12 準同型定理
f-denshi.com  最終更新日: 04/04/18

1.群の準同型と核

[1] 整数 Z から剰余類 Znへの写像 Φ:a → [a]n (=Φ(a))を考えます。このとき、すべての a、b∈Z について、

Φ(a+b)=Φ(a)+Φ(b)    ← [a+b]n=[a]n+[b]n

が成り立っていました。このとき、

 a   +   b   =  c     :整数の加法
          Φ
Φ(a) + Φ(b)   = Φ(c)    :剰余類の加法

    ( [a]n   +   [b]n  = [a+b]n =[c]n )

の対応が成立しますが、このような写像 Φ を準同型写像と呼ばれます。

[2] 準同型写像の一般的な(厳密な)定義は以下のとおりです。

群(G、* )から、群(G’、* )の中への写像 Φ : 
g  Φ(g)、 ( g∈G、 Φ(g)∈G’ )

が任意の a、b∈G に対して、

Φ(a*b)=Φ(a)*Φ(b)

をみたすとき、Φ を G から G’への準同型写像という。 ( もちろん、演算として+、 を用いても同じです。)

 ついでに述べておくと、このような Φ が、さらに群 G から群 G’への

(1)1対1写像(単射)、
(2)上への写像(全射)

という両条件をみたすときは同型写像と呼ばれます。その場合、G と G’は群として全く同じ構造をもっているといえます。

  写像、Φ:Z  → Zn の場合は、1対1写像ではありませんが、上への写像(全射)となっています。この場合、上への準同型写像(または、全準同型写像)と呼ばれます。

[3]  ここで、準同型写像において重要な用語を一つ定義しておきましょう。

核の定義
 群 G(単位元: e )から群:G’(単位元: e’)への準同型写像を Φとする。このとき、Φ によって群 G’の単位元 e’に移される G の元すべてからなる G の部分集合、すなわち、
Ker Φ={g|Φ(g)=e’、g∈G }
Φのといい、Ker Φと書く。 

整数の集合、Z から剰余類群、Znへの準同型写像 Φ の核は: Ker Φ=nZ です。つまり、n の倍数はΦによって、すべて Zn の単位元 [0]n へ写されています。

[4] これまでみてきたことを一般化して、

定理
   群 G から群 G’への準同型写像Φについて、

(1)  Φの核 Ker Φ は G の正規部分群である。

(2)  群 G’の正規部分群 H’に対して、Φ-1(H’)={h|Φ(h)∈H’、h∈G }は G の正規部分群である。

(3) また、g’∈G’; Φ(g)=g’のとき、この逆像:

       Φ-1(g’)={x|Φ(x)=g’、x∈G }

を考えるとこれはKer Φによるの剰余類の一つ、”g KerΦ” に等しい。  (←左・右剰余類は等しい)

と言うことができます。

[略証] 

(1) Ker Φ が正規部分群であることは、すべての g に対して、g-1Hg ⊂ H=KerΦ を示せばよい。[#]

任意の h ∈ KerΦ をとると、どんな g ∈ G に対しても、

  Φ(g-1*h*g)= Φ(g-1*h)*Φ(g) =Φ(g-1*Φ(h)*Φ(g)
          = Φ(g-1*e’*Φ(g)=Φ(g-1*Φ(g)=Φ(g-1*g)
          = Φ(e)=e’

したがって、g-1*h*g ∈KerΦ、ここで、h は任意なので、g-1Hg ⊂ KerΦ。

(2)  H =Φ-1(H’)とおくと、任意の h ∈ H について Φ(h)∈H’であり、任意の g∈G に対して、

Φ(g-1*h*g)=Φ(g-1*Φ(h)*Φ(g)∈H’         ∵  H’は正規部分群なので。                

すなわち、g-1*h*g ∈ H  ⇒ g-1*H*g ⊂ H 。 よって、H は G の正規部分群。

(3) 証明の前にこの定理のかみ砕いた言い方をしておくと、

 G (Z)の部分集合、Ker Φ (nZ) の元が Φによって ”すべて”、G’のひとつの点 e’([0]nに移されるように、G の部分集合、g1Ker Φ(g1+nZ )はそっくりすべて、G’のひとつの点 g1’点 ([g1]nに移される。(右図)

