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4 多変数関数のEL-方程式 |
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3.では一つの’’変関数’’ y(t) についての変分問題について考えましたが,ここでは多変関数(ベクトル値汎関数)の変分問題への拡張を行ないます。
[1] 関数を成分とするベクトル,すなわち,
y(t)= x(t) y(t) z(t)
の集合を定義域とする汎関数(=ベクトル値汎関数),つまり’’多変関数汎関数’’の変分問題と呼ぶべきものを考えます。成分の数はいくつであっても議論の仕方は同じなので,ここでは3成分,x(t),y(t),z(t) として話を進めます。’’一変関数’’から ’’多変関数’’ への極値問題への拡張は普通の関数において1変数関数から多変数関数に拡張するときに偏微分なる概念を導入するのと同じように行います。
まず,3つのの独立した関数の組を並べたベクトルが,
y*(t)= x*(t) y*(t) z*(t)
であるとき,作用積分:
S[y(t)]= F[t,y(t),y’(t)]dt ← y(t)がベクトルであることに注意しましょう
に極小値(停留値)を与えるとしましょう。もちろん,被積分関数を,
F[t,y(t),y’(t)] ⇒ F[t,x(t),y(t),z(t),x’(t),y’(t),z’(t)]
と書いても同じです。
[2] そして,y(t)のある成分,例えば x(t) だけを取り出し,残りは,y(t)=y*(t),z(t)=z*(t)に固定して,次の汎関数,
S[y(t)]=J[x(t)]= F[t,x(t),y*(t),z*(t),x’(t),y*’(t),z*’(t)]dt
について,x(t,ε) =x*(t)+εη(t) とおいて,一変関数固定端変分問題とみなして,3.[#]と同じ議論を繰り返すと,x(t)に関するオイラー方程式,
Fx− dFx’ =0 dt
が得られます。
ベクトル成分,y(t),を考えるときは x(t)=x*(t),z(t)=z*(t) に固定して同様の議論をすれば,y(t) 関するオイラー方程式が得られることもわかります。これは”変関数”がいくつであっても繰り返すことができるのは明白です。すなわち,
定理
とするとき,y*(t)が次のベクトル値汎関数の極値を与えるならば,
y*(t)の成分: x*(t) ,y*(t),・・・,z*(t)は次の関係を満足する[必要条件]。
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ここでの議論において,x(t),y(t),z(t) が直交座標系の各成分を意味する必要性は全くありません。どんな座標系のどの成分であろうと,「オイラーの方程式」を満たしているのです。以上のことから,最初に[#]述べた「オイラー・ラグランジュ方程式の形が座標系によらない」という理由が説明されます。
[3] 最後に,関数の極値問題と汎関数の極致問題を比較した表を参考のために示しておきます。
定義域:X | 値域:Y | 停留値をとる α∈X |
極値条件: δf,δF =0 | |||||||||||||
関数:f | {x|実数} | y(x):実数 | x0 |
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汎関数:F | {y(t)|C2級関数} | S[y(t)]:実数 | y*(t) |
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