a05   水素原子
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[1] 定常状態にある水素原子のシュレーディンガー方程式 [#] は,

HΦ(x)=εΦ(x)
  H=− h2 2+V(r)  :   V(r ) =− e2
2m 4πε0 r

球座標変換[#]を行なうと,    2 については ⇒ [#]

2 2  + 2  + 1 Λ
∂r2 r ∂r r2

ただし,

Λ  1 sinθ  1 2
sinθ ∂θ ∂θ sin2θ ∂φ2

となるので,球座標でのシュレーディンガー方程式は次のようになります。

h2 2 2 1 Λ+V(r) Φ(r,θ,φ)=εΦ(r,θ,φ)   ・・・・ [*]  
2m ∂r2 r ∂r r2
(ちなみに,角運動量演算子:L2 = −h2Λ)

[2] ここで,Φ(r,θ,φ) = R(r)Y(θ,φ)とおいて,[*] に代入して整理すると,

r2 2R(r)  + 2 ∂R(r)  + 2m r2(ε−V(r)) =− 1  ΛY(θ,φ)
R(r) ∂r2 r ∂r h2 Y(θ,φ)

と書けることがわかります。この式をよく見ると,左辺は独立変数 r のみの関数,右辺は独立変数 θ,φのみの関数なので,この微分方程式が解を持つならば,この等式の両辺はある定数λに等しくなっているはずです。そのときは,

h2 2R(r)  + 2 ∂R(r)  − λ R(r) +V(r)R(r) = εR(r)   ・・・・ [**]  
2m ∂r2 r ∂r r2
ΛY(θ,φ)+λY(θ,φ) =0                  ・・・・・・・・・ [***]  

という2つの方程式に分解されます。 この微分方程式の解である R(r) は動径関数,Y(θ,φ) は球面調和関数と呼ばれます。
第1式 ( R(r) の微分方程式 ) はさらに,

R(r) = χ(r)/r  

と置き換えると,χ(r) についての微分方程式,

h2 2χ(r)  − λ χ(r) +V(r)χ(r) = εχ(r) ・・・・ [**]'  
2m ∂r2 r2

となります。 結局,微分方程式 [*] は ⇒ [**]'[***] を解けばよいことに帰着されました。

[3] ここでは結果だけ述べると,[***] の解は λ=l (l +1) のとき,つまり

 1 2  1 sinθ Y(θ,φ)=l (l +1)Y(θ,φ)
sin2 ∂φ2 sinθ ∂θ ∂θ

のときに限って存在し,球面調和関数 Y(θ,φ) が解となります。ただし,l  はある制限の課された整数です。

詳細 ⇒ 「 角運動量の取り扱い=球面調和関数のはなし 」 を参照してください。

[4] 一方,

a0 = 4πε0 h2 ,  ρ= 1  r,  a0dρ=dr,   η= 2(4πε0)2h2 ε = 2m a02ε
me2 a0 me4 h2

とおけば,[**]' は χ(r)⇒χ(ρ) と読み直して,

2χ(ρ)  + 2 λ χ(ρ)+ηχ(ρ) = 0  ・・・・ [**] ”  
∂ρ2 ρ ρ2

と変形されます。 ただし,λ=l (l +1)。

⇒ 「 ラゲールの陪多項式 」

[5] ついでに述べておくと,[**] で,V(r)=0 とした,

h2 2R(r)  + 2 ∂R(r)  − l (l +1) R(r) = εR(r) 
2m ∂r2 r ∂r r2

は,球ベッセル微分方程式と呼ばれます。 この方程式は変数変換 r ⇒ x = r(2mε/h2)1/2 をおこなえば,

2R(x)  + 2 ∂R(x)  + 1 − l (l +1) R(x) = 0 ・・・ [****]  
∂x2 x ∂x x2

とよく知られた形となり下記を参照のこと。

⇒ 「球ベッセル関数

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