10 化学ポテンシャル
f-denshi.com  [目次へ] 更新日: 08/03/03  「ウガンダハイフンの図」を入れて説明を一部クドくしました。

注意
: 部分モル量を表す記号として, 「 v~ 」を用いています。
  高純度の2銘柄の焼酎を考えます。(要するに水とアルコール以外の成分は無視できて風味に欠けるということ。) 焼酎のアルコールモル度数(こんな表示は見たことないかもしないが),一つは1%「ゲコごろし」,もう一つは99%「酒爛」とします。ここで,含有されているアルコールのもつエネルギーを考えてみると,エネルギーは示量的変数なので,それはアルコールの質量(分子数)に比例するはずです。したがって,同量の焼酎で考えたとき,99倍のアルコール分子を含む焼酎「酒爛」のアルコールのもつエネルギーは「ゲコごろし」の99倍かというと,それは間違いなのです。なぜかと言えば,「ゲコごろし」に含まれているアルコール分子はほとんど水分子ばかりに囲まれているのに対して,「酒爛」に含まれているアルコール分子は,アルコール分子によってほとんどが囲まれているはずです。したがって,アルコール1分子に配分されるエネルギーは銘柄依存性を持つわけで,単純な比較はできないのです。これをはっきりさせようじゃないかというのが,「化学ポテンシャル」なのです。このことが何の役にたつのかといえば,化学反応を含む森羅万象すべて巨視的な現象の進む方向を半定量的に予測できるのです。例えば化学電池,太陽電池の起電力やダイオードの発する光の色などの理論的な背景を与えます。
(この前書きにつっこみを入れられるようになれば,あなたは化学ポテンシャルを理解したことになります。)

1.単一成分系の化学ポテンシャル

[1] いくつかの専門用語の説明からはじめます。系が熱,仕事だけでなく,質量(物質)も外界と交換する系を開放系といいます。その場合,系の内部エネルギーなども質量の増減とともに変化しますが,このように系の質量に依存する熱力学変数を示量変数といいました。

それから,部分モル量(partial molal quantity) と呼ばれる用語です。これは熱力学変数(関数)をその系の粒子数(モル数)で偏微分した量です。「部分」という用語は偏微分の偏 (partial) と同じ語源です。この概念は,多成分系に用いたときに真価を発揮するものなのですが,ここでは説明のしやすさから,純粋な一種類の分子から構成される開放系について考えることから始めます。

 ギブス自由エネルギー: G(T,P) の独立変数 T,P はともに系の質量に依存しない示強変数ですが(←これが熱力学関数の中で G が少し特別な地位にある理由です!) ,G自身は示量変数(〜示量関数)なので,その量は系の質量,つまり,モル数に依存し,n モルからなる系のギブス自由エネルギーを正確には,G(T,P,n) と書く必要があります。このとき,

G(T,P,n) nG(T,P,1) ng(T,P)    ・・・・・ [*]

の関係が成立しています。g(T,P) は系のギブス自由エネルギーをただ,モル数 n で割った平均モル自由エネルギー[#]です。この式のn による偏微分は,

∂G(T,P,n )  G(T,P,1) g(T,P)    ・・・ [**]
∂n T,P

となりますが,この左辺,すなわち,G(T,P,n ) の部分モルギブス自由エネルギーg~(T,P) を系の化学ポテンシャルと定義し,

μ(T,P) ≡ ∂G(T,P,n )
∂n T,P

と書くことにします。単位は [kJ/mol] がよく使われます。

くどいが重要な注意
上式から,μ(T,P)g(T,P),すなわち,μ=G/n が成り立つのは純粋な物質を考えているときだけで,多成分系で j 番目の成分について,μj=G/njなどとは定義しません。したがって,ここで,化学ポテンシャルを系の「1モルあたりのギブス自由エネルギー」と定義したと端折るのは間違い。もう一回よーく,定義を読み返してください。あくまで,G(T,P,n )のnによる偏微分が化学ポテンシャルです。決してμ≡G/nではありません。そうやってしまうと,[**]に含まれている同次関数に関するオイラーの定理[#]とかオイラーの関係式と呼ばれるこの関数G(T,P,n)を制限している重要な条件式を見失うことになってしまいます。

  どうしてもここで,「1モルあたり」という言葉を使いたければ,系の粒子数が等温,定圧下で変化する際のギブス自由エネルギー変化を粒子1モル当たりに換算した量を化学ポテンシャルと呼ぶとしなければいけません。なお,多成分系の化学ポテンシャルと平均モル自由エネルギーとの正しい関係は後ほど説明します。⇒[#]

