| 9 共役類 | ![]() |
|
| f-denshi.com 最終更新日: 26/05/30 | ||
| [目次へ] | ||
| サイト検索 | ||
前ページは,右剰余類,左剰余類(同値類)を求めてから商群を構成しましたが,ここでは左右同時の働きによる同値類別について考えてみましょう。
[1] 5.で,群 G ={e,g1,g2,・・・,gn }が集合 M (M≠G) に働くことについて述べましたが,ここでは,G 自身への働き,つまり,M = G の場合について考えましょう。この場合の働きとは合成写像を作ることに相当します。その”働き方”は自由に考え出す(定義する)こともできますが,群論において重要なのは両側からの働きと呼ばれるもので, g,h∈G について
|
のように働き方(写像)を定義します。(写像の合成を意味する記号 ・ は省略可ですが,ここではわかりやすいように省略していません。)これがなぜ重要かというと,
「 g と h が可換ならば g(h) は恒等写像になる。」
からです。つまり,元の可換性を手掛かりに群の特徴を調べるに役立つのです。
[2] 他にも働きには,
G の左からの働き : g(h)=g・h, g∈G G の右からの働き : g(h)=h・g, g∈G
などが使われます。上の例が「働き」であることを定義 [#] に従って確かめて見ましょう。「左からの働き」については,g1,g2,h,e∈G として,g2(h)=g2・h に注意して,
(1) g1(g2(h))=g1(g2・h)=g1・(g2・h)=(g1・g2)・h=g1・g2(h)
(2) e(g)=e・g=g
となり,働きの2つの条件[#] を満たしています。「右・・」,「両側・・」についても同じように計算してみせることができます。
[3] 「 G の両側からの働き」 は共役という概念を導きます。
群 G の G上への両側から働き,すなわち,G から G への写像:g(h) = ghg-1 ∈ Gを考える。このとき, (1) ある固定した h∈G に対して定まる次のような G の部分集合 C(h): を 「h を含む 共役類」という。 (↑h の G軌道とも見れます。⇒ [#] ) (2) また,a に対して,ある g∈G が存在して, a=ghg-1 ,g∈G と表せるとき,a は h と 共役 という。 |
最後のところ,別の言い方をすると,
「 a が h に共役ならば,集合リスト:{ehe,g1hg1-1,g2hg2-1,・・・,gnhgn-1 } の中に a と等しいものを見い出せる。」
ということです。
もうひとつ重要なことは,どういうときに C(h)⊂G,( C(h)≠G ) となるかというと,リストの中に重複が起こるときと h と可換な元があるときの2つの場合です。つまり,
(A) g1hg1-1 = g2hg2-1 ( 重複が存在 )
(B) g2hg2-1 = g2g2-1h = h ( h と可換な元 )
などとなるとき,C(h)の大きさ(位数)はその分小さくなってしまします。
[4] また,
(1)共役は同値関係である[#] |
ことに注意して下さい。このことから a と b が共役ならば,これらは同じ共役類に属しており,C(a)=C(b)が成り立ちます。そして,「共役類によって,群 G は共通部分のない部分集合に分割,分類 」 されます。
(2)は軌道の定義[#]そのもので自明。(1)は,h,h',h",g,k∈Gとして,
(1) h=ehe-1 ⇒ h=ehe-1 [反射率]
(2) h=gh'g-1 ⇒ h'=( g-1)h(g-1)-1 [対称率]
(3) h=gh'g-1,h'=kh"k-1 ⇒ h"=(k-1g-1)h(k-1g-1)-1 [推移率]
と同値関係の条件を確められます。
[5] 正四面体群 A4 の例を調べてみます。
例えば,C(a2)≡{ ga2g-1| g∈G }=A を求めるために,G の群表[#]を見ながら下の表を作ります。
| g= | a1 | a2 | a3 | a4 | b1 | b2 | b3 | b4 | hx | hy | hz | e |
| g・a2= | b4 | b2 | b1 | b3 | hx | e | hy | hz | a3 | a4 | a1 | a2 |
| g-1= | b1 | b2 | b3 | b4 | a1 | a2 | a3 | a4 | hx | hy | hz | e |
| g・a2・g-1= | a3 | a2 | a4 | a1 | a4 | a2 | a1 | a3 | a4 | a1 | a3 | a2 |
この表から,
g・a2・g-1=a2 となるものは,
a2・a2・a2-1 =a2
b2・a2・b2-1 =a2
e・a2・e-1 =a2
ここでは,a2,b2,e は a2と可換なため3つの ga2g-1 が同一の値を与えています。
g・a2・g-1=a1 となるものは,
a4・a2・a4-1 =a4・a2・b4 =b3・b4 =a1
b3・a2・b3-1 =b3・a2・a3 =hy・a3 =a1
hy・a2・hy-1 =hy・a2・hy =a4・hy =a1
すなわち,g=a4,b3,hy の場合で ga2g-1 の重複がおきていることを確かめることができます。
