201  フーリエ級数展開
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ここでは,直感的にわかりやすい説明したいと思います。もう少し,厳密な(難しい用語を使った説明)はルベーグ積分の応用編で話します。

1.フーリエ三角級数

解析学入門で,ある種の関数 f(x) は,

f(x) = f(a)+ f'(a) (x−a)+ f''(a) (x−a)2+・・・+ f(n)(a) (x−a)n + ・・・・・
1! 2! n!

とその導関数を利用して 「”関数” x の多項式 」 で テーラー展開できること示しました [#]が,ここではもっと一般的に”直交関数列”と呼ばれる適当な周期関数,特に三角関数で展開できることを見ていきます。

まず,定義から

周期2πをもつ関数 f(x) に対して定義される級数, 

a0/2 + { ancos nx + bn sin nx }                        ・・・・・ [*] 

f(x) のフーリエ三角級数と呼ぶ。ただし,an, bn は,f(x)のフーリエ三角係数と呼ばれる,

an 1 f(x)cos nx dx,   bn 1 f(x)sin nx dx
π π
     ( n=0,1,2,3,・・・   ;   b0=0 )
で与える。 特に,フーリエ三角級数が f(x) に等しいとき,[*]f(x) のフーリエ三角級数展開という。
(「三角」は省略するときもある。)

この三角関数を用いた級数展開が重要である理由は,次の三角関数の積分公式にあります。

 sin mt ・sin nx dt =   0    (m≠n)
 π    (m=n)
 cos mt ・cos nx dt =   0    (m≠n)
 π    (m=n)
 sin mt ・cos nx dt = 0
 sin mt dt = ・cos mx dt = 0

この公式のおかげで,f(x) がフーリエ三角級数展開可能,すなわち,

f(x)  a0/2 + { ancos nx + bn sin nx } ・・・・・ [**] 

である(等号が成り立つ)ならば,

1 f(x)cos kx dx
π
1 { a0/2 + { ancos nx + bn sin nx }cos kx dx
π
1 {(a0/2)cos kx dx + { 1 ancos nx ・cos kx dx } + { 1 bn sin nx ・cos kx dx }
π π π
= 0    +    ak    +    0  = ak

というような計算ができるのです。これがどんな意味をもつかと言うと,正規直交基底{12,・・・,n }をもつ n次元ベクトル空間 [#] における次のような内積計算と比較をすれば明快です。すなわち,ベクトル:

 = c11+c22+・・・+cnn  

に対して,内積の計算,

(k ) = ck

と比較すれば,

f(x)                 ⇔      
cos kx             ⇔      ek
f(x)・cos kx の積分=ak  ⇔    とk の内積=ak

つまり,

関数              ⇔          ベクトル
三角関数        ⇔        基底
積分              ⇔          内積

という対応関係が見出せます。すると,[**]と表せる関数の全体集合において,

{1,cos kx,sin kx}≡{1,cos x,cos 2x,cos 3x,・・・,sinx,sin 2x,sin 3x,・・・} 

はベクトル空間における ”正規直交基底” と同じ役割を担っていることがわかります。
そこでこれを,直交関数列 と呼ぶことにしましょう。結局,ベクトルが正規直交基底を用いて展開できるように,

「関数は直交関数列を用いて展開できる。」

ことを,フーリエ級数展開の存在は示唆しているのです。

もちろん,[**]の等号''” が成り立つとき,上に出てきた各積分値やその無限の和も発散しないこと等,こまかな条件が必要です。厳密な話はここでは省略しますが,微分可能な連続関数である三角関数の足し合わせなので,連続関数しか表現できないと思うのは早合点で,解析学の一様収束のところで述べたように,連続関数の列の極限は連続関数からはみ出し不連続になることもある[#]ことから推測できるように,三角級数展開によって,関数とは呼べないような恐ろしいトンデモ関数まで表すことができてしまうのです。

2.フーリエ級数展開の別形

フーリエ級数展開は他にもいろいろな表現があります。積分区間を任意の実数にしたり,無限区間に拡張したりです。

(1) 周期 2L ( =b - a )をもつ [a,b] で区分的になめららかな関数f(x)についてのフーリエ級数展開は, 

f(x−0)+f(x+0)  = a0/2 + { ancos nπx + bn sin nπx  }
2 L L

ただし,フーリエ係数,an, bn は,

an 1 f(x)cos nπx dx,   bn 1 f(x)sin nπx  dx }
L L L L
     ( n=0,1,2,3,・・・ )

(2)複素関数の場合

周期2πのとき,
f(x)=  cnexp(inx),  cn = 1 f(x)exp(−inx)
周期2Lのとき,
f(x)=  cnexp(i 2nπx/2L),  cn = 1 f(x)exp(−i 2nπx/2L)
2L

(1)については,-π≦x≦π ⇔ -L≦x≦L と対応させるために,

  x ⇔  πx   と対応させればよいことからわかります。
L

また,この形式にすれば,周期2Lの値には上限がないので,周期性のない関数もフーリエ解析の考察対象になりそうだと分かります。。

(2) フーリ級数展開の複素関数表示へは,オイラーの関係式,

e=cosθ+isinθ      ←複素平面上で2次元ベクトルとみなせる

をとおして変換されます。ベクトルとして収束すること,その各成分がそれぞれ収束することは同義なので,実数成分である,

・・・,cos(-2x),cos(-x), 1 ,cosx,cos2x, ・・・・

および,虚数成分,

・・・,sin(-2x),sin(-x), 0 ,sinx,sin2x, ・・・・

の両方がそれぞれ収束することと,つまり三角フーリエ級数が収束することと,次の複素指数の級数,

・・・,e-i2x, e-ix, 1 , eix, ei2x, ・・・・

が複素平面上の点(ベクトル)として収束することは同じことです。

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