それから,[**]の物理的解釈ですが,タンクに純水が10キロリットルほど入れてある状況(=系)を思い浮かべてください。そこへ1モル(=18g)の純水を加えると,この系のギブス自由エネルギーGはどれだけ変化しますか?その答えは,「純水1モルがもっているギブス自由エネルギー g(T,P)である。」となります。[**]はこのような当たり前のことを式で表したものです。これ以上でもこれ以下でもありません。

ところが,タンクの中身が2成分系である「ゲコごろし」や「酒爛」[#]の場合は違ってきます。系に水1モルを加えたからといって,そのまま,水1モルが持っているギブス自由エネルギーが系に加算されるわけではありません。理由はこのページの冒頭で述べたとおり。もっとずっと慎重な議論が必要となります。

[2] さて,変数 nが追加され,G(T,P,n)と書くと,G(T,P)と書く場合に比べて純物質の熱力学状態を定める自由度が2つから3つに増えたように思えますが,それは違います。次の微分,

(1) dG = −SdT+VdP+μdn  (← G(T,P,n ) の全微分から⇒[#] )
(2) dG = ndμ+μdn       (← G(T,P,n ) = nμ (オイラーの関係式[#]) の微分から )

の2式から導かれる条件式:        (辺々引いて)

−SdT+VdP−ndμ = 0        

は全微分で表されており,この示強変数の微分量のうち2つが決まれば,残りのひとつは自動的に決まることを示しています[#]。つまり,この系の自由は2つ。この式をギブス-デュエムの式といいます。

  「nを明示しても純粋物質の熱力学的自由度は変わらない」ということの物理的な意味は,ある決まった温度,圧力のもとにある1モルの水と2モルの水とが異なる熱力学状態にあるとは考えないことと理解してもいいでしょう。コップ1杯の水と2杯の水とで,同じ大気圧下での沸点が異なったりはしないでしょう?化学ポテンシャルとはこういった質量に直接依存しない現象を解明するため考え出された最強の武器なのです。状態方程式PV=RTに従う気体の熱力学的な自由度は2つなのに対して,PV=nRTに従うとするときは,nも変数にカウントして自由度が3つあると考えたりしないのも同じ理由。モル数nというのは人間が適当に決めた単位数量に過ぎず,その決め方によって熱力学的自由度が変わったりはしないのです。熱力学の自由度に係わるこの種の量は組成を表すモル分率であることがすぐ後でわかります。
H
S
示量変数
P
示強変数
U G
V
示量変数
T
示強変数
F

今の場合,μ(T,P)=G(T,P,1)=g(T,P) ですが,他の熱力学変数の場合はこうはなりません。例えば,ヘルムホルツ自由エネルギーについては,

F(T,V,n) nF(T,V,1) であり,正しくは F(T,V,n) = nF(T,V/n,1)

となっています。つまり,F(T,V,1) =f(T,V) のような定義を見かけることはないのです。同様に,エンタルピーH(S,P,1),内部エネルギーU(S,V,1) に対してもギブス自由エネルギーに対して成り立つ[*]および,[**]のような関係は成り立ちません。G(T,P,n)に対して,このオイラーの関係式が成り立つ理由は,G(T,P)の変化が独立変数として,圧力P,温度Tという示強変数の変化のみで記述が可能だからです。つまり,全微分で,dG =−SdT+VdPとかけるということ。

 この様子は例のウガンダハイフン(右図)[#]を見れば一目瞭然ですね。それゆえ,G(T,P)の変化は直接質量に依存しない現象の記述に有用なのです。(これはG(T,P)そのものが示強性だといっているのではない。dT,dPの係数,-S,Vを通してG(T,P)そのものは示量性である。つまり,nを明示しないときもS,やV にnが潜んでいるのです。)力学での例えだと,水に物体が浮くか沈むかが示強変数,密度によって評価できることと同じ。質量はもちろん,体積も直接は関係ないのです。あまり,不用意に例を並べ過ぎると墓穴を掘り,突っ込まれそうなのでやめておきますが・・・,以上が他の熱力学関数F,H,Uをさしおいて,熱力学関数Gが熱力学の中で特別な地位を獲得している理由です。

