Appendix 1 3次元ベクトルの座標変換 | ||
f-denshi.com 最終更新日:07/10/07 (具体例を入れました。) | ||
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ベクトル空間 V を生成する基底が違えば,それに応じてV の元 x の(成分)座標も変化します。そこで異なる2つの基底(=座標系)Σ とΣ'との関係が与えられたとき,ベクトル座標成分がどのような関係式で結ばれるべきか示しておきましょう。n次元の(反変,共変)ベクトル空間の場合は本文中であつかってます。ここではもっともよく使われる3次元ユークリッド空間を用いて具体的に説明しましょう。
[1] 特別な場合として,3次元空間の z 軸周りで角度θの回転を例として挙げておきます。その場合,2つの座標系Σ とΣ' の(正規直交)基底どおしの関係は右図から次のように与えられます。
e'1= cosθe1+sinθe2
e'2=-sinθe1+cosθe2
e'3= e3
このとき,任意のベクトルは,
P =xe1+ye2
=Xe'1+Ye'2
の2とおりの表し方がありますが,xとX,および,yとYの値はθ=0 の場合を除いて異なる値となるはずです。この関係は幾何学的な考察から,
x = cosθ -sinθ 0 X y sinθ cosθ 0 Y z 0 0 1 Z
で表されることが分かります。 (右図をよーく見て考えてください。)
これを一般化された基底変換の下での成分どおしの関係,
(x,y,z) [座標系Σ] ⇔ (X,Y,Z) [座標系Σ']
を導出することがここでの目的です。
[2] 今,2つの座標系の基底ベクトルを,
Σ ={e1,e2,e3}
Σ'={e'1,e'2,e'3}
とします。そのとき,ベクトルx はそれぞれの座標系で,
x= x1e1 +x2e2 +x3e3 (座標系Σ )
x=x'1e'1+x'2e'2+x'3e'3 (座標系Σ ')
と表されます。同じベクトルであっても,それを表すための基底(座標系が)が異なれば,座標成分も異なってくるのは当然です。これから,基底ΣとΣ'との関係(変換規則)が与えれたときのべクトル成分,
x1 と x'1 x2 x'2 x3 x'3
との関係式を求めます。
[3] まず,ΣとΣ'との関係がどのように与えられるべきかは,Σ ' の基底ベクトルe'j も一つのベクトルですから,座標系Σ の基底を用いて一次結合で表せるはずです。それを
e'j=Σ pkjek [基底変換]
すなわち,
e'1=p11e1+p21e2+p31e3≡(p11,p21,p31)
e'2=p12e1+p22e2+p32e3≡(p12,p22,p32)
e'3=p13e1+p23e2+p33e3≡(p1n,p2n,p33)
と, pjk によって基底間の関係を与えることとします。なお,これは形式的に,
e'1 p11 p21 p31 e1 e'2 = p12 p22 p32 e2 e'3 p1n p2n p33 e3 ⇔
e'1 = tP e1 e'2 e2 e'3 e3
と書いてもいいでしょう。ここで,pkjを成分とする行列を転置行列で,tPと定義した理由は慣用であって,最終的に成分の変換則が「主役」になるようにPが定義されるからです。
(↑注意: 教科書によっては,e1= p11e'1+p21e'2+p31e'3 などと逆に与える場合があります。)
[4] 次にベクトルx は2とおりの基底,どちらで表しても同じだということを示す等式,
x1e1 +x2e2+x3e3 = x'1e'1 +x'2e'2+x'3e'3
の右辺に[3]で書き表した e'1,e2',e3' を代入してe1,e2,e3 について整理すると,
x1e1 +x2e2+xne3 = (p11x'1+p12x'2+p13x'3)e1
+(p21x'1+p22x'2+p23x'3)e2
+(p31x'1+p32x'2+p33x'3)e3
ここで,e1,e2,e3 は1次独立なので上式の両辺の各ej の係数が等しいとして,
x1 = p11x'1 +p12x'2 +p13x'3
x2 = p21x'1 +p22x'2 +p23x'3
x3 = p31x'1 +p32x'2 +p33x'3
すなわち,それぞれの座標成分の間には,
xj = Σ pjkx'k ; j = 1,2,3 [ ベクトル座標変換 ]
の関係が得ます。この結果を行列を用いて表すと,
x1 p11 p12 p13 x'1 または,
x = Px' x2 = p21 p22 p23 x'2 x3 p31 p32 p33 x'3
ここで,(↓以後色分けは省略。)
P ≡ p11 p12 p13 =(p1 p2 p3) ; ただし, pj ≡ p1j p21 p22 p23 p2j p31 p32 p33 p3j
を 座標変換の行列 (または,基底変換の行列) といいます。
[5] また,
座標変換の行列 P は正則行列でなければならない。
ことが以下のようにわかります。Σ がV の基底であるならば,e'j = Σ pkjek と表せるように各ej も
ej = Σ qkje'k
とあらわせるはずで,上と同様な議論から逆方向への座標変換の行列Q が得られ,
x' = Qx
なる関係が導かれます。これを先程求めた関係,x =Px' に代入すれば,
x = Px' = P(Qx) = (PQ)x
つまり,PQ=E [単位行列] でなければならず,これは Q = P-1 であることを示しています。結局,
x'= P-1x
記号を整理すると,
基底Σ とΣ '間の座標変換の行列を P= [pjk] ,その逆行列をP-1= [p-1jk] 基底の変換: e'j = Σ pkjek (ej = Σ p-1kje'k ) とすると, 成分の変換: xj = Σ pjkx'k (x'j = Σ p-1jkxk ) ←訂正しました。(10/04/09) のように変換される。 (x =Px ':x'=P-1x) |
[6] 最後に正規直交基底どおしの間での座標変換について述べておくと,
ベクトル空間の基底Σ,Σ'が正規直交系であれば,座標変換の行列Pは直交行列である。
ことが示せます。なぜなら,基底変換を e'j=Σ pkjek とすると,
δjk = (e'j,e'k ) ←e'j,e'k が正規直交基底なので
= (p1je1+p2je2+p3jen, p1ke1+p2ke2+p3ken)
↓ ej,ek が正規直交基底(ej,ek )=δjk なので
= p1jp1k+p2jp2k+p3jp3k
= (pj,pk )
となり,P=(p1 p2 p3) が直交行列[#] であることがわかります。
また,直交行列Pの逆行列がPの転置行列tPで与えられる[#]ことから,
x'1 | p11 p21 p31 | x1 | ⇔ x ' = tPx [正規直交基底の場合] | |||||||
x'2 | = | p12 p22 p32 | x2 | |||||||
x'3 | p13 p23 p33 | x3 |
正規直交基底 Σ と Σ ' 間の座標変換の行列 P=[ pjk ] は直交行列で, ( x =Px ' : x ' =tPx ) のように変換される。 |