| b5 べき零群 | ![]() |
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定義 べき零群,降中心列 群 G=G(0) について,交換子群を次のように繰り返しとって, G と G との交換子群を, G(1) = [G,G(0) ] とするとき,正規部分群の包含関係は, G=G(0) ⊃ G(1) ⊃ G(2) ⊃ ・・・ ⊃ G(k) ⊃ ・・・ [*] であるが,この列を G の降中心列という。そして,ある n に対して, G(n) = { e } となるとき,G をべき零群という。 |
可解群のときは,交換子群 [G(k),G(k)] を考えましたが,ここでは[ ]の左 (教科書によっては右) は常にG に固定して考えます。すなわち,[G,G(k+1)]に含まれる交換子は,
xyx-1y-1,x∈G,y∈G(k)
とします。
[2]
[*]が成立していることは,
G(k+1)=[G,G(k)] が G(k) の正規部分群 (k=0,1,…)
になっていることから分かります。
G(1)=[G,G(0) ]が G(0)=G の正規部分群であることはすでに示しています [#]。全く同様に,
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命題1 群 G の正規部分群を H, K とすると,⇒ 交換子群 [H, K] は G の正規部分群である。 |
であることも示されます。重複しますが,
証明
g [H, K] g-1⊂ [H, K] , g∈G であることを示せばよい [#]。
H, K がGの正規部分群なので,
h,h-1∈H,k,k-1∈K
とすれば,任意の g∈G について,
ghg-1=h'∈H, gkg-1=k'∈K
gh-1g-1=h-1'∈H, gk-1g-1=k-1'∈K
が成り立つ。すると,g [H, K] g-1の元について,
g(hkh-1k-1)g-1=(ghg-1)(gkg-1)(gh-1g-1)(gk-1g-1)
=h'k'h-1'k-1' ∈ [H, K] 証明終
そして,この命題を順に適用していけば,[*]の G(k) (k=0,1,…) が G の正規部分群であることが分かります。
[3]
例1 G=C4v=D4
G(1) =[C4v,C4v]={ e,c2 }=Z (G)
G(2) =[C4v,Z (G)]={ e }
C4v ⊃ { e,c2 } ⊃ { e }
なのでC4vはべき零群である。
[4] 可換群,可解群とべき零群との関係は次のとおりです。
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定理1 (1) 可換群はべき零群である。 |
証明
(1) 可換群では[G,G]={e}なので,べき零群である。
(2) 交換子群列と降中心列を比較すると,
G=G0 ⊃ G(1) ⊃ G(2) ⊃ ・・・ ⊃ G(k)={ e }
∪ ∪
G=G0 ⊇ D1(G) ⊇ D2(G) ⊇ ・・・ ⊇Dk(G)
であるが,
D1(G)=[G,G ] =G(1)
D2(G)=[G(1),G(1)] ⊂ [G,G(1)]=G(2)
・・・・・・・・・
Dk(G) ⊆ G(k)
である。したがって,
G(k)={ e } ⇒ Dk(G)={ e }
すなわち,G がべき零群ならば,Gは可解群でもある。(証明終)
[5]
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定理2 |
証明
G≠{ e } がべき零群であれば,ある k が存在して,
[G,G(k)]={ e }, G(k)≠{ e }
となる。すなわち,G のすべての元と可換な元からなる部分群 G(k) ≠{ e } が存在する。
したがって,Z(G) ⊇ G(k) ≠{ e } で中心は単位元以外の元を含む。 (証明終)
[6]
例2 対称群Sn(n≧3)
G(1) =[Sn,Sn ]=An
G(2) =[Sn,An ]=An
なので [#],Sn の降中心列は,
Sn ⊃ An ⊃ An ・・・・
となり,べき零群ではない。
例3 正四面体群 A4 については,
G(1) = [A4,A4]=H={ e,hx,hy,hz } ( クラインの4元群V )
G(2) = [A4,H]=H
したがって,正四面体群A4はべき零群でない。
[7] べき零群となる場合とならない場合の群表を比較すると特徴が分かります。↓
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可解群 ○ べき零群× |
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| 正四面体群 A4 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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可解群 ○ べき零群○ |
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| 2面体群 D4 (=C4v) |
[8] 可換群,可解群とべき零群の関係をベン図にまとめました。

D4:二面体群
Q8:四元数群
pr:位数が素数pのr乗の群
[10]
位数が23の群 C4vはべき零群ですが,一般的に次の定理が成り立ちます。
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定理5 p-群と呼ばれる位数 pn の群G はべき零群である。 ( p (≧2) は素数 ) |
略証
共役類 { e },Ai ( i = 1,…m ) の位数はいずれも | G | =pn の約数,1か pの累乗である。そこで,類等式,
pr=|G|=|{ e }|+|A1|+|A2|+・・・+|Am|
を考えると,この両辺がpで割り切れることから,共役類 Ai のうち少なくとも p−1個の共役類は位数が1でなければいけない。よって,すべてのGの元と可換な元は { e } と合わせて pk (≧2) 個となる。すなわち,Gの中心Z (G)=G(1) は複数 pk 個の元をもつ。 ただし,1≦k≦n 。
すると,剰余群 G/G(1) はGの位数はpp-k であって,再び,p-群になる。
したがって,同様の議論を G(s)={ e } に達するまで繰り返すことができるので,p-群G はべき零群である。
べき零群の別の定義を与える定理です。