それからもう一つちょっとひねくれた話。本来,熱力学関数の変数は2つの自由度の下で任意に選べるので,F(T,V,n)ではなく,F(T,P,n)とすれば,G(T,P,n)と同じように”使える”のではないかと考えることも可能です。そのようにすれば,確かにオイラーの関係式についてはクリアーでき,化学ポテンシャルとして使えそうです。しかし,Fの全微分は,

dF= ∂F dT+ ∂F dP
∂T P ∂P T

となり,偏微分係数がS,P,V,Tのような簡単な物理量ではなくなります。FはTとVを変数に選んだときだけ,dF =−SdT−PdV と簡単に書けるのでした。TとPをFの変数に選ぶと,その偏微分係数が熱力学のいたるところにそのまま顔を出すことになり,その意味がよくわからないので,他の熱力学関数を用いて変換してやろうということになるはずです。そして結局は,余計な手間がかからないためには最初からG(T,P,n)を用いて化学ポテンシャルとして定義するのが一番だと納得することになるのです。

[3] しかし,G(T,P,n) のルジャンドル変換と各熱力学変数の全微分を比較して,

μ≡ ∂G ∂H ∂U ∂F          [化学ポテンシャルの定義]・・・[***]
∂n P,T ∂n S,P ∂n S,V ∂n T,V

が成り立ちます。この等式はこれまでG(T,P,n)がF,H,Uに比べて特別だと説明してきた経緯からはちょっと困った不思議な関係式です。これらを眺めるときの注意点として,熱力学関数をnで偏微分する際,一定にさせておく変数が熱力学関数ごとにそれぞれ異なることを指摘しておきましょう。偏微分の物理的意味を確認すると,左端のギブスの自由エネルギーは,温度,圧力が一定の下で粒子数を変化させると,それに伴って変化するのは体積とエントロピーとなります。一方,右端のヘルムホルツ自由エネルギーでは,温度,体積一定の下で粒子数を変化させると,それに伴い変化できるのは圧力とエントロピーなのです。この2つの偏微分の物理的な意味を図に描いてみると次のようになります。(粒子の色の違いは意味がありません,念のため)

この図で分かるように粒子数が1モル増加したときのエネルギー増加を,ギブス自由エネルギーでは,系と同質な1モル分の体積の増加によって表現され,一方,ヘルムホルツ自由ネルギーの場合は系の体積を保ったまま,系と同じ温度で湧き出した粒子1モル分の圧力の増加で表現されることになります。ときわ台学流にいえば,

ギブス自由エネルギーの増減は,仕切りの開閉,
ヘルムホルツ自由エネルギーの増減は,粒子の準静的湧き出し・消滅

となります。変化するエネルギーの形態は両者でまったく違うのですが,その分量は同じだよということが,化学ポテンシャルの定義式,[***]で述べられているのです。(なお,上図やその説明に使われている準静的な粒子の湧き出しなどという用語はここだけの造語なので,あしからず,・・・.
それから1モル粒子数が増加したときの自由エネルギー増加量というのは,あくまで単位の取り方としてそう換算しているのであって,実際に1モル増加させるわけではないことを断っておきます。車が時速50kmで走るといっても実際に1時間かけて50km走って見せる必要はなく,ある瞬間,瞬間に速度が定義できるのといっしょです。)

 本当に同じかどうかは,エントロピー変化も考慮して一から計算して証明することもできますが,今は各熱力学関数がルジャンドル変換という変数変換で結び付けられていることを知っているのでこれを利用します。

たとえば,ルジャンドル変換 G=H−ST によって,dG =−SdT+VdP+μdn は,

dH =TdS+VdP+μdn,
これを H(S,P,n ) の全微分 dH = TdS+VdP+ ∂H(S,P,n)  dn と比較すれば,
∂n S,P
一つ目の””が証明されます。以下同様  ・・・ 。 

ということで,開放系の熱力学関数に関する全微分は,

  dU =  TdS−PdV+μdn    
  dH =  TdS+VdP+μdn  
  dF =−SdT−PdV+μdn 
  dG =−SdT+VdP+μdn

と書くことができます。

[4] これらの式からは開放系における熱力学公式が導かれます。たとえば一番目の

dU=TdS−PdV+μdn

をU,V を一定の下で,dnで除せば,

0=T ∂S U,V +μ
∂n

が得られます。この式は統計力学的エントロピーからグランドカノニカル分布を導く際に拠りどころとする熱力学公式です。他にもいろいろな公式が導かれますが,WEB上ではここまでとしておきます。

