104 演算子法
y-denshi.com  更新日: 04/02/19

[1] y(x)を未知関数とする微分方程式:

y (n)(x) = g(x)               ・・・・・      (1)

演算子法で解く方法を紹介します。まず,微分演算子 D を次のように定義します。

D ≡ d ,ただし,  Dy = dy
dx dx

D は掛け合わせることもできて,n 個の積はn 階微分を意味して,

D×D×・・・・×D = Dn dn ; および,Dny =  dny = y(n)(x)   ( n = 1,2 ・・・ )
dxn dxn

を意味することとします。 すると,微分方程式(1)は,

Dny (x)= g(x)            ・・・・・ [*]

と書きなおすことができます。

[2] また,この演算子に関して次のような公式が成り立ちます。

公式:
   微分演算子Dの多項式をP(D)として,

(1)  Dn {erx・g(x)} = erx(D+r )ng (x)

(2) P(D)erx = erx・P(r)

(3) P(D) {erx・g(x)} = erxP(D+r )g (x)

(4) P(D2)sin rx = sin rx ・P(-r2)

(5) P(D2)cos rx = cos rx ・P(-r2)

証明は,(1)の場合だけ述べると,もし,n=k で(1)が成り立つならば, 

 Dk+1{erx・g(x)}=D[Dk {erx・g(x)}] =D[erx(D+r )kg (x)]
     =D[erx] ・[(D+r )kg (x)] +erxD[(D+r )kg (x)]
           =r erx(D+r )kg (x)+erxD(D+r )kg (x)
     = erx(D+r )k+1g (x) ⇒ n=k+1 でも成立。

なので,数学的帰納法で証明できます。他も簡単に証明できるので省略します。この公式はすぐあとで使います。

[3] さて,今度は Dn の逆演算 (=n重積分 ) に相当する D-n を定義しましょう。ただし,積分は1回積分するごとに積分定数(不定項)がでてくるので,一意性をもたせるためにちょっとした工夫が必要です。

 まず,解析学入門で学んだ2種類のテーラー展開 [#][#]を思い出しましょう。すなわち,
       (ここでは解析入門からは f → y と記号を変えています。)

 y(x)=y(a)+ y '(a) (x−a)+ y ''(a) (x−a)2+・・・+ y (n-1)(a) (x−a)n-1
1! 2! (n-1)!
                      + y (n)(θ) (x−θ)n-1
(n-1)!
 y(x)=y(a)+ y '(a) (x−a)+        ・・・          + y (n-1)(a) (x−a)n-1
1! (n-1)!
                   ・・・ y(n)(xn)dxn・・・dx2dx1

この2式を注意深く眺めると,もし,

 y(a)=y'(a)=・・・=y (n-1)(a)=0 ・・・ [**]

であるならば,(微分方程式 [*] に初期条件[#]を設定したことになる。)

 y(x) = ・・・  y(n)(xn)dxn・・・dx1 y (n)(θ) (x−θ)n-1
(n-1)!

となります。ここで,y(x) が微分方程式 [*] の解とすると,y (n)(x) = g(x) なので,上式は,

 y(x) = ・・・  g(xn)dxn・・・dx1 g(θ) (x−θ)n-1
(n-1)!

となって,微分方程式の(1)の形式解 (特解 ) を与えています!

[4] これらは微分方程式[*]の特解の2通りの表現です。まとめると,

微分方程式
y (n)(x) = Dny (x) = g(x) 
の一般解は, y(a)=y'(a)=・・・=y (n-1)(a)=0 なる a を用いて
y(x) = ・・・  g(xn)dxn・・・dx1+ Pn-1(x)
または,
 y(x) = g(θ) (x−θ)n-1dθ+ Pn-1(x)
(n-1)!
ただし,Pn-1(x)はn 個の任意定数をもつ,(n-1)次多項式です。
( ↑n階微分したら 0 となってしまう項としての '' Pn-1(x) '' を付加しています。)


[5] これ以後,このg(x)の n重積分について D-ng(x) と書くことにしましょう。すなわち,

D-ng(x) ≡ ・・・  g(xn)dxn・・・dx1

と定義します。すると,先の一般解は,

y(x) = D-ng(x) + Pn-1(x)

と書くことになります。

一方,n階積分して現れるn個の任意定数はn個の条件式[**]を用いれば,一意的に定めることが可能です。
いま,[*] のDny (x)= g(x) の左から D-n を形式的にかけると,

D-n Dny (x)= D-n g(x) =y(x)− Pn-1(x)

と書けることは注目に値します。つまり,積  D-n Dn は演算子としてはy(x)に何も作用しない(またはy(x)に1をかける)恒等演算子とみなすことができます。この D-n ,Dn という記号はとてもうまく定義されていることがわかりますね。

具体例を見ておきましょう。

[6] 今度は,微分方程式

(D−r)ny (x)= h(x)          ・・・・・      (2)

について考えましょう。まず,

y(x)= erx・z(x)

と置いて,これを (2),および,条件式[**]に代入すると,(公式(1)を使って)

(D−r)n erx・z(x)= erx・(D−r+r)nz(x)=h(x)
  ⇔
Dnz(x) = e-rx・h(x)

および,

 z(a)=z'(a)=・・・=z (n-1)(a)=0

が得られます。これは,先の微分方程式(1)で,y(x)→z(x),g(x)→e-rx・h(x) としたものに他なりません。よって,

z(x)=D-ne-rx・h(x) + Pn-1(x) 
  ⇔ 
y(x)= erx・z(x)=erx・D-n{e-rx・h(x)} + erx・Pn-1(x)

が解となります。

結局,

微分方程式
 (D−r)ny (x)= h(x)   
の一般解は,

     y(x)=erx・D-n{e-rx・h(x)} + erx・Pn-1(x)
       =erx e-rθ・h(θ) (x−θ)n-1dθ+erx・ Pn-1(x)
(n-1)!

[7] 特に,h(x)=0   

(D−r)ny (x)= 0   ( =同次方程式 )

の解は,

erx・Pn-1(x)=erx(c0+c1x+・・・・+cn-1xn-1)

となります。 これが前章の最後の問題[#]のスマートな解法となっています。

[8] 今度は微分演算子D の n次の多項式を P(D) として,微分方程式,

P(D)y(x)=(D−r1)k1(D−r2)k2  ・・・・  (D−rm)km y(x)= 0 ・・・(3)
 k1+ ・・・・+km = n

の解法を考えましょう。まず,各因子  (D−rj)kj  は互いにその順序を変えることができるので,微分方程式,

 (D−rj)kj y(x)= 0 ,  j = 1,2,・・・・,m  ・・・・ [***]

のm個の解はすべて(3)の解にもなります。 [***] の解は[7]で求めたように,任意の(kj−1)次の多項式Pkj-1(x)を用いて,

erjx・Pkj-1(x)

であり,任意定数をkj 個含んでいます。 したがって,(3)の解として,

y(x)=er1x・Pk1-1(x)+er2x・Pk2-1(x)+ ・・・・ +ermx・Pkm-1(x)

をあげることができます(重ねあわせの原理)。ここで,任意定数の数は合計で,k1+ ・・・・+km = n 個 なので,これはn 階微分方程式である(3)の一般解になっています。


以下準備中⇒Appendixで,

P(D)y(x)=(D−r1)k1(D−r2)k2  ・・・  (D−rm)km y(x)= h(x) ・・・(4)

一般解は(3)で求まっているので,特解を一つ求めればいいのです[#]。

1 bij
P(D) (D−ri)j

  ⇒

 y = erjx bij・h(θ) (x−θ)j-1e-rjx
(j-1)!