102  線形微分同次方程式
f-denshi.com  更新日:  04/02/18
しばらくは,理論的な背景が簡単な線形微分方程式について述べましょう。

1.同次方程式

[1] 線形常微分方程式,

 y(n)+an-1(x)y(n-1)+an-2(x)y(n-2)+・・・+a1(x)y’+a0(x)y = f(x)

で,特に f(x)≡0 とした,

 y(n)+an-1(x)y(n-1)+an-2(x)y(n-2)+・・・+a1(x)y’+a0(x)y = 0

同次方程式と言います。

[2] この形をした微分方程式については,線形代数を理論背景とするいくつかの定理があります。

定理:
    同次方程式: Ly = 0 の解の全体集合(=解空間) [#] は k 次元ベクトル空間[#]となる。
すなわち,任意の実数 c1,c2,任意の解 y1,y2 について,

   (1)  L(c1y1+c2y2) = c1Ly1+c2Ly2 (=0)[ 重ね合わせの原理 ]
 (2)  L(c1y1) = c1Ly1          (=0)

を満足する。ただし,L は線形演算子で,

 L dn  +an-1(x) d(n-1)  + ・・・ + a1(x) d  + a0(x)
dxn dx(n-1) dx

ほとんど自明な性質です。この定理によって,任意の解は一次独立[#] な n個の関数 y*1,y*2,・・・,y*n を用いて,

y = c1y*1+c2y*2 ・・・ + cny*n    

のように一次結合で表せることが保障されます。この同次方程式の解空間 (=ベクトル空間) の基底にあたる関数, y*1,y*2,・・・,y*n基本解(または基本系)といいます。

[3] 結局,線形微分方程式の解を示すには,基本解を見つければいいことがわかりました。つまり,この n個の解を見つけ出して,それらが1次独立であることを示せばよいのです。ある k個の解の組が1次独立であることを示すためには次の定理を利用します。

定理:
 n階の同次方程式: L(y)=0 の解,y1,y2,・・・,yk, k≦n が1次独立である必要十分条件は,行列式

W(y1,y2,・・・,yk) = y1 y2 ・・・ yk   ≠ 0
y1 y2 yk
y1(k-1) y2(k-1) ・・・ yk(k-1)

が成り立つことである。

これは, 

c1y1    + c2y2      ・・・  + cyk       =  0

と,これを微分していって得られる次式,

c1y’1    +c2y’2     ・・・ + cky’k      =  0
c1y1(k-1)+c2y2(k-1) ・・・ + cky(k-1)k   =  0

とから作られる,未知数,c1,c2,・・・,c の連立1次方程式を行列 Wc を用いて,

W y1 y2 ・・・ yk c1   = 0
y1 y2 yk c2 0
y1(k-1) y2(k-1) ・・・ yk(k-1) ck 0

と表せば,次の2つは同値です。

c1=c2=・・・=c = 0   ⇔   W(y1,y2,・・・,yk) ≠ 0  ( ≡W が逆行列をもつ )

すなわち,y1,y2,・・・,yk が,1次独立である[#]こと ( ⇔ c1=c2=・・・=c= 0 ) と W(y1,y2,・・・,yk) ≠ 0 とは同値なのです。

[4] さて,以上のことを踏まえて,同次方程式でない一般的な線形微分方程式の解は次のようになります。

定理:
n階の線形微分方程式:

   L(y)=f(x) の特殊解を y0(x),

その同次方程式:

    L(y)=0   の一般解を yc(x)

とすると,n階の線形微分方程式:   
     L(y)=f(x) の一般解は, y0 + yc    
で与えられる。  なお,このyc(x)を余関数という。

これらは代数学の連立1次方程式の解空間と全く同じ状況[#]のことを言っています。
証明もリンク先の証明と同じです。





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