2.2成分系の化学ポテンシャル

[1] 1.では純粋な物質を例に説明してきましたが,ここからは多成分系へと話を進めていきます。多成分系とは水とアルコールの混合物のように,分子式の異なる2種類以上のものが混じった系のことをいいます。
     (これは前章[#]で扱った同じ分子式をもつ水と水蒸気が混じった(共存する)状況とは違います。)
まず,水(成分1)が n1 モル,アルコール(成分2)が n2 モル含まれる2成分系 (n1+n2=n) である焼酎を考えて見ましょう。あなたが酒飲みではなくても,アルコール濃度が等しいならば,一合でも,一升でもその分量にかかわらず同じ ”品質” であることはすぐに理解できますね。このような場合において,「各成分についてそれぞれλ倍した結果は,元々の全体をλ倍することに等しい」ということが起こり得ます。このような性質を一般式で,

f(λn1,λn2)=λf(n1,n2) を満足する関数

として述べることができます。この等式をオイラーの関係式[#]と呼び,これを満足する関数f(x)を1次の同次関数と呼びます。このような関数の具体例としては,焼酎の質量を挙げることができます。水,アルコールの分子量をmw,maとすれば,焼酎の質量は関数m(n1,n2)として,

m(n1,n2)=n1mw+n2ma

で与えられます。このとき,

m(λn1,λn2) =(λn1)mw+(λn2)ma
           =λ(n1mw+n2ma)= λm(n1,n2)

が成り立つので,m(n1,n2)は1次の同次関数です。質量に比例するような物理量の中にはこの関係式を満たすものが他にもあり,熱力学関数においては,この焼酎のもつギブス自由エネルギー,G(T,P,n1,n2)が

G(T,P,λn1,λn2)=λG(T,P,n1,n2) ←純粋な場合の, G(T,P,n) = nG(T,P,1)[*]式の拡張です。

を満たしています。この両辺をλで微分して,(合成微分をしてます↓)

n1 ∂G + n2 ∂G T,P,λn1 = G
∂(λn1) T,P,λn2 ∂(λn2)

なる関係が得られます。さらに,λ=1 として,この系のギブス自由エネルギーが

G=n1μ1+n2μ2

と書けることが分かります。ただし,ここで,

μ1g~1 ∂G(T,P,n1,n2)
∂n1 T,P,n2
μ2g~2 ∂G(T,P,n1,n2 )
∂n2 T,P,n1

を定義して用いています。このように系全体の自由エネルギーを各成分で偏微分して得られる部分モル自由エネルギーを,その成分についての化学ポテンシャルと呼びます。

[2] その物理的な意味ですが,μ1は組成比が n1:n2 である混合系において,成分 1 に割り当てられるギブス自由エネルギーを 1mol 当たりに換算したものとみなすことができます。μ2 も成分 2 に対する同様な量です。また,この式を n で割って,モル分率

x1 n1 ,  x2 n2
n n

を定義して用いれば,

g(P,T,n1,n2)= G n1 μ1 n2 μ2
n n n
     =x1μ1(P,T,x1,x2)+ x2μ2(P,T,x1,x2)

このg を 平均モル自由エネルギーといいます。 もちろん,純粋な水の場合,x1=1,x2=0 として, g=μ1が成り立ちます。つまり純粋な物質にかぎり,平均モル自由エネルギーと部分モル自由エネルギー,すなわち,化学ポテンシャルとが一致します。それから,最後のところで化学ポテンシャルの変数がモル数,n1,n2 から組成,x1,x2 に代わっています。これはGの1次の同次関数の性質を使って,

g(P,T,n1,n2)= G(T,P,n1,n2) =G(T,P,n1/n,n2/n)=G(T,P,x1,x2)
n

と書き換えられることから正当化されます。さらに,x1+x2=1であることに注意すれば,

μ1(P,T,x1,x2) = μ1(T,P,x1,1-x1)
μ2(P,T,x1,x2) = μ2(T,P,1-x2,x2)

なので,2成分系の平均モル自由エネルギーと各成分の化学ポテンシャルとの関係を,

g(P,T,x1,x2)=x1μ1(P,T,x1)+ x2μ2(P,T,x2)

という形に書いても良いことが分かります。つまり,多成分系において,平均モル自由エネルギー,化学ポテンシャルともに組成の関数であって,そのモル数には陽には関係しません。