この表からは,
C(a2)={a1,a2,a3,a4}
であることが分かります。他の C(a1),C(a3),C(a4) について同様の表を作って調べてもよいのですが,共役類が同値類であることを思い出せば,この表だけでも,a1,a2,a3,a4 の4つの元で一つの共役類になっていて,
C(a1)=C(a2)=C(a3)=C(a4)={ a1,a2,a3,a4 }
この集合 C(ak)は,「 ak を含む G-軌道である。」 (k=1,2,3,4) ことは,この集合を求めるプロセスから明らかです。
[6] 次にC(b2) についての計算を表にしてみましょう。
| g= | a1 | a2 | a3 | a4 | b1 | b2 | b3 | b4 | hx | hy | hz | e |
| g・b2= | hz | e | hx | hy | a3 | a2 | a4 | a1 | b1 | b3 | b4 | b2 |
| g-1= | b1 | b2 | b3 | b4 | a1 | a2 | a3 | a4 | hx | hy | hz | e |
| g・b2・g-1= | b3 | b2 | b4 | b1 | b4 | b2 | b1 | b3 | b4 | b1 | b3 | b2 |
この結果から,C(b1)=C( b2)=C(b3)=C(b4)={ b1,b2,b3,b4 }=B が一つの共役類となっていることが分かります。
↑ 赤で示した箇所を訂正しました (2025/09/01)
同様に,
| g= | a1 | a2 | a3 | a4 | b1 | b2 | b3 | b4 | hx | hy | hz | e |
| g・hy= | a4 | a3 | a2 | a1 | b3 | b4 | b1 | b2 | hz | e | hx | hy |
| g-1= | b1 | b2 | b3 | b4 | a1 | a2 | a3 | a4 | hx | hy | hz | e |
| g・hy・g-1= | hx | hx | hx | hx | hz | hz | hz | hz | hy | hy | hy | hy |
から C(hx)=C(hy)=C(hz)={ hx,hy,hz }=H が一つの共役類となっていることが分かります。
そして,最後に残ったすべての元と可換な e は,これ一つで一つの共役類 C(e)={ e } を作ります。
一般的にすべての元と可換な元はそれ一つで共役類となります。このような元は中心と呼ばれます。⇒ [#]
[7] 結局,正四面体群は次の4つの共役類に分割されることになります。
A={ a1,a2,a3,a4 }
B={ b1,b2,b3,b4 }
H={ hx,hy,hz }
E={ e }
ここで,各元の回転操作を思い出すと,不動の頂点から底面の正三角形を見て,
A は頂点を不変とする2π/3の右回転、
B は頂点を不変とする2π/3の左回転、
H は対辺の中点を通る軸の周りのπの回転、
E はすべて点を不変とする回転 (恒等変換)・・・・ [*]
に分類されていることが分かります。
正四面体群の元がこのように分類された理由は,線形代数における線形作用素のユニタリ変換(または直交変換)[#],
N=UMU-1 ・・・・ [**]
を思い浮かべるとよいでしょう。群の2つの元が共役であることの定義と同形となっています。
M,N は線形演算子(←線形代数に詳しくない人は,線形写像を表す行列と考えてください)で,U はベクトル空間の座標変換(=正規直交基底間の基底変換)を表すユニタリ演算子です。つまり,この式は,
ある座標系でMと表されている線形演算子を別の座標系へ座標変換すると,N=UMU-1 で表される。
ことを示しています。ただし,| U |=1とします。
そして,線形演算子M,N を回転演算子とすれば,[**]より N とM (=UMU-1) は座標系の取り方の違いだけで同じ内容をもつ演算子ということが分かります。
つまり,正四面体群 G=A4 の元を回転演算子とみなし,また,座標変換のユニタリ演算子も A4 の元に限定したとき,共役類とは,
座標変換でお互いに写り合えることのできる元どおしを集めた A4 の部分集合
となっているのです。その結果が,[*] に従うような分割となっているのです。
以上のような考察はいずれの正多面体群の場合に適用することができます。
つづく・・・
以下,つづくのため
|
|
| g= | a1 | a2 | a3 | a4 | b1 | b2 | b3 | b4 | hx | hy | hz | e |
| g・a2= | b4 | b2 | b1 | b3 | hx | e | hy | hz | a3 | a4 | a1 | a2 |
| g-1= | b1 | b2 | b3 | b4 | a1 | a2 | a3 | a4 | hx | hy | hz | e |
| g・a2・g-1= | a3 | a2 | a4 | a1 | a4 | a2 | a1 | a3 | a4 | a1 | a3 | a2 |
a4・a2・a4-1=b3・a2・b3-1=hy・a2・hy-1 =a1