3 基本方程式
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1.クリストフェル記号 (曲面上の偏微分)

[1] 曲面の接線ベクトル p1pの張る平面の単位法線ベクトルn の偏微分微分は次の公式で与えられます。

公式4  Weingartenの式 (法線ベクトルの偏微分)
n1=− h11g22−h12g12 p1 h12g11−h11g21 p2    (2.192)
g11g22−g12g21 g11g22−g12g21
n2=− h21g22−h22g12 p1 h22g11−h21g21 p2    (2.193)
g11g22−g12g21 g11g22−g12g21
公式5
nk=− hkigijpj                    別表現
または,微分する変数を 1⇔u, 2⇔v と表記して,
nu MF−LG pu LF−ME pv
EG−F2 EG−F2
nv NF−MG pu MF−NE pv
EG−F2 EG−F2
ここで,gij,hij の意味は前ページと同じ [#]。 行列 (gij) は行列 (gij) の逆行列。

[2]

Weingartenの式の導出

既出のベクトルの行列表現 [#]

nuDpu =d11pu+d21pv          (2.196)
nvDpv =d12pu+d22pv          (2.197)

について,D = −G-1H であること[#] を思い出せば,

D d11 d12 =−G-1H
d21 d22
= −
1
det G
g22 -g12 h11 h12
-g21 g11 h21 h22
= −
1
g11g22−g12g21
h11g22−h21g12 h12g22−h22g12
h21g11−h11g21 h22g11−h12g21

これより,g12=g21 にも注意して,成分dij を,(2.196),(2.197) 式に代入すると,Weingarten の式 (2.192)、(2.193) となります。

[3] Weingarten の式(別表現)の証明は,(2.192)、(2.193) をまとめて書くと,

nk dikpi             (i,j=1,2) 

D=-G-1H を成分で書けば,( G=(gij)の逆行列はG-1=(gij) )

dik=− gijhjk

これを代入すれば,

nk=−  gijhjkpi

gij,hijが対称行列であることに注意して,添え字を付け直して,

nk=− hkigijpj    [Weingartenの式

を得ます。

[4] ワインガルテンの式から,曲面上の微小面積 S とその上の単位法線ベクトルのガウス写像がガウス球面上で描く図形の面積が次のようにガウス曲率K で関係づけられていることが分かります。すなわち,(2.194),( 2.195) 式を用いると,

n1×n2 = (d11p1+d21p2)×(d12p1+d22p2) 
     =(d11d22−d12d21)p1×p2

        ={ detH/detG } p1×p2

     = h11h22−(h12)2 p1×p2
g11g22−(g12)2
     = LN−M2 pu×pv
EG−F2
          ↓ ガウス曲率 K (2.122) 式 
  = K (pu×pv)                 (2.211)

ここで,初等的ベクトル解析の知識を利用すれば,| pu×pv | dudv は,この2 つのベクトルの作る平行四辺形の微小面積であることが分かります。したがって,曲率の大きさ (絶対値) だけ見れば,

| nu×nv | dudv = | K | | pu×pv | dudv       (2.212)

という関係が得られます。つまり,

曲面の微小面積とガウス写像による単位球面上のその像の面積の比

がガウス曲率の大きさ (絶対値) ということです。



[5]  次に,接線ベクトルの偏微分を考えます。

接線ベクトルの偏微分の結果を,接線ベクトルと法線ベクトルからなる基底を用いて展開することを考えます。その係数について次の用語・記号を定義します。

Gauss の式 (またはGauss-Codazzi の式)  (接線ベクトルの微分)
pjk = Γijkpi+hjkn        (2.213)  
ここで,Γijkクリストッフェル記号と呼ばれ,
Γijk =
1
2
gim ∂gmj ∂gmk ∂gjk
∂uk ∂uj ∂um
を定義される。

