4-4 埋め込み・はめ込み
f-denshi.com    [目次へ] 最終更新日:21/07/06  校正中
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[1] まず,部分多様体の定義を再掲しておきます。

定義  部分多様体

m次元 Cr級多様体 Mの部分集合N (N⊂M) の任意の点p に対して,p を含む Nの座標近傍 (U;x1,x2,…,xn ) が存在して,

N U={ (x1,x2,…,xm )= (x1,x2,…,xn,0,…,0) }

と表すことができるとき,N を Mの n次元 Cr級部分多様体という。 

難しい用語は含まれていませんが,多様体(位相空間)が自由に伸び縮みする (距離が入っていない) 空間 ということから注意すべき点がいくつかあります。

[2] ここで,ある多様体N を多様体Mの部分集合に対応させることを考えてみましょう。


具体的に2次元 C級多様体N として,2次元ユークリッド平面 R2を考えると,

(A) x1軸        (N) ,
(B) 半径1の円 (N’) 

はR2の1次元部分多様体であることは容易に分かります。

(B)の場合,x1>0の領域であれば,そのx2成分を用いて,(x2,0) を局所座標とすればよい・・・。

そこで,多様体N としての直線R から部分集合 N,N’上への写像を直感的に考えてみます。

(A)は埋め込みと呼ばれる写像なのですが,直線RをR2の x1軸にぴったりと合わせてやれば,位相も含めて1対1に重ね合わせられることは直感的にすぐに分かります。つまり,

f: t∈R  ⇒ (t,0)∈R2

(B)は直線R を,

g: t∈R  ⇒ (cost,sint)∈R2

によって写しており,直線がR2の円の中に巻きつくように収納されていることが分かりますが,g(x)=g(x+2π) の周期性があり,1対1写像ではありません。

よって,(A)と(B)とでは,明らかに状況が違うので区別して考える必要があります。

局所的に制限してみれば,(B) も1対1写像になっているので,(A)は(B)の特別な場合として分類することができます。

そこで,(B)のような写像が満たす最低限の条件として,はめ込みを定義します。


[3]

定義   はめ込み

多様体NからMへのCr級写像 g が,すべての点p∈N において,gの微分

(dg)p: Tp(N) → Tf(p)(M)

が1対1写像であるとき,g をNからMへのはめ込みという。

具体的には,(dg)p の行列表現が [*] ’で示したヤコビアン(Jg)p の階数がNの次元nであるとき,g をはめ込みといいます。g が局所的に1対1対応するための条件です。gは全域では1対1である必要はありません。

[4] 特に多様体N の像がMの部分集合である曲線C(t) であれば,

命題

Cr級写像g が曲線C(t) で表される多様体Mへのはめ込みであるための必要十分条件は,

dC(t) 0   t∈C
dt

が成り立つことである。

これを (B)について確かめてみると,t∈R について

C(t)= g(t)= g1(t) cos t ⊂R2
g2(t) sin t

であるから,

(Jg)p
∂g1 (p)
∂t
−sin t
∂gn (p)
∂t
cos t

となって,これはすべての t ∈Rに対して 0 とならない(階数は2)。つまり,(B)はめ込みです。

(A)も t∈R について,

f(t)= f1(t) t
f2(t) 0
(Jg)p 1 0 
0

なので,これははめ込みです。またこれは埋め込みでもあることは後で示します,

[5] 次に埋め込みの定義です。

定義

N からM へのはめ込み f の像f(N) に M の相対位相 [#] を入れて,f が同相写像であれば,f を埋め込みという。

(B)の場合で確かめると,

f: t∈R  ⇒ (t,0)∈R2

が通常の実数の位相において,同相写像であることは自明ですね。

[6] 別の定義です。

定義  

n次元Cr級多様体N から m次元Cr級多様体 M への写像

f : N ⇒ M

Cr級微分同相写像であるとき,f(N)をCr級の埋め込みという。

「多様体Nの埋め込みは,多様体Nと同じ次元かそれ以上の次元の多様体 (n≧m) でなければならない」 ことは定義からすぐに分かります。

[7] 部分多様体と埋め込みとの関係

命題

m次元 Cr級多様体M の n次元 Cr級部分多様体 [#] を N とするとき,包含写像,

i : N ⇒ M

はCr級の埋め込みである。

要するに,N を f で M に埋め込むことができれば,f(N) は M の部分多様体となっているということです。





[8] 2次元多様体のはめ込み・埋め込みの例をあげておきます。

2次元多様体
同色矢印の辺を同一視
2次元 3次元 4次元
 円柱側面 R2へ埋め込み可能
 メビウスの帯 R3へ埋め込み可能
この動画
で見える化
(外部サイト)
 クラインの壷 R3へはめ込み可能 R4へ埋め込み可能

ボーイの曲面
(外部サイト)
 射影平面RP2 R3へはめ込み可能 R4へ埋め込み可能




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