2-2 複素指数関数と対数関数
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.指数関数と対数関数

[1] オイラーの関係式[#]にもとづいて複素数上で指数関数: z ⇒ w =ez  を定義することができます。その際,z =x+yi はオイラーの関係式を用いた計算で,

w =ex+yi = ex・eyi =ex(cosyi siny)=(excosy)i (exsiny)

のように一つの複素数に対応させることができます。このとき,指数関数の定義域は複素数全体となります。1次関数を調べたときに倣って,z平面上の直線がどのようにw平面上へ移されるのか調べてみましょう。

ケース1  Re(z) = 1 のとき,すなわち,z平面で,

 x = 1,  -∞≦y≦+∞

と表される直線(右図の赤い垂直線)は,指数関数によって,w平面上の

w =e(cosy+i siny),

に移されます。すなわち,極表示 w=r(cosθ+i sinθ)で,

r = e (一定),  -∞≦θ≦+∞

なる円(下図の赤い円)に移されます。ただし,m=整数,0≦y0<2πとして,

(x,y)=(1,y0+2mπ) (r,θ)=(e,y0)
(無限個の点) (一点)

となるので,これは1対1写像になっているわけではありません。虚数方向に2πの周期性をもっています。

ケース2  y =y0 ,0≦y0<2π のとき,すなわち,z平面で,

-∞≦x≦+∞, y =y0

と表される直線(右図のの水平線)は,指数関数によって,w平面上の

w =ex(cosy0i siny0),

に移されます。すなわち,極表示 w=r(cosθ+i sinθ)で,

0< r ≦+∞, θ= y0 (一定)

なる半直線(の直線)に移されます。ただし,n=整数,0≦y0<2πとして,

(x,y)=(x,y0+2mπ,) (r,θ)=(ex,y0)
(無限本の直線) (一本の半直線)

となるので虚数方向に2πの周期性をもっています。

[2] ケース1でみた周期性と合わせて,

指数関数は虚数軸方向に周期性をもつ:

     ez+2πmi = ez

図中のz平面の灰色の無限個に分かれた領域はw平面のひとつの灰色部分にすべて移ってきます。

[3] 複素数上の対数関数は指数関数の逆関数として定義します。すなわち,

z=ew   ⇔  log z=w 

このとき,実数上では正の実数に限られていた対数関数の定義域が,複素数上では 0 を除く複素数全体,つまり,マイナスの実数に対しても対数が定義可能になっていることに注意しましょう。

これは log(-1) のような値(図のの点)を考えることが可能になったことを意味しています。

[4] また,複素数上で指数関数が∞対 1 の対応を示すことから複素数上の対数関数は,1対∞ の対応を示します。すなわち,複素数上では対数関数は多価関数なのです。例えば,-1 に対して,

 log(-1) =πi+2mπi  ⇔ −1 = eπi+2mπi   : m=整数

と無限に多くの個数の値が対応します。

問題によっては多価関数として取り扱うことが煩雑なだけで意味がないときもあります。そのようなときは対数関数の値域を,−π<Im(logz)≦πに制限して考えます。この領域に指定した値を対数関数の主値といい,Log z と書きます。

最後に実数上と複素数上の指数関数,対数関数の定義域,値域の関係を一覧表にまとめておきます。

関数 定義域 値域
実数 指数 実数 正の実数
対数 正の実数 実数
複素数 指数 複素数 0以外の複素数
(マイナスの実数含む)
対数 0以外の複素数
(マイナスの実数含む)
複素数

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