5  ボレル集合体
f-denshi.com  [目次へ] 最終更新日:04/11/29
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このページでは,ルベーグ測度を一般化するために必要なボレル集合体,σ加法族について述べます。

1.集合体とボレル集合体

[1] いま,1から4までの目がでる正四面体のさいころを考えます。ここで,「 でる目 」 の集合 X を

X = {1,2,3,4} 

とします。そして X すべての部分集合を元とする部分集合族 β[#], 

β ={φ,{1},{2},{3},{4},
         {1,2},{1,3},{1,4},{2,3},{2,4},{3,4},
      {2,3,4},{1,3,4},{1,2,4},{1,2,3},{1,2,3,4}}

を考えます。この場合,βは集合 X のべき集合 [#] β[X] でもあります。
   ( しかし,この言葉はあまり気にしなくても良い。 )

[2] ここで,部分集合族の任意の元 A,B について,

(1) A∈β              ⇒   Ac∈β
(2) A∈β,B∈ β ⇒ A∪B ∈β

が成り立っていることは容易に確かめられます。(たとえば,A={1,2},B={1,3}とすれば,Ac={3,4},A∪B={1,2,3}も確かにβの元となっています。)これに

 (0) X の部分集合をすくなくとも一つ含む。

という条件を加えた3つの条件(0),(1),(2)を満たす部分集合族集合体,または加法族と言います。部分集合体としてはべき集合の他に,AをXの任意の部分集合とした,{φ,A,Ac,X} を選ぶこともできます(各自確認せよ)

一般的に,条件(0),(1),(2)を満たす部分集合族は自動的に,

(4) X,φ∈β
(5) A∈β,B∈β ⇒ A∩B ∈β,  A−B∈β

も満足することを示すことができます。

[3] 一方,βの元から実数への集合関数,m(A)として(もちろん,これを測度と呼んでもいい),元に含まれる目のどれかがでる確率として定義してみます。つまり,m({1,3})とは,このさいころを振って,1か3のどちらかが出る確率というように。全部書き出すと,

m(φ)=0
m({1})=m({2})=m({3})=m({4})= 1
4
m({1,2})=m{1,3}=m{1,4}=m{2,3}=m{2,4}=m{3,4}= 1
2
m({1,2,3})=m{1,3,4}=m{1,2,4}=m{1,2,3}= 3
4
m({1,2,3,4})  = 1

となります。これはもちろん,測度の条件を [#] を満足しています。さらに,有限加法性 が成り立っていることもわかります。つまり,{1},{2,3}∈β のように共通部分を持たないβの元(Xの部分集合)について,

m({1}∪{2,3})=m({1})+m({2,3}) 
       ↑123のいずれかがでる確率は1が出る確率と2か3のでる確率の和に等しい

が成り立ちます。一般化して述べれば,

A∩B=φ   ⇒     m(A∪B)=m(A)+m(B)

が成り立っていることがわかります。なお,ここで取り上げた例のように,m(X)=1であるような測度を確率測度とも呼びます。

[4] このような性質が無限濃度をもつ集合 X の部分集合族について成立するとき,その集合体は,σ集合体,またはσ加法族といいます。きちんと書くと,

定義:

集合 X の部分集合族 β が次の3つの条件を満たすとき,σ集合体,またはσ加法族とという。特に X = Rn のときは n次元ボレル集合体と呼ぶ。

(1) 少なくとも部分集合を一つ含む 
(2) A∈β ⇒ Ac∈β
(3) Ak∈β(k=1,2 ・・・)  ⇒   Ak∈β

このとき,βの元 (A,Ak∈β) を可測集合といい,さらに (X,β) を可測空間という。


このとき,

(4) X,φ ∈ β   ,φ=空集合
(5) Ak∈β(k=1,2・・・)  ⇒   Ak∈β

が自動的に成り立ちます。

(4)は,A∈Xならば,Ac∈β,⇒ X=A∪Ac∈β。さらにφ=Xc∈βであるから。

(5)については,

 ( Ak ) c (Ak)c ∈β

が言えるからです。

[5] または(3)の代わりに,

(3’) A,B∈β ⇒ A∩B∈β
(3”) Ak∈β(k=1,2・・・)が互いに共通点のない集合列 ⇒  Ak∈β

を定義に用いることができます。

 (1)(2)(3’)(3”) ⇒ (1)(2)(3)

を証明しておくと,

βからとった任意の集合列 {An}から右図のような

Bn ≡ An−A1∪A2∪・・・∪An-1 = An∩A1c∩A2c∩・・・∩An-1c 

を作れば,(2)(3’)より,Bn∈βで各Bnは互いに共通点をもたない。さらに(3”)から,

Bk∈β

ところが,右図を見てわかるように,

Bk Ak

結局,これは(3)が成り立つことを示している。//

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