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定理4 において,( Zk(G)= Zk と省略する。) 「 Zk+1/Zk が G/Zk の中心Z (G/Zk ) である。 」 (k=0,・・・,n-1) ことである。 このような正規部分群の列を昇中心列という。 |
部分群 Zi(G) の構成の仕方(定義)
Z0(G)={ e }
Z1(G) = { x∈G|∀g∈G に対してxgx-1g-1∈ Z0(G)={ e } }
=Z(G) ( =Gの中心:すべてのg∈Gに対して可換なGの元x )
ここで,Z1(G)はGの正規部分群であることはすでに示しています [#] 。
以下,次の条件を満たすように Zi(G) から Zi+1(G) を定義します。
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[A] Zi+1(G)= { x∈G|∀g∈G に対して xgx-1g-1∈ Zi(G) } |
[A]と[B]の定義は同値です。[B']は[B]のより具体的な表現です。
| Z1/Z0 =Z1 |
Z2/Z1 | Zi/Zi-1 | Zi+1/Zi | ||||||||||||
| { e }=Z0 | ⊂ | Z1=Z(G) | ⊂ | Z2 | ⊂ | … | ⊂ | Zi | ⊂ | Zi+1 | ⊂ | … | ⊂ | Zn=G | |
| Z(G/Z0) =Z(G) |
Z(G/Z1) | Z(G/Zi-1) | Z(G/Zi) |
例 C4v (D4)の昇中心列
[A]
Z0(G)={ e }
Z1(G)= { x∈G|∀g∈G に対してxgx-1g-1∈Z0(G)={ e } }
={e,c2 } ≡ E
Z2(G)= { x∈G|∀g∈G に対してxgx-1g-1∈Z1(G)={ e,c2 } }
= {e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}=G
[B]
Z0(G)={ e }
Z1/Z0=Z(G/Z0) (剰余群 G/{e}=C4v のすべての剰余類(=C4vの元)と可換な剰余類(=C4vの元))
={e,c2 }=E
Z2/Z1=Z(G/Z1) (剰余群 G/Eのすべての剰余類(gE)と可換な剰余類(xE))
={ E,C,X,D } 下の表を見よ↓
となるように
⇒ Z2={e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}=G
と定められる。
|
⇔ |
C= c1E= c3E={ c1,c3 } X=σxE=σyE={σx,σy} D=σdE=σdE={σd,σd'} |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| G/{ e }=G | Z2/Z1 |
最後⇒のところは,Z2/Z1={ E,C,X,D }の代表元をすべて列挙したことに等しいと考えれば,
[B'] の定義によるの求め方になり,
Z2(G)= { x∈G| xZ1∈{ E,C,X,D }=Z (G/Zi) }
={e,c1,c2,c3,σx,σy,σd,σd’}
と求められます。
一方,定理において,Zi+1が G の正規部分群の列であることは,
gxg-1Zi=(gZi)(x Zi)(g-1Zi)
↓ x Zi∈Z (G/Zi)
=(gZi)(g-1Zi)(xZi)
=xZi
これは,定義: Zi+1(G)= { x∈G| xZi(G)∈Z (G/Zi) } であるから,
gxg-1∈Zi+1(G) ⇔ x∈Zi+1(G)
つまり,Zi(G)が正規部群であれば,Zi+1(G)も正規部分群であることが分かります。
メモ
削除
[9]
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定理3 (1) G(i+1)⊇[G,G(i)] となる必用十分条件は, (2) Z (G/G(i+1))⊇G(i)/G(i+1) である。 |
| Z (G/G(i))) | Z (G/G(i+1)) | Z (G/G(i+2)) | ||||
| ⊃… | G(i) [G,G(i-1)] |
⊃ | G(i+1) [G,G(i)] |
⊃ | G(i+2) [G,G(i+1)] |
…⊃ |
| G(i-1)/G(i) | G(i)/G(i+1) | G(i+1)/G(i+2) |
証明
(1)→(2)
G(i+1)⊃[G,G(i)] であるならば,g∈G,h∈G(i) とすると,
(a) hG(i+1) は剰余類 G(i)/G(i+1) の元
であり,また,ghg-1h-1∈[G,G(i)]=G(i+1) なので,
G(i+1)=ghg-1h-1G(i+1)
=gG(i+1) hG(i+1) g-1G(i+1) h-1G(i+1)
つまり,両辺からhG(i+1) gG(i+1)をかけて,( G(i+1)は剰余類 G/G(i+1) の単位元 )
hG(i+1) gG(i+1)=gG(i+1) hG(i+1)
hG(i+1) は G/G(i+1) のすべての元 (=剰余類) と可換,すなわち,
(b) hG(i+1)∈Z (G/G(i+1))
(a),(b)より,
G(i)/G(i+1) ⊂ Z (G/G(i+1))
(2)→(1)
Z (G/G(i+1))⊃G(i)/G(i+1) であるとき,
g∈G,h∈G(i) とすると,G(i)/G(i+1) かつ,G/G(i+1)の元 (=剰余類) について,
ghg-1h-1G(i+1)=gG(i+1) hG(i+1) g-1G(i+1) h-1G(i+1)
=gG(i+1) g-1G(i+1) hG(i+1) h-1G(i+1)
=G(i+1)
つまり,[G,G(i)]の生成元 ghg-1h-1∈ G(i+1)である ⇒ [G,G(i)]⊂ G(i+1)
例4 C4v の降中心列と剰余群の中心との関係
| Z (G/G(1)) | Z (G/G(2)) | |||
| G(0)=G | ⊃ | G(1)=[G,G(0)] | ⊃ | G(2)=[G,G(1)] |
| G(0)/G(1) | G(1)/G(2) |
↓
| { E,C,X,D } | { e,c2 } | |||
| G(0)=D4 | ⊃ | { e,c2 } | ⊃ | { e } |
| { E,C,X,D } | { e,c2 } |
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⇔ |
C= c1E= c3E={ c1,c3 } X=σxE=σyE={σx,σy} D=σdE=σdE={σd,σd'} |
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| G=C4v | D4/E (可換群) |