| 14-2 ゲージ変換とローレンツ共変 | |
| f-denshi.com [目次へ] 最終更新日:09/06/10 (仮)まだちょっと読みにくい | |
[1] 電磁ポテンシャルを用いたマクスウェルの方程式は,
(1) Δφ+ ∂divA =− ρ ∂t ε
(4) ΔA −εμ ∂2 A −grad εμ ∂φ + divA = −μj ∂t2 ∂t
で与えられます。ただし電磁ポテンシャルは,
(3) B = rot A
(2) E =−gradφ− ∂A ∂t
を満足するように選ばなければなりませんが,任意のスカラー関数χだけの自由度を持っていて,
A’ = A + grad χ
φ’ = φ − ∂χ ∂t
となるA’,φ’を用いても数学的には同じ電磁気現象を記述することが可能ということでした。
[2] この性質を利用して,適当な関数χを選び直すことで問題を解くために都合のよい電磁ポテンシャルを設定すれば,計算を楽に進めることができるようになります。よく用いられる基本的な「ゲージ」は次の2つです。
[ゲージ変換]
|
||||||||
( I ) クーロン・ゲージ
クーロンゲージ とは, div A = 0 となるようにχを選ぶと,マクスウェルの方程式の(1),(4)は,
(1)” Δφ =− ρ ε
(4)” ΔA−εμ ∂2A −εμ ∂ gradφ =− μj ∂t2 ∂t
となります。(1)” 式がクーロンの法則に等価なポアッソンの方程式[#]そのもです。つまり,このゲージをもちいると,一般的な電磁気現象を取り扱う際に,静電気学の方程式を基に計算を進めることができるのです。 電磁場の量子化参照 ⇒[#]
( II ) ローレンツ・ゲージ
もう一つの電磁ポテンシャルであるローレンツゲージ ,
div A +εμ ∂φ = div A + ∂φ = 0 ∂t c2∂t
を用いた場合の重要な特徴は,「ローレンツ変換に対して,マクスウェルの方程式が式の形を変えない(=ローレンツ共変)」ことです。このゲージの下でのマクスウェルの方程式は,
(1)’ Δφ− ∂2φ =− ρ c2∂t2 ε
(4)’ ΔA− ∂2A =− μ j c2∂t2
という対称性のよい2つの線形微分方程式になります。 さらに,
ダランベルシアン(演算子): □ ≡ Δ− ∂2 c2∂t2
を定義して用いると,
□ φ =− ρ , および, □ A =−μj ε
と極めて簡素な式となります。 ローレンツゲージは時間変化のある動的な現象の取り扱いに適しています。
[3] ローレンツゲージの元では,マクスウェルの方程式は形を変えないと述べましたが,これを示すためには,先ず,ローレンツ変換の下で,ダランベルシアン が形を変えないことを示しましょう。それは以下のように計算して確かめられます。
ローレンツ変換[#],
ct’=γ (ct − βz)
x’ = x
y’ = y
z’ =γ (z − βct)ただし, γ = 1 > 1, β = v
1−β2 c
にしたがって,時間,空間変数の微分演算子の変換は[#],
∂ = ∂t’ ∂ + ∂z’ ∂ =γ ∂ −γβc ∂ ∂t ∂t ∂t’ ∂t ∂z’ ∂t’ ∂z’
∂2 =γ2 ∂2 +(γβc)2 ∂2 −2γ2βc ∂2 ・・・・(3) ∂t2 ∂t’2 ∂z’2 ∂t’∂z’
および,
∂ = ∂t’ ∂ + ∂z’ ∂ =−γβ ∂ +γ ∂ ∂z ∂z ∂t’ ∂z ∂z’ c∂t’ ∂z’
∂2 =(γβ)2 ∂2 +γ2 ∂2 −2γ2β ∂2 ・・・・(4) ∂z2 c2∂t’2 ∂z’2 c∂t’∂z’
と変換されます。よって,(3),(4)より,
− ∂2 + ∂2 c2∂t2 ∂z2
=(−γ2+(γβ)2) ∂2 +(−(γβ)2+γ2) ∂2 +(2γ2β−2γ2β) ∂2 c2∂t’2 ∂z’2 c∂t’∂z’
=− ∂2 + ∂2 c2∂t’2 ∂z’2
一方,
∂2 = ∂2 および, ∂2 = ∂2 ∂x2 ∂x’2 ∂y2 ∂y’2
したがって,
□≡ ∂2 + ∂2 + ∂2 − ∂2 = ∂2 + ∂2 + ∂2 − ∂2 ≡□’ ∂x2 ∂y2 ∂z2 c2∂t2 ∂x’2 ∂y’2 ∂z’2 c2∂t2
これは2つの座標系においてダランベルシアンが「同形」であることを意味しています。
[1] 今度は電磁ポテンシャルがローレンツ変換によってどう変換されるかを見ていきます。ローレンツゲージにおける電磁ポテンシャルで表したマクスウェルの方程式は,
