Appendix b2  2面体群
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1.n次の2面体群Dnの定義

[1]   次のような 2n 個の2次の正方行列の集合:

 1cc2,   ・・・, cn-1,

  σc2σ,・・・,cn-1σ }
c
cos
n
−sin
n
sin
n
cos
n
σ -1 0
0 1

( n = 0,1,・・・,n-1 )

は行列の積に関して演算のもとで群をなします。この群を n 次の2面体群Dn =<cσ> と言います。

  これは 正n面体 の中心 O の周りの 2π/n の回転 c と x 軸の周りの裏返し操作 σ を生成元とする幾何学的な意味を付与できる群と考えることもできます(下図)。

ここで,c,σ は次のような関係を満たしており,生成元は,cσであることもわかります。 

cn1, σ21c-1σcσ  

正規部分群は,Zn={1cc2,   ・・・, cn-1

[2] 特に2次の2面体群 D2クラインの4元群と呼び,群表 (乗積表) は次のようになります。

* 1 c σ
1 1 c σ
c c 1 σ
σ σ 1 c
σ c 1
D2

行列で表現すると,

 = 1 0  = -1 0
0 1 0 -1
σ 1 0 -1 0
0 -1 0 1

これは3次正方行列でも表せます。 

[3] 3次の2面体群 D3 =S3 である。

* 1 c c2 σ c2σ
1 1 c c2 σ c2σ
c c c2 1 c2σ σ
c2 c2 1 c c2σ σ
σ σ c2σ 1 c2 c
σ c2σ c 1 c2
c2σ c2σ σ c2 c 1
* e a b x y z
e e a b x y z
a a b e y z x
b b e a z x y
x x z y e b a
y y x z a e b
z z y x b a e
D3 S3

元の対応は次のとおりです。

1 ⇔ e =  1 2 3
 1 2 3
 c ⇔ a =  1 2 3
 2 3 1
 c2 ⇔ b =  1 2 3
 3 1 2
σ ⇔ x =  1 2 3
 1 3 2
⇔ y =  1 2 3
 2 1 3
c2σ ⇔ z =  1 2 3
 2 3 1

[4] D中心は,

n= 奇数: Z(D )= { e } 

偶数: Z(D2 )=D2 ={1,c,σ,cσ}=D2 (可換群)
Z
(Dn≠2 )={ e,cn/2

D4={ 1cc2, c3σc2σc3σ }ならば,ZD )={ e,c2

[5] Dn交換子群

[D,D]= 奇数(n=2m+1): Z2m+1={ e,a,a2,a3,・・・,a2m  } 
偶数(n=2m)  :  Zm    ={ e,a2,a4,・・・,a2(m-1)


2.Dnの分解

[1]

D2 = Z2 × Z2 であることは直積のところで述べています。 ⇒ [#]

* (+1,+1) (-1,+1) (+1,-1) (-1,-1)
(+1,+1) (+1,+1) (-1,+1) (+1,-1) (-1,-1)
(-1,+1) (-1,+1) (+1,+1) (-1,-1) (+1,-1)
(+1,-1) (+1,-1) (-1,-1) (+1,+1) (-1,+1)
(-1,-1) (-1,-1) (+1,-1) (-1,+1) (+1,+1)
Z2 × Z2

[2] 例

D6 ={ 1cc2, c3c4, c5,σc2σc3σc2σc3σ
  =S3×Z2 =(α,β) 
ただし,
    α=e,a,b,x,y,z, ∈S3 [#]
    β=1,-1        ∈Z2

D6とS3×Z2の対応は,

1 ⇔ (e,1) σ ⇔ (x,1)
c ⇔ (a,-1) ⇔ (y,-1)
c2 ⇔ (b,1) c2σ ⇔ (z,1)
c3 ⇔ (e,-1) c3σ ⇔ (x,-1)
c4 ⇔ (a,1) c4σ ⇔ (y,1)
c5 ⇔ (b,-1) c5σ ⇔ (z,-1)


[5] 分裂する完全系列の例:

直積で表される場合,分裂する完全系列となる,次のように表現する。

i f
1 S3 D6 Z2 1

[7] 

準同型写像

f : Dn⇒Z2 f(ck)   = 1
f(ckσ)=-1

核は: Zn={1,c,c2,・・・,cn-1};   Dn/Zn = Z2

[8]

Dn は正規部分群 Zn と部分群 Z2半直積である [#] ⇔  Dn=Zn Z2 かつ, Zn ∩ Z2= 1


D2は直交群 O(2) の部分群である。

[9]

定理

  2面体群 Dn は可解群である。

[ 10]

定理

 2面体群 Dn がベキ零群 [#] である。 ⇔ n = 2m を満たす。


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