[3] さて,G=n1μ1+n2μ2 の微分は,

dG=dn1μ1+dn2μ2+n11+n22 

一方,(変数を意識して,) G(T,P,n1,n2) の全微分は[#]

dG =−SdT+VdP+dn1μ1+dn2μ2  

となります。これらを比較することで,2成分系の場合のギブス-デュエムの式

−SdT+VdP−n11−n22 = 0  [ギブス-デュエムの式]

が得られます。そして,この式をnで割ると,平均モル量を用いた表現,

−sdT+vdP−x11−x22 = 0  [ギブス-デュエムの式,モル量表現

となります。ここで,

s=S/n : 平均モルエントロピー
v=V/n : 平均モル体積 

を用いています[#]。さらに定温,定圧下では,

x11+x22 = 0  [定温,定圧下でのギブス-デュエムの式]

[4] もうひとつよく用いられるギブス-デュエムの式の別形を導いておきましょう。

V(T,P,λn1,λn2) = λV(T,P,n1,n2)
S(T,P,λn1,λn2) = λS(T,P,n1,n2) 

というようにこれらは G と同じ性質をもつので,G の場合と同様の議論によって,

V = n1v~1+n2v~2,  S = n1s~1+n2s~2
v~1 ∂V   , v~2 ∂V     [成分の1,及び2の部分モル体積]
∂n1 T,P,n2 ∂n2 T,P,n1
s~1 ∂S  , s~2 ∂S   [成分の1,及び2の部分モルエントロピー]
∂n1 T,P,n2 ∂n2 T,P,n1

が成り立ちます。これを用いて,

V/n =v=x1v~1+ x2v~2 
S/n =s=x1s~1+ x2s~2

結局,ギブス-デュエムの式は,組成と部分モル量だけで,

x1{−s~1dT+v~1dP−dμ1}+x2{−s~2dT+v~2dP−dμ2}= 0 

                                        [ギブス-デュエムの式,部分モル量表現

とも表わせます。もちろんμj=g~jであることをお忘れなく。

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CopyRight フジエダ電子出版

解析学の講義ノートからのオイラーの定理のコピーです。(本文中でクリックしない人も多いようなので。)

オイラーの定理

[1] オイラーの名のついた定理はいくつもありますが,同次関数におけるオイラーの定理は,生物や化学,経済学など非常に幅広い分野で,規模の拡大に対する系の変動を表す数学モデルとして使われています。

オイラーの定理
n次の同次関数,f(x1,x2,・・・,xp)について,
 x1 ∂f +x2 ∂f +・・・+  xp ∂f  = nf(x1,x2,・・・,xp)
∂x1 ∂x2 ∂xp

ここで,同次関数とは,

f(nx1,nx2,・・・,nxp) = nf(x1,x2,・・・,xp)   [オイラーの関係式]

を満足する関数をいいます。

[2] 変数の数を増やすのは簡単なので2変数で説明します。関数 f(x,y) が次の性質を満たすときn次の同次関数です。

f(tx,ty)=tnf(x,y)

たとえば,

f(x,y)=(x+y)n

は,

f(tx,ty)=(tx+ty)n =tn(x+y)n =tnf(x,y)    ・・・・・・・・・[*]

なので,同次関数の例です。

このような同次関数に対して,オイラーの定理とは,

 x ∂f +y ∂f  =nf(x,y)
∂x ∂y

が成り立つことです。

[3] この証明は,

u=tx,v=ty として,[*] の左辺を合成関数 f(u(t,x),v(t,y)) とみなせば,

∂f  = ∂f ∂u  + ∂f ∂v
∂t ∂u ∂t ∂v ∂t
      = ∂f x + ∂f y
∂u ∂v

一方,[*]の右辺を t で微分すれば,

∂f  =ntn-1f(x,y)
∂t

これらは等しいので,

∂f x + ∂f y=ntn-1f(x,y)
∂u ∂v

この式は,t→1 のとき,u→x,v→y なので,

∂f x + ∂f y=nf(x,y)
∂x ∂y

証明終わり。

[4] 特に1次の同次関数は,n

f(x,y)= ∂f x + ∂f y
∂x ∂y

ですが,

f→G, x→n1, y→n2 ∂f →μ1 ∂f →μ2
∂x ∂y

と記号を置き換えれば,

G=n1μ1+n2μ2

つまり,熱力学で自由エネルギーを化学ポテンシャルを使って表すための数学的な背景がここにあります。