B02 剛体の回転運動の記述
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1.角速度ベクトル

[1] 原点をOとする静止座標系Σ:{1,2,3}と剛体に固定され,その重心O'の周りを回転する動座標系,

Σ':{'1(t),'2(t),'3(t)} 

を考えます。(以下,黄色で動座標系 であることを示してます。)このとき,時刻 t の関数である任意のベクトルR (t)は,

R (t) =R11+R22+R33≡( R1(t),R2(t),R3(t))

または,         

R (t) =R ' + r
        =R'11+R'22+R'33 + r1'1+r2'2+r3'3  

と書くことができます(右図参照)。このベクトルを時刻 t で微分すると,

dR dR' dr1 '1 dr2 '2 dr3 '3+r1 d'1 +r2 d'2 +r3 d'3   ・・・ (1)
dt dt dt dt dt dt dt dt

動座標系の基底が時間の関数であることに注意してください。

[2] ここで,動座標系Σ'の基底として正規直交座標を選んでいれば,

'j'k=δjk      (j,k=1,2,3 )

も満足します。これを微分すると,

d'j 'k'j d'k =0    ・・・ (2)  
dt dt

となります。また,Σ'の各基底ベクトルの時間微分もベクトルなのでΣの基底の1次結合で表せるはずです。それを,

d'1 =a11e1+a21e2+a31e3
dt
d'2 =a12e1+a22e2+a32e3
dt
d'3 =a13e1+a23e2+a33e3
dt
    ・・・・・ (3)

と書くことにします。これらを(2)式に

d'j asj's
dt
d' atk'
dt

と表記して代入すれば,

asj's 'k'j atk'
=asjδsk+atkδjt 
=akj+ajk =0

という関係が得られます。つまり,係数 ajk は交代行列[#]の成分なので,

ω1≡a23 =−a32, ω2≡a31=−a13, ω3≡a12=−a21

とおくことができて,(3)式は形式的に,

d'1
dt
0 +ω3'2−ω2'3 0 ω3 −ω2 '1     ・・・ (3)'
d'2
dt
−ω3'1+0+ω1'3 −ω3 0 ω1 '2
d'3
dt
 ω2'1−ω1'2+0 ω2 −ω1 0 '3

と書き直すことができます。ここの右辺の交代行列が回転を意味していることはこのままではわかりにくいですが,ω1=ω2=0 とおいた,

d'1 = ω3'2 
dt
d'2 =−ω3'1
dt
d'3 = 0
dt

とすれば,右図のような'3 の周りの回転を表していることはわかりますね。

[3] さらに,角速度ベクトルと呼ばれる,

ω=ω1'1+ω2'2+ω3'3[ω1,ω2,ω3]    ・・・・・ (4)

を用いれば,(3)'式はベクトル積[#]を用いて,

d'j ω×'j                  ・・・・・ (3)”
dt

と書けます。これを(1)に代入すると,

dR dR' dr1 '1 dr2 '2 dr3 '3ω×(r1'1+r2'2+r3'3)  ・・・ (1)'
dt dt dt dt dt
   動座標系Σ'原点O'が静止座標系Σから見て静止していれば,
dR dr1 dr2 dr3 ω×r 
dt dt dt dt
もしくは,
dR dr ω×r   ・・・・・ [*]
dt dt

ここで,ベクトル R は動座標系で(=動座標の基底ベクトルだけを用いて)表されています。

2.慣性テンソル

[1] さて,ここからはベクトル R は剛体のある点をさす位置ベクトルとします。すると,剛体と一緒に回転する動座標系Σ'で成分表示した位置ベクトルr  は時間変化しない定ベクトルなので,[*] において,

dr =0
dt

すなわち,剛体内の点 R の速度V は,

V dR  =ω×           ・・・ (5)
dt

となります。

[2] 力学における原点O'に関する角運動量L は,剛体の密度をρ(r ),点R の速度をV として(5)を用いて,dV=dr1dr2dr3 として,

L = ρ(r )r ×V dV

と定義 [#]されます。 

   = ρ(r )r ×(ω×r )dV
           ↓ ベクトル三重積の公式 [#]
   = ρ(r ){(rr )ω −(rω )r }dV
           ↓ テンソル積で表現して [#]
  = ρ(r ){(rr )Eωr r (ω)}dV  
  ≡ I(ω)    ← 擬ベクトルです

ただし,I慣性テンソルといい,「角速度ベクトルω を角運動量L に対応させる線形写像」 です。また,E は3次元単位テンソルで,テンソル積: (bx )aab(x )[#] なる記号も用いました。

(rω)r r1r1ω1+r1r2ω2+r1r3ω3
r2r1ω1+r2r2ω2+r2r3ω3
r3r1ω1+r3r2ω2+r3r3ω3
                =  r12  r1r2  r1r3 ω1
r1r2   r22  r2r3 ω2
r1r3  r2r3   r32 ω3

角運動量を成分で書くと,

L1 ρ(r ) r22+r32 -r1r2 -r1r3 ω1 dV  
L2 -r2r1 r32+r12 -r2r3 ω2
L3 -r3r1 -r3r2 r12+r22 ω3

まとめると,

LI(ω) の成分表示 ]
L1 I11 I12 I13  ω1  ・・・・・・ [**]
L2 I21 I22 I23 ω2
L3 I31 I32 I33 ω3
[慣性テンソル]
    I ≡ ρ(r ){(rr )Er r }dV  
   Ijk ρ(r ){( r12+r22+r32jk−rjrk }dV   
* 一般に角運動量ベクトルと角速度ベクトルは同じ方向を向いていません。

[3] また,慣性テンソルの成分には名前がついていて,

  I11 ,I22 ,I33  慣性モーメント
−I12 =−I21
−I23 =−I23
−I31 =−I31
相乗モーメント(慣性乗積)

