105 調和振動子2
f-denshi.com  更新日:04/04/05
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1. N-表示

[1] 前ページで得られた固有ケット|n>は,N-基底{|0>,|1>,・・・|n>,・・・} を用いてベクトル表示すれば[#]

|n>= <0|n>  = 0
<1|n> 0
<2|n> 0
<n|n> 1

という n 行目だけが 1 で残りの成分はすべて 0 であるベクトルとなります。 また,ハミルトニアン,個数演算子は

H≡ 

h ω
2
0 0 0 0 ・・
0
3h ω
2
0 0 0 ・・
0 0 0 0 ・・
0 0 0
(2n+1)hω
2
0 ・・

  
 ;

N

0 0 0 0 0 ・・
0 1 0 0 0 ・・
0 0 2 0 0 ・・
0 0 0 3 0 ・・

 

と固有値を対角線上に並べた行列で表現できます[#]。この行列を用いて,

H|n>=En|n> : En=(n+1/2)h ω   ;   ω=(k/m)1/2
N|n>= n|n>  

という関係は簡単に確かめられます。

[2] 一方, 消滅・生成演算子 aa  をそれぞれ N-基底で表せば,

<n'|a|n>=<n'|
n
|n-1>=
n
δn'n-1       ・・・・・(1)
<n'|a|n>=<n'|
n+1
|n+1>=
n+1
δn'n+1       ・・・・・(2)

である[#]ので,

a <0|a|0> <0|a|1>  <0|a|2> ・・・
<1|a|0> <1|a|1> <1|a|2> ・・・
<2|a|0> <2|a|1> <2|a|2> ・・・
   :     :      : ・・・
 = 0 1 0 0 0 ・・
0 0
2
0 0 ・・
0 0 0
3
0 ・・
0

同様に

 a 0 0 0 0 ・・
1 0 0 0 ・・
0
2
0 0 ・・
0 0
3
0 ・・
0 ・・

[3] 位置演算子 x,運動量演算子 p は,x0=(h/mω)1/2 として,

x
h
2mω
aa)= x0 aa)     ・・・・・ [*]
2
pi
h
2
aa)=  i h aa)      ・・・・・ [**]   
2 x0

なので,(1)(2)を代入して xp のN-表示 ,

 <n'|x|n>=(h/2mω)1/2{n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1
      = 2-1/2x0{n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1
 <n'|p|n>=i (mhω/2)1/2{-n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1
      = i h2-1/2x0-1{-n1/2δn'n-1+(n+1)1/2δn'n+1

が得られます。

[4] 具体的な行列でかけば,

[xp の N−表示]

 x  
x0
2
0 1 0 0 0 ・・
1 0
2
0 0 ・・
0
2
0
3
0 ・・
0 0
3
0 ・・
0

 p  
i h
2 x0
0 -1 0 0 0 ・・

 ただし,

x0
h
1 0
2
0 0 ・・
0
2
0
3
0 ・・
0 0
3
0 ・・
0



2.期待値

[1] 基底状態の運動エネルギー,ポテンシャルエネルギーの期待値を計算します。まず[#],

<n|x|n>= x0 {<n|a|n>+<n|a|n>}=0  
2

同様に,<n|p|n> = 0 です。これは簡単ですね[#]

[2] 次は,[*] ,[**] 式から,

x2 x02 a2a†2aaaa)= h a2a†2aaaa
2 2mω
p2 h2 a2a†2aaaa)= −mωh a2a†2aaaa
2x02 2
x0 = (h/mω)1/2

これを基底状態のブラ・ケットではさんで計算するとき,第4項のみゼロとはない値をとる[#]ので(自分で確かめてみましょう)

<0|x2|0>=x02/2<0|aa|0>
     = x02/2<0|a|1>
     = x02/2<0|0>
     = x02/2
   および,
<0|p2|0>=h2/2x02

[3] これよりポテンシャルエネルギーと運動エネルギーはそれぞれ,[#]

<mω2x2/2>=mω2x02/4               ←  x02h/mω
         =hω/4      
 <p2/2m>  = h2/4mx02
        =hω/4      

全エネルギー E0hω/2  が運動エネルギーとポテンシャルエネルギーに hω/4 ずつ等分に分配されていることがわかります。  

[4] さて,分散と呼ばれる次のような量を定義します。

  <(Δx)2>≡<α|x2|α>−<α|x|α>2  
  <(Δp)2>≡<α|p2|α>−<α|p|α>2  

これは,x や p がある分布をもっているときに,そのバラつきの度合いを表すために指標として利用されているものです。

もし,x が唯一 x = x1 という同じ値しか取らなければ,分散は 0 となりますが,一方,x が平均値からはずれた値をとれば,とるだけ分散も大きな値をとるようになるという性質をもっています。

この分散を調和振動子においてもっともエネルギーの低い基底状態である |0> で計算してみると[#],

<0|x2|0>=x02/2  ,  <0|x|0>=0    ⇒   <(Δx)2>= x02/2
<0|p2|0>=h2/2x02  , <0|p|0>=0    ⇒   <(Δp)2>=h2/2x02

となります。不確定関係は,

<(Δx)2><(Δp)2> =(x02/2)・(h2/2x02)=h2/4

となります。励起状態も含めた一般の|n>の場合は,

<(Δx)2>= h (2n+1),  <(Δp)2>= h (2n+1)
2mω 2
<(Δx)2><(Δp)2>= n+ 1 h2
2

となります。


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xp=(ih/2)(−a2a†2aaaa
px=(ih/2)(−a2a†2aaaa