 f(x) が,あるα∈L
についてf(α)=0 であるならば,αをF上で代数的であるという。
また,Lの全ての元がFに関して代数的であるとき,LをFの代数拡大体といい,LをF(α)と書く。
例えば,有理数体Qに対して,多項式 x2-2 の代数方程式 x2-2=0 の根である 21/2 はQに関して代数的であり,実数の部分集合:R2={a+21/2b|a,b∈Q}はQの代数拡大体Q(21/2)となっています。
一方,πは決して,有理数を係数にもつ代数方程式の根とはなりえませんが,このような数はQに関して超越的といいます。そして実数の部分集合:Rπ={a+πb|a,b∈Q}はQの拡大体Q(α)となっていますが,このような拡大体はQの超越拡大体と呼ばれます。
F(α)をFの代数拡大体とするとき,多項式環F[x]の中でαを根に持つ次数が最小である多項式を,αの最小多項式といいます。最小多項式はF[x]において既約です。αを根に持つ任意のF[x]に属する多項式は,最小多項式で割り切れます。
Q(21/2)については,21/2 の最小多項式は x2-2 でその次数は2です。(x2-2)(x2+x+1) も Q(21/2)上に根αを持ちますが,次数が4なので最小多項式ではありません。
また,F上で代数的な元α∈LのF上の最小多項式が重根をもたないとき,αをF上で分離的といいます。特に全ての元α∈Lについて,F上で分離的であるとき,LはF上で分離的,もしくは,LはFの分離拡大体であるといいます。
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αを体F上の代数的な元とするとき,その代数拡大体F(α)の任意の元βについて,F上の多項式 g(x) ∈F[x] が存在して, β=g(x) と書くことができる。 |
証明
F(α)の任意の元βはαとFの任意の元との間で四則演算を繰り返して得られるので,P(x),Q(x)∈F[x],ただし,Q(α)≠0を用いて,β=P(α)/Q(α)と書ける。ここで,最小多項式f(x)とQ(x)はF[x]上で互いに素としてよいので,適当なA(x),B(x)∈F[x] が存在して,
A(x)f(x)+B(x)Q(x)=1
と書ける。x=αとすると,B(α)Q(α)=1,このB(α)を用いれば,
β=P(α)B(α)
であり,P(x)B(x)≡g(x)とおけば,g(x)∈F[x] である。
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定理 |