と呼びます。   r1=x,r2=y,r3=z と書いて,Ijk を書き下ろせば,

Ixx ρ(r )(y2+z2 )dV
Iyy ρ(r )(z2+x2 )dV
Izz ρ(r )(x2+y2 )dV
Iyz =Izy ρ(r )yzdV
Izx =Ixz ρ(r )zxdV
Ixy =Iyx ρ(r )xydV

ただし,dV = dxdydz。

   ここで,回転軸と平行な角速度ベクトルと角運動量ベクトルとは一般的には同じ方向を向いていないということを注意しておきます。例をあげておくと,2つの質量 m が質量の無視できる変形しない棒の両端に結びつけられている剛体を考えます。さらに棒の中心O'を右図のように45°で交わる回転軸が取り付けられており,剛体はその周りにのみ回転するとします。このとき,角運動量は質量を結ぶ棒に垂直であり,かつ,質量の速度ベクトルに対しても垂直となっています。このとき,角運動量の方向は回転軸とは45°の角をなし,その周り回転しています。角運動量は時間変化しているのです。

3.オイラーの方程式 [固定点の周りの回転運動]

[1] 慣性テンソルは対称テンソルなので,基底変換によって対角化可能です[#]。剛体に結びついている動座標系Σ'={'1'2'3 }として,慣性テンソルが対角行列になるような正規直交基底を選んでおけば,[**]は,一般性を失うことなく,

L1 I1 0 0 ω1 I1ω1
L2 0 I2 0 ω2 I2ω2
L3 0 0 I3 ω3 I3ω3
⇔    LI(ω)I1ω1'1I2ω2'2I3ω3'3                      ・・・ (6)

と表されます。ここで用いられる基底:{'1'2'3}を慣性主軸,慣性テンソルの固有値を,I1,I2,I3主慣性モーメントといいます。この慣性主軸を求めるための基底変換は,剛体に結びついている基底の変換なので,剛体の運動状態とは関係なく剛体が与えられれば計算ができるということは重要なことです。

 ω  =ω1'1ω2'2ω3'3  
 L  =L1'1L2'2L3'3 
I'j =Ij'j     ( j =1,2,3 ) 

これを,[*]式の導出と同様に(6)の微分を考えて, (L =I(ω))

dL I1 dω1 '1I2 dω2 '2I3 dω3 '3I1ω1 d'1 I2ω2 d'2 I3ω3 d'3   ・・・ (7)
dt dt dt dt dt dt dt

さらに(3)' を導いたときと同様に,                                                       

     =I dω '3ω×I(ω)
dt

と書けます。力学によれば,これは力のモーメントN に等しく [#],それを,

N  =N1'1+N2'2+N3'3 

とすると,オイラーの角運動方程式と呼ばれる回転の運動方程式が得られます。成分で表示すれば,

オイラーの角運動方程式
N1=I1 1 −(I2−I32ω3   ['1 成分]
dt
N2=I2 2 −(I3−I13ω1   ['2 成分]
dt
N3=I3 3 −(I1−I21ω2   ['3 成分]
dt
cf.  ベクトル積 x ×y =(x23−x32,x31−x13,x12−x21)
  ω =(ω1, ω2, ω3) 
I(ω)=(I1ω1,I2ω2,I3ω3)    

4.固定軸の周りの回転運動

[1] 時間に依存しない定ベクトル(=固定軸)u の周りの回転が,動座標系Σ' で, 

ω=ωu=ω(u1'1+u2'2+u3'3); |u|= 1
I(ω )=ωI(u )         ( ←  I の線形性より )

であたえられるとします。ここで,  

dI(ω )  =  I (u )
dt dt

すると,(7)式は次の様に書き換えられます。

dI(ω) I(u ) +(ωu )×(ωI(u ) )
dt dt
          =  I(u )+ω2{u ×I(u)}
dt

これは原点 O の周りの回転モーメントN に等しい。今の場合,回転軸は u に固定されているので,両辺 u との内積をとり,u ・{u×I(u )} = 0 であることに注意すれば,

uI(u)=uN                    [ 回転運動方程式 ]
dt

基底を慣性の主軸に選んでいいるので,

(u12I1+u22I2+u32I3)=uN    [ 回転運動方程式 ]
dt

さらに,u =(0,0,1) と第3の主軸方向にあれば,

 I3=N3                                 [ 回転運動方程式 ]
dt

となります。

成分では,

uI(u) =(u1,u2,u3) I11 I12 I13  u1
I21 I22 I23 u2
I31 I32 I33 u3
= u12I11+u22I22+u32I33+2u2u3I23+2u3u1I31+2u1u2I12

質点系の(ニュ−トンの)運動方程式は,質点jが質点 k から受ける力を fjk とすれば,質点 j の運動方程式は,

d(mjvj)  =fj fjk                            ・・・・・(1)
dt

原点Oに関する角運動量は,r とのベクトル積を考えて,

rj × d(mjvj)  (rj× fj) + ( rj×fjk)   ・・・・・(2)
dt

右辺の第2項を,j<k のときと k<j のときに分けてかくと

(rj×fjk)= (r×fjk)+ ( r×fjk)
k と j の記号を交換
                          = (r×fjk)+ (rj×fkj)
fjk=−fjk
                         = (r×fjk)+ −(rj×fjk)
                         = (rrjfjk=0

最後のところは,(rrj) と fjk は同じ直線上にある(物理法則)ので,そのベクトル積は 0 というわけです。

よって,(2)は,

d  {Σrj×(mjvj)}=Σj× fj      ⇔       dL  =N
dt dt

となります。ここで,

LΣrj×(mjvj)

と定義して,質点系の角運動量

NΣj×fj 

と定義して力のモーメントと呼びます。

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