| 10 中心と中心化群 | ||
| f-denshi.com 更新日: 08/07/26 少し詰め込み過ぎですが,当面これで許してチョー | ||
急ぐ方はこの章を飛ばして11章へ進んでも構いません。
[1] しばらく抽象的な定義を列挙しますが,すぐわからなくてもそのまま読み進み,そのあとにあげる具体例をみながら,行きつ戻りつしてください。
| 定義 群 G のすべての元と可換な G の元全体は G の(正規)部分群となる。この部分群を G の中心 Z (G) という。 Z (G)={h|hg = gh ; すべての g∈G } |
中心とは共役[#]の条件をさらに厳しくしたものとみれます。つまり,h と g が共役であるというとき,枕言葉は,”ある g∈G” だったのですが,中心では, ”すべての g∈G” となっているところに注意してください。また,
| 命題 (1) 可換群 G の中心は G 自身である。 (2) 群G の中心 Z (G)の部分群はすべてG の正規部分群である。← この逆は成り立たない |
[2] さらに,G の G自身への働きを考えたときの固定部分群[#]には特別な名称がついてます。
| 定義 群G の G自身への両側からの働きを考えるとき,a∈G の固定部分群 Ca を 「a の中心化群」 という。 言い換えると,a∈G と可換なG の元全体の集合, Ca ={ g|ga=ag ; g∈G } または,{ g|gag-1=a ; g∈G } を 「 a の中心化群」 と呼ぶ。 |
この用語を用いれば,中心 [#] とは中心化群 Ca=G ( a と可換な元全体の集合がG自身と一致)となる a を集めてきたものなのです。
[3] このとき,次の定理が成り立ちます。
| 定理 群 G の元 a の共役類C(a)の位数|C(a)|と a の中心化群の位数|Ca|との関係は, |G|=|C(a)|×|Ca| |
[証明] 略
以上の定義,定理について例で確認して行きましょう。
まず,これまで調べてきた正四面体群の中心は,単位元 { e } だけです。この e について上記の定理などを具体的に確かめることができますがこれでは簡単に過ぎるので,ここでは他の例として単位元以外にも中心を持つ,結晶学で C4v と呼ばれる群を調べて見ましょう。
[4] C4v は正方形の3次元空間内でのすべての回転対称操作を元とする群です。その元の名称と対応する回転は右図のようになります。ここで,σj というのは鏡映対称と呼ばれる変換で,水色の線上に鏡をこの(モニタの)画面に垂直において鏡写ししたものとなります。
その群表は下のようになります。
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背景が白い部分を見ると,c2 はすべての元,g∈C4v と可換であることがわかります。(この幾何学的な意味は右図を見よ)このような元は他には単位元 e しかありません。したがって, (1) 群 C4v の中心 [#] は, (2) これ以外にも自明でない部分群としては, (3) 共役類 [#] は, |
が成り立つます。たとえば,c1,c3 が共役 [#] であることは次のような計算結果から,
g= e c1 c2 c3 σx σy σd σd’ g-1= e c3 c2 c1 σx σy σd σd’ g・c1g-1= c1 c1 c1 c1 c3 c3 c3 c3 g・c3g-1= c3 c3 c3 c3 c1 c1 c1 c1
わかります。つまり,
C(c1)={ c1,c3 }
また,共役類は共通部分がない同値類に分類されているので,
|C4v|= |C(a)|
この関係式は類等式と呼ばれます。
(4) c1 の中心化群: Cc1={ g|g・c1=c1・g; g∈G }は c1 と可換な元を抜き出して,
Cc1={ e,c1,c2,c3 }
となります。したがって,
8= |G|=|Cc1|・|C(c1)| = 4×2
共役類 C(g)= {e} {c1,c3} {c2} {σx,σy} {σd,σd’} 中心化群 Cg= C4v { e,c1,c2,c3 } C4v {e,c2,σx,σy} {e,c2,σd,σd’}
なお,c2 の中心化群は c2 がすべての C4v の元と可換なので,Cc2={e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}です。
[5] 中心化群の定義[#]において,a∈Gの固定部分群を考える代わりに,a → H (Gの部分集合) と置き換えて定義される群を正規化群といいます。
| 定義 部分集合 H (⊂G) と可換なG の元全体の集合, N (H) ={ g|gH=Hg ; ∃g∈G } または,{ g|gHg-1=a ; g∈G } を 「 H の正規化群」 という。 |
ここで,HはGの任意の部分集合でも構いませんが,重要なのはHがGの部分群となっているときです。具体例をみておくと,
(1) 集合 H={e,σx }の正規化群は,N (H) ={e,c2,σx,σy}である。そして,HはN (H)の正規部分群[#]となっている。
| X・Y | e | σx | c2 | σy |
| e | e | σx | c2 | σy |
| σx | σx | e | σy | c2 |
| c2 | c2 | σy | e | σx |
| σy | σy | c2 | σx | e |
(2) 集合 S={e,c1,c2,c3 }の正規化群はC4vである。そして,SはC4vの正規部分群となっている。
| X・Y | e | c1 | c2 | c3 | σx | σy | σd | σd’ |
| e | e | c1 | c2 | c3 | σx | σy | σd | σd’ |
| c1 | c1 | c2 | c3 | e | σd’ | σd | σx | σy |
| c2 | c2 | c3 | e | c1 | σy | σx | σd’ | σd |
| c3 | c3 | e | c1 | c2 | σd | σd’ | σy | σx |
| σx | σx | σd | σy | σd’ | e | c2 | c1 | c3 |
| σy | σy | σd’ | σx | σd | c2 | e | c3 | c1 |
| σd | σd | σy | σd’ | σx | c3 | c1 | e | c2 |
| σd’ | σd’ | σx | σd | σy | c1 | c3 | c2 | e |
要するに,「Gの部分群Hとその正規化群N (H) を考えると,HはN (H)の正規部分群となっている。」
以上,証明なしで具体例を示しました。証明は手元の教科書のものをタダ写すことになるのでパス。カラーの群表の抜粋サービス。
関連項目:
| 定理 対称群Snの中心は,C(S2)=S2,および,C(Sn)={e} (n≧3) 交代群Anの中心は,C(A3)=A3,および,C(An)={e} (n≧4) |
アーベル-ガロアの定理の中で。
点群で使われる記号 C4V
E={E}; C2={C42}; 2C4={C4、 C43}; 2σv={σx、σy}; 2σd={σd、σd’}
同じ類に属する既約表現のトレースは等しいという重要な性質があります。これを指標と呼びます。
指標の直交性
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| C4V指標表 |
(1)同じ既約表現について、hm:類Cmに含まれる元の数、
| 第1種直交性 元ごとの和をとると、
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具体的にA1とB2とですべての類で和をとると、
1・1・1+1・1・1+2・1・(-1)+2・1・(-1)+2・1・1
=0
第2種直交性
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こんどは縦にすべての表現についての和をとります。Cm=EとCn=C42 を例にみてみると、
1・1+1・1+1・1+1・1+2・(-2)
=0
最後に中心 Z ={e,c2} は C4v の正規部分群 [#] であることを確かめましょう。群表を抜き出して,
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| 左剰余類: {e,c2},{c1,c3},{σx,σy},{σd,σd’} 右剰余類: {e,c2},{c1,c3},{σx,σy},{σd,σd’} |
と左右の剰余類 [#] が一致してますね。
| X・Y | e | σy | c2 | σx |
| e | e | σy | c2 | σx |
| σy | σy | e | σx | c2 |
| c2 | c2 | σx | e | σy |
| σx | σx | c2 | σy | e |