10-1 中心と中心化群 
f-denshi.com  更新日: 21/03/25  群表をたくさん追加しました。   
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急ぐ方はこの章を飛ばして「11」へ進んでも構いません。
このページは正規部分群を見つけ出すツールの紹介です。

[1] しばらく抽象的な定義を列挙しますが,すぐわからなくてもそのまま読み進み,そのあとにあげる具体例をみながら,行きつ戻りつしてください。

定義 G の中心

群 G のすべての元と可換な G の元全体は G の(正規)部分群となる。この部分群を G の中心 Z (G) という。

       Z (G)={h|hg = gh ; すべての g∈G }

中心とは共役[#]の条件をさらに厳しくしたものと見ることができます。つまり,h と a が共役であるというときの g の条件は,”ある g∈G” だったのですが,中心では, ”すべての g∈G” となっているところに注意してください。また,

命題1
 
(1) 可換群 G の中心は G 自身である。
(2) 群G の中心 Z (G)の部分群はすべてG の正規部分群である。← この逆は成り立たない

[証明] ⇒ [#]

[2] さらに,G の G自身への働きを考えたときの固定部分群[#]には特別な名称がついてます。

定義  a∈G の中心化群

群 G の G自身への両側からの働きを考えるとき,a∈G の固定部分群 Ca を 「a の中心化群」 という。
言い換えると,a∈G と可換な G の元全体の集合,
 
          Ca ={ g|ga=ag ; g∈G } 
       ={ g∈G|gag-1=a }

を 「 a の中心化群」 と呼ぶ。

この用語を用いれば,中心 [#] とは中心化群 Ca=G ( a と可換な元全体の集合がGと一致)[#]となる a を集めてきたものなのです。

[3] このとき,次の定理が成り立ちます。

定理1

群 G の元 a の共役類 C(a)の位数|C(a)|と a の中心化群の位数|Ca|との関係は,

  |G|=|C(a)|×|Ca| 

[証明] 

これは,7.類別2 で述べた固定部分群と剰余類の軌道に関する定理の(3)[#]において,G-軌道を共役類,固定部分群を中心化群としたものです。(つまり,Gの働く相手Mを頂点ではなく,G自身とする。)

正四面体群について確かめてみると,共役類は,

C(ak)={a1,a2,a3,a4
C(bk)={b1,b2,b3,b4}; k = 1,2,3,4
C(hj)={ hx,hy,hz}   ; j = x,y,z
C(e) ={e}

一方,中心化群は,

Cak=Cbk={e,ak,bk
Chj={e,hx,hy,hz
Ce= G

であるから,

|C(ak)|×|Cak|=4×3=12
|C(hj)|×|Chj|=3×4=12
|C(e)|×|Ce|=12×1=12

などが確かめられます。

以上の定義,定理について例でその意味することを確認して行きましょう。



  まず,これまで調べてきた正四面体群の中心は,単位元 { e } だけです。この e について上記の定理などを具体的に確かめることができますが,これでは簡単に過ぎるので,ここでは他の例として単位元以外にも中心を持つ,結晶点群で C4v または,4mm と呼ばれる群を調べて見ましょう。

[4] C4v は,いわゆるピラミッドの3次元空間内での広義の回転対称操作を取り出した群です。その元の名称と対応する操作は下図のように正方形の底面の4つの頂点の動きで分類することができます。

ここで,σj というのは鏡映対称と呼ばれる変換で,下図の水色の線上に鏡をこの(モニタの)画面に垂直において鏡写ししたものとなります。その群表は下のようになります。

e c1 c2 c3
σx σy σd σd


XY e c1 c2 c3 σx σy σd σd
e e c1 c2 c3 σx σy σd σd
c1 c1 c2 c3 e σd σd σx σy
c2 c2 c3 e c1 σy σx σd σd
c3 c3 e c1 c2 σd σd σy σx
σx σx σd σy σd e c2 c1 c3
σy σy σd σx σd c2 e c3 c1
σd σd σy σd σx c3 c1 e c2
σd σd σx σd σy c1 c3 c2 e

[5] 背景が白い部分を見ると,c2 はすべての元,g∈C4v と可換であることがわかります。(元の幾何学的な意味は右図を見よ)このような元は他には単位元 e しかありません。したがって,

