4 次元定理
f-denshi.com  最終更新日:03/06/27    

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1.次元定理

[1] 機が熟したところで,2章の終わりに述べかけた [#] 定理を紹介しましょう。

定理

線形写像,φ: V → W の定義域:V,その像:Imφ,およびその核:Kerφを有限次元とすると,
dimV = dim Imφ + dim Ker φ
が成り立つ。       

証明は,      ↓ vjkj V = Rnwj ∈ W = Rm
                             φ: ( m,n )行列 A をイメージして読みましょう。

Im φ の基底を, { w1w2,・・・,wp } つまり,dim Imφ  = p
Ker φ の基底を, { k1k2,・・・,kq } つまり,dim Ker φ = q とするとき,
 (もちろん,φ(kj )=0 ,j =1,2,・・・,q です。)



V
の基底は ,

     {v1v2 ・・・,vpk1k2,・・・,kq  ← dimV = p+q  

である。 ただし,v j は,

       φ(v j)=w j   ( j =1,2,・・・p )

を満たすに属するベクトルである。

ことを示すことで行います。    

[2] x を任意のベクトルとすると,φ(x )は Im φ の元なので,基底{ w1w2,・・・,wp }を用いて,

φ(x )=λ1w1+λ2w2+・・・+λpwp   : λj=実数

とあらわせるので,次式を線形写像の性質を利用して計算すると,

φ(x −λ1v1−λ2v2− ・・ −λpvp )
                    =φ(x )−λ1φ(v1)−λ2φ(v2)−・・−λpφ(vp
           =φ(x )−λ1w1−λ2w2−・・−λpwp
          =0

したがって,

x −λ1v1−λ2v2−・・−λpvp ∈ Kerφ

つまり, Ker φ の基底,{ k1k2,・・・,kq }を用いて,

      x −λ1v1−λ2v2−・・−λpvp=μ1k1+μ2k2+・・+μqkq   : μj=実数

       x =λ1v1+λ2v2+・・+λpvp+μ1k1+μ2k2+・・+μqkq   

これは,

(1) 任意のx ∈V が,v1v2,・・vpk1k2,・・,kq の1次結合で表せる。すなわち,
 {v1v2,・・vpk1k2,・・,kq } がベクトル空間 V を生成する。

ことを意味します。

[3] 次に v1v2,・・vpk1k2,・・,kq  が1次独立である[#]ことを示せば,これらが V の基底であることがわかりますが,そのためには,

(2) λ1v1+λ2v2+・・+λpvp+μ1k1+μ2k2+・・+μqkq  =0      

ならば,これらの係数がすべて 0 であることを言えばいいのです。それは,

0 = φ(0
  = φ(λ1v1+λ2v2+・・+λpvp+μ1k1+μ2k2+・・+μqkq
  = λ1φ(v1)+・・+λpφ(vp)+μ1φ(k1)+μ2φ(k2)+・・+μqφ(kq ← φ(kj)=0
  = λ1φ(v1)+・・+λpφ(vp)+  0 +  0 +・・ + 0
  = λ1w1+・・+λpwp          ← φ(v j)=w j   ( j =1,2,・・・p )

ここで,{ w1w2,・・・,wp } は1次独立なので,上の等式が成り立つためには,λ1,λ2,・・,λp はすべて 0 でなければいけません。これをもとの式(2)に代入すると,

(2)’ μ1k1+μ2k2+・+μqkq  =0

が成り立たなければなりません。ところが,基底,{ k1k2,・・・,kq } は1次独立なので,μ1,μ2,・・・,μq はすべて 0 でなければいけません。 結局,

(2) ならば,λ1=λ2=・・=λp=μ1=μ2=・・・=μq = 0

でなければならないことがわかりました。したがって,{ v1v2,・・vpk1k2,・・,kq } は1次独立です。そして,先程示したようにこれらは,ベクトル空間 V を生成する[#]ことと合わせると,これらベクトルの組はベクトル空間 V の基底です。 したがって,

dimV = p + q = dim Imφ + dim Ker φ

がいえました。

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