106 シュレーディンガー方程式の形式解
f-denshi.com  更新日: 05/04/05      
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1.時間推進演算子

[1] まず,時間依存のシュレーディンガー方程式,

ih |ψ,t>=H|ψ,t>                    [ シュレーディンガー方程式 ]                
∂t

の両辺を見比べて見ると,ハミルトニアン演算子 H は,

Hih d
dt

に等価であると考えられます。このことを念頭に時刻 0 から微小時間 t 経過したときの時刻 0+t  のケット|ψ,t> をマクローリン展開 [#] してやると,

 |ψ,t>=|ψ,0>+ t d  |ψ,0>+ t2 d2  |ψ,0>+・・・・+ tn dn  |ψ,0>+・・
1! dt 2! dt2 n! dtn
            ここで,演算子:  Hih d ,つまり,  d  =− i H   と置き換えると,
dt dt h
      = |ψ,0>+ (-i H/h)  |ψ,0>+ (-i Ht/h)2  |ψ,0>+・・・・+ (-i Ht/h)n  |ψ,0>+・・
1! 2! n!
      = 1 + (-i Ht/h)  + (-i Ht/h)2  +・・・・+ (-iHt/h)n  +・・  |ψ,0>
1! 2! n!
      ≡ exp -i Ht  |ψ,0>
h

のように書き換えられます。 最後の ’≡” は無限級数を形式的に指数表示で書いているだけです。

ただし,   dn  |ψ,0>は, dn  |ψ,t> の t=0 における値を意味することとします。
 dtn dtn

[2] すなわち,時間依存性の状態ケットは,

|ψ,t>≡exp -i Ht |ψ,0>
h
 
    =U(t)|ψ,0>

の関係が得られます。この U(t) は時間推進演算子と呼ばれるものです。

U(t)≡exp -i Ht
h



2.シュレーディンガー方程式の形式的な解

[1] シュレーディンガー方程式の解を次の3つの場合に分けて解くことを考えます。

(I) H が時間によらない U(t)=exp[−iHt/h]
(II) 各時間の H が t と交換する
U(t)=exp[−i dt1Ht1/h]
(III) 各時間の H が t と交換しない U(t) ⇒ S マトリックスによる[#]

(I) 時間と独立な H の場合の形式解は,

|ψ,t>≡exp[−iHt/h]|ψ>

となります。

[AH]=0,⇒ A H と同時固有ケットを持つ,すなわち,

H|Ak>=Ek|Ak

と書けるならば,

exp[−iHt/h] =ΣΣ|Ak><Ak|exp[−iHt/h]|Aj><Aj|

         =ΣΣ|Ak>exp[−i<Ak|H|Aj>t/h]<Aj|  

                =ΣΣ|Ak>exp[−i<Ak|Ek|Aj>t/h]<Aj|

         =Σ|Ak>exp[−iEkt/h]<Ak|

よって,

|ψ,t>=exp[−iHt/h]|ψ,0>

     = Σ|Ak>exp[−iEkt/h]<Ak|ψ,0>

        = Σ|Ak>ck(t)

ここで,

ck(t)=exp[−i Ekt/h]<Ak|ψ,0>         ← ck(0)=<Ak|ψ,0> です 
      =ck(0)・exp[−i Ekt/h]

は|ψ,t> を 完全直交基底{|Ak>} で展開したときの展開係数なっていることに注意してください。つまり,物理状態の時間発展の様子は,すべてこの係数の時間発展として記述されているのです。

(II)(III) ⇒ 摂動論のところで




  つづく,・・・・


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