(1) 群 C4v中心 [#] は,部分群:Z (C4v)={e,c2 } となります。

XY e c2
e e c2
c2 c2 e

(2) これ以外にも自明でない部分群としては,

{e,σx },{e,σy },
{e,σd },{e,σd’},
{e,c1,c2,c3 },{e,c2,σx,σy},{e,c2,σd,σd’}

が存在します。

(3) 共役類 [#] は,

  {e},{c2},{c1,c3},{σx,σy},{σd,σd’}

であって,C4v は5つの共役類に分割されています。

[6] たとえば,c1,c3 が共役 [#]であることは次のような計算結果から,

g= e c1 c2 c3 σx σy σd σd
g-1 e c3 c2 c1 σx σy σd σd
g・c1g-1 c1 c1 c1 c1 c3 c3 c3 c3
g・c3g-1 c3 c3 c3 c3 c1 c1 c1 c1

わかります。つまり,

C(c1)={ c1,c3 }    ←左右の90°回転は同じ仲間

また,共役類は共通部分がない同値類に分類されているので,

|C4v|=  |C(a)|

この関係式は類等式と呼ばれます。

(4) c1中心化群: Cc1={ g|g・c1=c1・g; g∈G }は c1 と可換な元を抜き出して,

Cc1={ e,c1,c2,c3

となります。したがって, 

8= |G|=|Cc1|・|C(c1)| = 4×2 
と定理 [#]が確かめられます。

なお,c2 の中心化群は c2 がすべての C4v の元と可換なので,Cc2={e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}です。

ここまで,各元についてまとめておくと,
a = e c2 c1,c3 σx,σy σd,σd
共役類 C(a)= {e} {c2 {c1,c3 {σx,σy {σd,σd’}
中心化群 Ca C4v C4v  { e,c1,c2,c3 {e,c2,σx,σy {e,c2,σd,σd’}

中心化群の群表を書いておくと,

XY e c1 c2 c3
e e c1 c2 c3
c1 c1 c2 c3 e
c2 c2 c3 e c1
c3 c3 e c1 c2
XY e c2 σx σy
e e c2 σx σy
c2 c2 e σy σx
σx σx σy e c2
σy σy σx c2 e
XY e c2 σd σd
e e c2 σd σd
c2 c2 e σd σd
σd σd σd e c2
σd σd σd c2 e
 中心化群 { e,c1,c2,c3 中心化群 {e,c2,σx,σy 中心化群 {e,c2,σd,σd’}

これらが可逆な部分群であることは一目瞭然ですね。

[5] 中心化群の定義[#]において,a∈Gの固定部分群を考える代わりに,a → H (Gの部分集合) と置き換えて定義される群を正規化群といいます。

定義

部分集合 H (⊂G) と可換なG の元全体の集合,
 
          N (H) ={ g|gH=Hg ; g∈G } または,{ g|gHg-1=H ; g∈G }

を 「 H の正規化群」 という。

ここで,H はGの任意の部分集合でも構いませんが,重要なのは,H がGの部分群となっているときです。具体例 として,C4v でみておくと,

部分群
H=
{e,σx },{e,σy {e,σd },{e,σd’} {e,c1,c2,c3 },{e,c2,σx,σy},
{e,c2,σd,σd’},{e,c2 },{e}
正規化群
N (H) =
{e,c2,σx,σy {e,c2,σd,σd’} C4v

(1) 部分群 H={e,σx },および,{e,σy }の正規化群は,どちらもN (H) ={e,c2,σx,σy}である。
そして,HはN (H)の正規部分群[#]となっている。N(H)より大きな群はHを正規部分群としない。)

XY e σx c2 σy
e e σx c2 σy
σx σx e σy c2
c2 c2 σy e σx
σy σy c2 σx e
XY e σy c2 σx
e e σy c2 σx
σy σy e σx c2
c2 c2 σx e σy
σx σx c2 σy e
正規化群 {e,c2,σx,σy

(2) 部分群 H={e,σd },および,{e,σd’}の正規化群は,どちらもN (H) ={e,c2,σd,σd’}である。
そして,HはN (H)の正規部分群[#]となっている。

XY e σd c2 σd
e e σd c2 σd
σd σd e σd c2
c2 c2 σd e σd
σd σd c2 σd e
XY e σd c2 σd
e e σd c2 σd
σd σd e σd c2
c2 c2 σd e σd
σd σd c2 σd e
正規化群 {e,c2,σd,σd’}