ことを述べています。

証明は、

Φ(x)=g’   ⇒   Φ(x)=Φ(g)及び、Φ-1(g)=Φ(g-1

なので、

e’=Φ-1(g)*Φ(g)=Φ(g-1*Φ(x)=Φ(g-1x)

すなわち、

g-1x ∈ Ker Φ  ⇔  x∈ g KerΦ

2.準同型定理

準同型定理
群:G から群: G’への上への準同型写像をΦとするとき( ImΦ=G’)、G/KerΦ と G’は同型である。

この定理はこれまで述べてきたことを、カッコよく言い換えたに過ぎません。正規部分群を用いた類別を考えたとき、得られる同値類(集合)をそれぞれ、ひとつの元とみなすと、これらの元の間に演算が定義できて新しい群を構成できることを見てきました。正四面体群 G の場合、正規部分群、H(=hxH )による類別から作った商群 G/H が構成でき、これが群としては巡回群 Z3 に等しいことを見てきました。一方、前章では整数の集合 Z の正規部分群、5Z(=[0]5)による類別からつくた整数の剰余群(これも商群)が構成でき、これが巡回群 Z5 に等しいことを確認しました。(下図)

準同型定理 Φ(x)=e、 x∈hxH
正四面体の剰余群
Φ(x)=e、 x∈[0]5
整数の剰余群
記号は、a1H={a1、a2、a3、a4}など[#]、  [0]5=5Z={・・・、-10、-5、0、5、10、・・・} などに注意。

これらのことを抽象化・一般化したのが準同形定理と呼ばれるものであって、この定理では、

「 ある準同型写像Φ:G→G’の性質は、この準同型写像に付随するもう一つの準同型写像Λ:G→G/Ker Φ と同じ 」

ものなので、これを調べれば十分だということをいっているのです。

[略証] Ker Φ =H とし、G の同値類 G/KerΦ= {aH、bH、・・・}から G’への1対1写像 Ψ: G/H →G’ を、

Ψ(aH)=Φ(a)、  もちろんΨ(bH)=Φ(b)

と定義します。すると、

Ψ(aH・bH)=Ψ(abH)=Φ(ab)=Φ(a)Φ(b)=Ψ(aH)*Ψ(bH)  ⇒ [#]

ここで、同値類どおしの演算[#]、Φが準同型写像であることを利用しています。


注意1

ここでは群の用語、商群の構成法に慣れるために、故意にまわりくどい説明をしてますが、[q]nは要するに、整数を

Z=kn+q、 q = 0、1、2、・・・、n-1、(k は整数でという)

と一意的に表したときの余りがqの整数の集合に対応しています。そしてそのような整数をすべて同一視したものが剰余類群の元[q]nです。

また、次の命題が成り立ちます。

(1) a≡b (mod n ) ⇔  a−b がnで割り切れる。
(2) a≡b (mod n ) ⇒  a+c≡b+c (mod n )
(3) a≡b (mod n ) ⇒  a×c≡b×c (mod n )


[目次へ] 


準同形写像の例

準同型写像 準同形定理
乗法群 R* ⇒ R+ f(x)=|x| S0 R*/ S0= R+
乗法群 C* ⇒ R+ f(c)=|c| S1 C*/ S1= R+
加群 R ⇒群 S1 f(x)=exp2πi Z R/Z=S1
GL(n、K)⇒K* f(A)=detA SL(n、K) GL(n、K)/SL(n、K)=K*
O(n)⇒S0 f(A)=detA SO(n) O(n)/SO(n)=S0
U(n)⇒S1 f(A)=detA SU(n) U(n)/SU(n)=S1
A(Rn)⇒GL(n、R) f(Axb)=A D(Rn A(Rn)/D(Rn)=GL(n)
E(Rn)⇒O(n) f(Axb)=A D(Rn

E(Rn)/D(Rn)=O(n)

R*=R−{0} R+={x∈R|x>0} 、
S0={1、-1}、S1={c∈C||c|=1}={eiθ

対称群 Sn からZ2{1、-1}への写像:  f(σ)=sgnσ

合同変換群E(Rn):{ φ|φ(x)=Axb
平行移動群D(Rn):{ φ|φ(x)=xb
直交群O(n)
  


定理:

(1)巡回群 Zn から Zm への準同型写像の個数は m と n の最大公約数に等しい。

(2)特にmとnが素のときは、準同型写像Φは、
       すべての z∈Zn に対して、Φ(z)=e ∈Zm
     の一つだけである。