具体的に書くと,

Gaussの式 (曲面の接線ベクトルの微分)

p11 =Γ111p1 +Γ211p2 +h11n
p12 =Γ112p1 +Γ212p2 +h12n
p21 =Γ121p1 +Γ221p2 +h21n
p22 =Γ122p1 +Γ222p2 +h22n
   
puu = GEu−2FFu+FEv pu 2EFu−EEv−FEu pvLn
2(EG−F2) 2(EG−F2)
puv = GEv−FGu pu EGu−FEv pvMn
2(EG−F2) 2(EG−F2)
pvv = 2GFv−GGu−FGv pu EGv−2FFv+FGu pvNn
2(EG−F2) 2(EG−F2)

hijについてはすでに説明しているとおり,hij=(pijn) の内積から求められます。

[6] Γijkについては以下のように定められます。

Gaussの式の導出

p(u1,u2)の2階微分を基底 p1p2n で展開するために,

pjk =Γ1jkp1+Γ2jkp2+Γjkn = Γijkpi+Γjkn    ・・・[*] 

とおいて係数を具体的に求めるため,両辺 n との内積をとり,np1p2 と直交する。)

hjk=(pjkn)=Γjk(nn)=Γjk

であることは分かる。

次に両辺を pm との内積をとれば,

(pjkpm)= Γijk(pipm) Γijkgim

ところで,gjm=(pjpm) を ukで偏微分すると,

gjm=(pjkpm)+(pmkpj)
∂uk
                    ↓      [*]
     = Γijkgim Γimkgij                 (1)

対称性の良い式をえるために,k と j を入れ替えて,

gkm Γikjgim Γimjgik               (2)
∂uj

さらに,j と m を入れ替え,

gkj Γikmgij Γijmgik        (3)
∂um

(1)+(2)−(3) から次式が得られる。

∂gjm ∂gkm ∂gjk  =2 Γijkgim
∂uk ∂uj ∂um

さらにgmnをかけて,mについて和をとると,

gmn ∂gjm ∂gkm ∂gjk  =2 Γijk gimgmn =2 Γijkδni =2Γnjk
∂uk ∂uj ∂um

記号 n を i と書き直して,gik=gki などに注意して形を整えれば,

Γijk =
1
2
gim ∂gmj ∂gmk ∂gjk
∂uk ∂uj ∂um

が得られます。この式をクリストッフェル記号といいます。この式と(2.223) 式を(2.222)に用いて,Gauss の式が得られます。  (以上導出終わり)

pjk = Γijkpi+hjkn       [Gaussの式

言うまでもなく,これはリーマン幾何学の共変微分で定義される [#] クリストフェル記号 と同じです。

[7] 具体的には,

puup11 =Γ111p1+Γ211p2+h11n 

の計算おいて,クリストッフェル記号は,

Γ111 =
1
2
g11 ∂g11 ∂g11 ∂g11 +g12 ∂g21 ∂g21 ∂g11
∂u ∂u ∂u ∂u ∂u ∂v
     =
1
2(EG−F2)
g22 ∂g11 −2g12 ∂g21 +g12 ∂g11
∂u ∂u ∂v
     =
GEu−2FFu+FEv
2(EG−F2)
Γ211 =
1
2
g21 ∂g11 ∂g11 ∂g11 +g22 ∂g21 ∂g21 ∂g11
∂u ∂u ∂u ∂u ∂u ∂v
    =
1
2(EG−F2)
-g21 ∂g11 +2g11 ∂g21 −g11 ∂g11
∂u ∂u ∂v
     =
−FEu+2EFu−EEv
2(EG−F2)

よって,

puu = GEu−2FFu+FEv pu 2EFu−EEv−FEu pv+Ln
2(EG−F2) 2(EG−F2)

が得られます。残りの puvpvv も同様な計算をすればよいの,読者への演習としましょう。



2.基本方程式  (接線ベクトルの2階微分から)