(1) □ φ =− ρ [ スカラーポテンシャル ] ε
(2) □ A =−μj [ ベクトルポテンシャル ]
(3) div A + ∂φ = 0 [ ローレンツ・ゲージ ] c2∂t
となります。まず,電荷も電流も存在せず,右辺=0 となる次の場合について考えます。
(1)’ □ φ = 0
(2)’ □ A = 0
これらの演算子部分が,□→□’と変換されることは先程述べたとおりです。このとき,電磁ポテンシャルもφ→φ’,A→A’と変換されなければなりませんが,これまで述べてきたように観測者の立場によって,すなわち,座標系が換わると,電場,磁場は入り混じって変換されることから,電場,磁場を与える電磁ポテンシャルも座標変換(ローレンツ変換)によって入り混じって変換されるはずです。具体的にφ’,A’ の形を求めるために取りあえず,(3)の演算子部分だけをローレンツ変換してみると,
∂Ax + ∂Ay + ∂Az + ∂φ = ∂Ax + ∂Ay + −γβ ∂ +γ ∂ Az+ γ ∂ −γβc ∂ φ ∂x ∂y ∂z c2∂t ∂x’ ∂y’ c∂t’ ∂z’ c2∂t’ c2∂z’
= ∂Ax + ∂Ay + ∂ γAz−γβ φ + ∂ −γβcAz+γφ =0 (3)’ ∂x’ ∂y’ ∂z’ c c2∂t’
となります。ここで,電磁ポテンシャルがローレンツ変換によって形を変えないとするならば,すなわち,
∂A’x + ∂A’y + ∂A’z + ∂φ’ =0 ∂x ∂y ∂z c2∂t
と表されるならば,電磁ポテンシャルは,
A’x=Ax
A’y=Ay
A’z=γ Az−β φ ←A’zはAzとφとの1次結合となっている! c
φ’ =γ φ −βAz ←φ’はAzとφとの1次結合となっている! c c
と変換される必要があります。また,あるポテンシャル関数φ,A が(1)’,(2)’の解であるならば,その1次結合であるφ’もA’ も(1)’,(2)’の解となります。したがって,
□φ=0, □Az=0 ⇒ □φ’=□cγ φ −βAz =0, □A’z=γ Az−β φ =0 c c
⇒ □’φ’=0, □’A’= 0
と書き直してもよいことになります。つまり,(1),(2)もローレンツ変換に対して形式的な形を変えないことがわかります。最後の⇒では,ダランベルシアンがローレンツ変換に対して形を変えないことを利用しています。また,□A =0 は3つの微分方程式をベクトルの形で1つにまとめて表記していますが,今の場合,z成分だけが変換によって形を変えるので,途中,□Az =0 だけ抜き出して示しています。
[2] 次に電荷,電流も存在する一般的な場合を考えます。これは「電荷についての連続の式」[#],
∂jx + ∂jy + ∂jz + ∂ρ =0 ∂x ∂y ∂z ∂t
がローレンツ変換によって形を変えないという条件から電磁ポテンシャルのときと同様な計算 (A ⇒J,φ/c ⇒cρとせよ) から,
jx’=jx
jy’=jy
jz’=γ(jz−βcρ)
cρ’=γ(cρ−βjz)
と変換されることがわかります。以上を4元ベクトル (x0,x1,x2,x3) を用いてまとめると,
| [ ローレンツ共変 ] 4元ベクトル (ct,x,y,z),(φ/c,Ax,Ay,Az),(cρ,jx,jy,jz) はローレンツ変換, x0’=γ (x0 − βx3) に従う。このように4元ベクトルが変換されることをローレンツ共変という。 (x の上添字は反変成分の意味だが,ここではタダの添字以上の役割はないので気にしなくてよい。) |
これらの結果を総合すると,電磁ポテンシャルで表したマクスウェルの方程式は互いに等速運動する座標系(=慣性系)によって形式を変えずに表すことが可能であることがわかります。
電場と磁場を用いて表される電磁気現象は観測者の立場によってそれを記述する方程式が形を変えてしまいます。極端な場合,ある観測者にとっては電場と電荷の相互作用として取り扱う現象が別の観測者にとっては磁場と電荷との相互作用として取り扱われ,理解されるようなことも起こり得ます。
ところが,このページで示したようにローレンツゲージのもとの電磁ポテンシャルを用いると,すべての慣性系の観測者にとって解くべき方程式は形が同一となるのです。そのような意味で,電磁ポテンシャルの方が,電場,磁場より本質的な物理量であると考えることができます。
取りあえずここまで。
CopyRight フジエダ電子出版