(3) 部分群 H={e,c1,c2,c3 },{e,c2,σx,σy},および,{e,c2,σd,σd’}の正規化群は,どれもN (H) =C4v である。そして,HはN (H)の正規部分群[#]となっている。

XY e c1 c2 c3 σx σy σd σd
e e c1 c2 c3 σx σy σd σd
c1 c1 c2 c3 e σd σd σx σy
c2 c2 c3 e c1 σy σx σd σd
c3 c3 e c1 c2 σd σd σy σx
σx σx σd σy σd e c2 c1 c3
σy σy σd σx σd c2 e c3 c1
σd σd σy σd σx c3 c1 e c2
σd σd σx σd σy c1 c3 c2 e
正規化群 C4v
H={e,c1,c2,c3
XY e c2 σx σy c1 c3 σd σd
e e c2 σx σy c1 c3 σd σd
c2 c2 e σy σx c3 c1 σd σd
σx σx σy e c2 σd σd c1 c3
σy σy σx c2 e σd σd c3 c1
c1 c1 c3 σd σd c2 e σx σy
c3 c3 c1 σd σd e c2 σy σx
σd σd σd c3 c1 σy σx e c2
σd σd σd c1 c3 σx σy c2 e
正規化群 C4v
H={e,c2,σx,σy
XY e c2 σd σd c3 σx σy c1
e e c2 σd σd c3 σx σy c1
c2 c2 e σd σd c1 σy σx c3
σd σd σd e c2 σx c3 c1 σy
σd σd σd c2 e σy c1 c3 σx
c3 c3 c1 σy σx c2 σd σd e
σx σx σy c1 c3 σd e c2 σd
σy σy σx c3 c1 σd c2 e σd
c1 c1 c3 σx σy e σd σd c2
正規化群 C4v
H={e,c2,σd,σd’}

(4) 部分群 H={e,c2}の正規化群は,まず,N (H) =C4vである。
そして,HはC4vでの正規部分群となっています。

XY e c2 c1 c3 σx σy σd σd
e e c2 c1 c3 σx σy σd σd
c2 c2 e c3 c1 σy σx σd σd
c1 c1 c3 c2 e σd σd σx σy
c3 c3 c1 e c2 σd σd σy σx
σx σx σy σd σd e c2 c1 c3
σy σy σx σd σd c2 e c3 c1
σd σd σd σy σx c3 c1 e c2
σd σd σd σx σy c1 c3 c2 e

ところが,この一部分を抜き出してもH={e,c2}を正規部分群とする部分群が以下のとおり存在します。

XY e c2 σx σy
e e c2 σx σy
c2 c2 e σy σx
σx σx σy e c2
σy σy σx c2 e
XY e c2 c1 c3
e e c2 c1 c3
c2 c2 e c3 c1
c1 c1 c3 c2 e
c3 c3 c1 e c2
XY e c2 σd σd
e e c2 σd σd
c2 c2 e σd σd
σd σd σd e c2
σd σd σd c2 e
 {e,c2,σx,σy {e,c1,c2,c3 {e,c2,σd,σd’}

以上のまとめ

{e,c2 }   =<c2
{e,σx }  =<σx
{e,σy }  =<σy
{e,σd }  =<σd
{e,σd’}  =<σd’>

{e,c1,c2,c3 }   =<c1
{e,c2,σx,σy}  =<c2,σx>=<c12,σx
{e,c2,σd,σd’} =<c2,σd>=<c12,σd

{e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}=<c1,σx

Hasse図 C4v  (赤線: C4vの正規部分群)
              白線は直上の群の正規部分群
生成元による表示

説明文はこちら, ⇒ Appendix 冪零群


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命題1の証明

定理1の証明

C(a)からG/Caへ同型写像ψ(gag-1)=[g] が存在することを示せばよい。

gag-1∈C(a),[g],[h]∈G/Ca 




関連項目:

定理
 
対称群Snの中心は,C(S2)=S2,および,C(Sn)={e} (n≧3)
交代群Anの中心は,C(A3)=A3,および,C(An)={e} (n≧4)

点群で使われる記号  C4V

E={E}; C2={C42}; 2C4={C4、 C43}; 2σv={σx、σy}; 2σd={σd、σd’

同じ類に属する既約表現のトレースは等しいという重要な性質があります。これを指標と呼びます。