110  スツルム - リウヴィル型微分方程式
f-denshi.com  更新日: 04/02/25

1.自己随伴形の微分方程式

[1] 次の形の2階微分演算子,

L ≡ P(x) d2  +Q(x) d  + R(x) 
dx2 dx

に対して,

M d2 P(x) − d  Q(x) + R(x) 
dx2 dx

随伴微分演算子と言います。

[2] いま,x の関数:p(x),q(x)を含む微分演算子,

L d p(x) d +q(x)  = p(x) d2 +p'(x) d +q(x)   ・・・・・ [*] 
dx dx dx2 dx

を考えると,その随伴微分演算子は,

M d2 {p(x)}− d {p'(x)}+q(x)
dx2 dx
    d p'(x)+p(x) d  −p''(x)−p'(x) d +q(x)
dx dx dx
   =p''(x)+p'(x) d +p'(x) d +p(x) d2  −p''(x)−p'(x) d +q(x)
dx dx dx2 dx
   =p(x) d2 +p'(x) d +q(x)
dx2 dx
L

となります。このように,M = L が成り立つとき自己随伴演算子と言います。


.スツリム - リウヴィル型微分方程式

[1] 自己随伴演算子を L とするとき,

L u(x) = λρ(x)u(x)         ・・・・・・ [**] 

スツリム - リウヴィル型微分方程式といい,これを同次境界条件

(1) u(a)=u(b)=0            [固定端境界条件]
(2) u'(a)=u'(b)=0           [自由端境界条件]
(3) u(a)=u(b),かつ u'(a)=u'(b)   [周期境界条件]

のいずれかで解くことをスツルム - リウヴィルの固有値問題といいます。

[2] 具体例をあげておきましょう。

(A) ルジャンドルの微分方程式  ( -1≦x≦1,n =0,1,2,・・・ )

d (1−x2) d y(x)+n(n+1) y(x) = 0
dx dx

(B) エルミートの微分方程式    ( -∞<x<∞,n =0,1,2,・・・ )

d exp(−x2) d y(x)+2n exp(−x2) y(x) = 0
dx dx

(C) ラゲールの微分方程式     ( 0≦x<∞,n=0,1,2,・・・ )

d x exp(−x) d y(x)+n exp(−x ) y(x) = 0
dx dx

(D) ベッセルの微分方程式     ( 0≦x<∞,n=0,1,2,・・・ )

d x d y(x)+(x−n2/x) y(x) = 0
dx dx

[3] これらの微分方程式はλが特定の値をもつときのみ解が求まります。解をもつときのλを固有値,それに対応する解を固有関数と言います。また,異なる固有値λ,λk に対する固有関数をそれぞれuj(x),uk(x)とするとき,次の積分,

Sjk ρ(x)uj(x)uk(x)dx

は同次境界条件の下では 0 となる特徴があり,この性質を固有関数の直交性といいます。これを示すには,[**] からすぐわかる,

uk(x) L uj(x) = uk(x)λjρ(x)uj(x)  
uj(x) L uk(x) = uj(x)λkρ(x)uk(x)  

を辺々引いて,区間[a,b]について積分すると,

{uk(x)Luj(x) −uj(x)Luk(x) }dx = (λj−λk)Sjk    ・・・ [***]    

となりますが,この左辺[*] を用いて,

uk d p(x) duj +q(x)uj −uj d p(x) duk +q(x)uk dx
dx dx dx dx
uk{p'u'j+pu''j}−uj{p'u'k+pu''k dx
p{uku''j−uju''k}+p'{uku'j−uju'k dx
   ↓   {uku''j−uju''k}= d {uku'j−uju'k
dx
p(x){uk(x)u'j(x)−uj(x)u'k(x)}

したがって,同次境界条件 (1)(3) いずれの下においても,最後の式は0となることがわかります。

すなわち,[***] はλj≠λk ならば,λj−λk で両辺を割って,Sjk =0 であることが分かります。

さらに各固有関数について,任意定数をかけて[#],

ρ(x)uj(x)u(x)dx = 1  (j =0,1,2,・・・ )  

としておけば,固有関数の直交性はδ関数を用いて,

Sjk ρ(x)uj(x)uk(x)dx =δjk

と表すことがができます。

(縮退の話はここでは省略します。)



[目次へ]