[1] ここまでに求めた曲面上の接線ベクトル,法ベクトルの微分を基本方程式の導出に使用するために都合の良い指標に書き表しておきます。Weingarten の式(2.199) でまず,k をm とすると,

nm= − himgijpj    [Weingartenの式
nm= − hmiginpn   ⇔   nm= − hmngnipi        (2.231)

ガウスの式については,

pim Γnimpn+himn   ⇔   pnm Γinmpi+hnmn   (2.232)

ガウスの基本方程式

ガウスの式をumで偏微分すると,

pjkm ∂Γijk pi Γijkpim ∂hjk n+hjknm
∂um ∂um
             ↓ (2.231), (2.232)
   ∂Γijk pi ΓijkΓnimpn Γijkhimn ∂hjk n hjkhmiginpn
∂um ∂um
                   ↓第2項と第5項の添え字 n を i へ交換
   ∂Γijk ΓnjkΓinm hjkhmngni pi Γijkhim ∂hjk n (2.233)
∂um ∂um

m と k (の微分の順序)を交換しても pjkmpjmk が成り立つのであれば,(滑らかな曲面では正しい)

pjmk ∂Γijm ΓnjmΓink hjmhkngni pi Γijmhik ∂hjm n (2.234)
∂uk ∂uk

(2.233) と (2.234) との pi の係数の比較から

∂Γijk ∂Γijm njkΓinm−ΓnjmΓink) = (hjkhmn−hjmhkn)gni
∂um ∂uk

gih をかけて,i について和をとると,    (gihgni =δhi )

ガウスの方程式

gih ∂Γijk ∂Γijm njkΓinm−ΓnjmΓink) (hjkhmh−hjmhkh)
∂um ∂uk

が得られます。

[2] 左辺はリーマン幾何学で,リーマン・クリストッフェルのテンソル [#] と呼ばれ,Rhjmk と書かれます。

j =k=1, m=h=2 とおけば,  (対称性より R2121=R1212でもある)

R2121 (h11h22−h12h21) = det H
                   ↓  K =det(H)/det(G) ガウス曲率の定義
    = K det G
    = K (g11g22−g12g21)                  (2.238)

とリーマン曲率 R2121 とガウス曲率 K の関係を与えます。ここで,R2121 は gij だけの式なので,これは,「K は第1 ky76基本量だけで表される。」ということができます。この結果はガウスの驚嘆定理と呼ばれます。

なぜ,ガウスがそんなに驚いたかと言えば,曲面内の接線方向のベクトルだけを調べれば,その曲面がその外部に対してどれほど曲がっているかが分かるからです。難しく言えば,

「曲面の内在的な量だけで曲面の外部に対する関係がわかる」

という言い方をします。



[3] 一方,(2.233), (2.234) 式のn の係数を等しいとして,マイナルディ・コダッチの方程式

マイナルディ・コダッチの方程式

ijkhim−Γijmhik)+ ∂hjk ∂hjm   = 0
∂um ∂uk

が得られます。

この式はガウスの方程式と合わせて,曲面の基本方程式を構成し,この後,曲面論の基本定理の証明で登場します。

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この講義で用いられる記号のまとめ

曲面パラメータ
u u1
v u2
偏微分
pu p1
pv p2
nu n1
nv n2
puv p12 など
記 号 一 覧
 gij=(pipj) g11 =guu (=E) pupu
g12 =guv (=F) pupv
g21 =gvu (=F) pvpu
g22 =gvv (=G) pvpv
hij= (pijn)
   =−(pinj)
h11 =huu (=L) puun =-punu
h12 =huv (=M) puvn =-punv
h21 =hvu (=M) pvun =-pvnu
h22 =hvv (=N) pvvn =-pvnv


G g11 g12 H h11 h12
g21 g22 h21 h22
G-1 g11 g12
1
detG
g22 -g21
g21 g22 -g12 g11
D d11 d12  =−G-1H
d21 d22
正規直交系,x1x2n