4-2 陰関数定理と逆写像定理
f-denshi.com   [目次へ]  最終更新日:22/10/14    校正中 
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藤岡先生と坪井先生の多様体のテキストのいいトコ取りをしてまとめてみた。

1. 陰関数定理


[1] 最初に用いる記号をまとめておきます。

ユークリッド空間 Rm+n の開集合U からユークリッド空間 Rn への Cr級写像を F とします。

F : Rm+n → Rn

ここで,u0∈U における ヤコビ行列の階数が n であるならば,座標の順番を適当に並び替えて,

x
x1
xm
 ∈ Rm , y
y1
yn
xm+1
xm+n
 ∈ Rn   ・・・ [1] 
F=
F1(x1,…,xm,xm+1,…,xm+n)
Fn(x1,…,xm,xm+1,…,xm+n)
F1(x,y)
Fn(x,y)
 ∈ Rn

と表したときの変数y に関するヤコビ行列式,

∂F
y
∂F1 ∂F1 ∂F1
∂y1 ∂y2 ∂yn
∂Fn ∂Fn ∂Fn
∂y1 ∂y2 ∂yn

u0=(p,q) ,p∈Rmq∈Rn において,

det ∂F (p,q ≠0
y

を満たすようにすることができます。     

また,Fのx に関するヤコビ行列を,

∂F
x
∂F1 ∂F1 ∂F1
∂x1 ∂x2 ∂xm
∂Fn ∂Fn ∂Fn
∂x1 ∂x2 ∂xm

とします。

[2] 以上の表記の下で,

陰関数定理

U上の Cr級写像 F(x,y) が,u0=(p,q) におけるy に関するヤコビ行列式が,

det ∂F (p,q ≠0
y

であれば,p を含むある開集合 V⊂Rm から Rn への Cr級の写像,y =φ(x) が存在し,

φ(p)=q
F(x,φ(x))=F(p,q)0  (=F(u0) ∈Rn )

を満たす。また,φの微分は,

φ’(x)=− ∂F (x,φ(x)) -1 ∂F (x,φ(x))
y x

で与えられる。 

ここで,(  )-1は,(  )の逆行列という意味。
また,φ(x)が存在するといっても初等関数で表記できるとは限らない。

この定理は初等解析学における陰関数定理⇒[#] を多次元化したものと考えることもできます。

実際,m=n=1 の場合,陰関数 F(x,y)=0 が与えられたときの陽関数,y=φ(x) の微分は,

φ’(x)=
dy
dx
=−
∂F
∂y
(x,y) -1

∂F
∂x
(x,y) =−
∂F
∂x
∂F
∂y

で与えられます。



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2. 逆写像定理と陰関数定理との関係

[1] まず,逆写像定理を示しておきます。

逆写像定理

Rm+n の開集合U から Rm+n への Cr級写像を f とする。u0∈U において,

det ∂f (u0 ≠0
u

であれば,f(u0) を含む開集合V 上で,f の逆写像 g  ( = f-1) が存在する。すなわち,

gοf=idg(V)    [g(V)上の恒等写像]
f οg=idV        [V上の恒等写像]

を満たすg が存在する。

また,f’の逆関数は,g’(v),v∈V で与えられる。

逆写像定理 ⇒ 陰関数定理

逆写像定理から陰関数定理を導くことができます。

[2] 表記を次のとおりとする。

x
x1
xm
 ∈ Rm , y
y1
yn
xm+1
xm+n
 ∈ Rn

f として,f: U → Rm+n〜Rm×Rn

f (x,y)=
x1
xm
F1(x,y)
Fn(x,y)
 =f(x,F(x,y))∈ Rm+n  ・・・ (1)

という形のものを考える。 ここで, F: U → Rn は

F(x,y)=
F1(x,y)
Fn(x,y)
 ∈ Rn

とする。

すると,f と F のヤコビ行列は,

∂f
u
1 0 ・・ ・・ 0 ∂F1 ・・・ ∂Fn
∂x1 ∂x1
 :    :    :       :
0 ・・ ・・ 0 1 ∂F1 ・・・ ∂Fn
∂xm ∂xm
0 ・・ ・・ ・・ 0 ∂F1 ・・・ ∂Fn
∂xm+1 ∂xm+1
 :    :    :       :
0 ・・ ・・ ・・ 0 ∂F1 ・・・ ∂Fn
∂xm+n ∂xm+n

および,

∂F
y
∂F1 ・・・ ∂Fn
∂y1 ∂y1
∂F1 ・・・ ∂Fn
∂xm+1 ∂xm+1
  :    :    :    :
∂F1 ・・・ ∂Fn
∂yn ∂yn
∂F1 ・・・ ∂Fn
∂xm+n ∂xm+n

とする。

[3] ここで,

det ∂F ≠0
y

であるとすると,

det ∂f =det En det ∂F ≠0
u y

であるので,逆写像定理より,

gof=idg(V)   恒等写像
fog=idV     恒等写像

を満足する Cr級の写像 (=f の逆写像)

g(v): V→U   v∈V ⊂ Rm+n〜Rm×Rn

が存在する。そこで,v=(XY),X∈RmY∈Rn として,

g(v)=g(XY)
   =(g(m)(XY),g(n)(XY))  (=(x,y) 

という表記を用い,これを(1)式,f(x,F(x,y))に代入すると,fοg=idV は,

fοg(XY)
=( g(m)(XY),F[g(m)(XY),g(n)(XY)] )=(XY)  ・・・[*]

と表される。ここで,両辺のRmの成分を比較して,

g(m)(XY)=X  ;  X∈RmY∈Rn

さらに,これを用いて,[*]のRnの成分を比較すると,

F(g(m)(XY),g(n)(XY))
   =F(Xg(n)(XY))=Y        (2)

[4]最後に記号を整えるために,

X → x
Y → F(pq)=F(u0)
g(n)(XY)=g(n)(x,F(u0)) ⇒ φ(x)

と置き換えれば,(2)式は,

F(x,φ(x))=F(u0) 

と書くことができる。つまり,陰関数定理のφを求めたことになる。


[5] 以上は逆写像定理から陰関数定理を導いたのですが,逆に陰関数定理から逆写像定理を導くこともできる。

陰関数定理 ⇒ 逆写像定理

見通しをよくするために,U∈Rm に対して,Cr級写像 F: Rn×U → Rn を

F(y,x)=f(x)−y      ← xy を1.陰関数定理 とはワザと逆に定義している。

とおくことにする。 ここで,

y ∈Rn
x ∈U ⊂ Rm
f (x)=
f1(x)
fn(x)
 ∈ Rn

である。さらに,f は,

f(p)=q    (つまり,F(q,p)=f(p)−q0  )

かつ,            

det ∂F (q,p)=  det ∂f (p)  ≠0
x x

を満たしているとする。

すると,陰関数定理を用いて,q を含むある開集合V から Rm への Cr級写像φ()=x が存在して,

F(y,φ() )=f(φ())−y0  ( =F(p,q) )

すなわち,

fοφ(y)=y   y ∈V

つまり,φは f の逆写像を与えていることが分かる。



つづく,・・・





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