a06   2次元膜の波動方程式
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[1] ここでは一定の張力 T で張られた面密度 ρ の2次元の膜の運動方程式は変位を u(r,φ) として次式で与えられます。

2u  = c2 2u 2u
∂t2 ∂x2 ∂y2

ここで右辺を2次元極座標, x=rcosφ,y=rsinφ, u(r,φ) ⇒ ψ(r,φ)  に直すと[#],

2ψ  = c2 2ψ 1 ∂ψ  1 2ψ     ・・・ (*)
∂t2 ∂r2 r ∂r  r2 ∂φ2

ここで,ψ(r,φ) = R(r)Φ(φ)T(t) とおいて,(*) に代入して整理すると,

1 T"(t)   =   R"(r) 1 R'(r) 1 Φ"(φ)
c2 T(t) R(r) r R(r) r2 Φ(φ)

と変数分離されることがわかります。 すなわち,左辺はt のみの関数,右辺は r と φ の関数で,この等式の両辺はこれら変数によらないある定数に等しくなければなりません。それを −k2 とおけば,

1 T"(t)  = −k2                               ・・・・・・・・・ (1)
c2 T(t)
R"(r) 1 R'(r) 1 Φ"(φ)  = −k2  ・・・ (**)
R(r) r R(r) r2 Φ(φ)

という2つの方程式に分解されます。 (**)式 はさらに,

r2 R"(r) + r R'(r) + k2r2 = − Φ"(φ)
R(r) R(r) Φ(φ)

と変数分離され,両辺の値がある定数 n2 に等しいとおくと,

r2 R"(r) + r R'(r) + k2r2 = n2              ・・・・・・・・ (2)
R(r) R(r)
Φ"(φ) = −n2                                   ・・・・・・・・ (3)
Φ(φ)

[2] 結局,(*)(1)(2)(3) の3式を解くことに帰着されますが,(1)(3) の一般解は,

T(t)  = a・cos kct + b・sin kct
Φ(φ) = cn・cos nφ + dn・sin nφ

となります。 ただし,a,b,cn,dn は任意定数です。  一方,(2)式,

k2r2 d2R(r) + kr dR(r) + (k2r2 −n2)R(r) = 0
k2dr2 kdr

は変数を z = kr と改めれば,

z2 d2R(z) + z dR(z) + (z2−n2 )R(z) = 0
dz2 dz

となります。 これの微分方程式はベッセルの微分方程式と呼ばれます。

ここでは,円形の薄膜の運動を例として,取り上げましたが,シュレーディンガー方程式をはじめとしてさまざまなラプラス方程式を「円筒対称」な境界条件下で考える場合に,「ベッセルの微分方程式」 が登場します。






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