B1 回転座標系とコリオリの力
f-denshi.com   [目次へ] 最終更新日:03/05/05
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[1] 直交座標系 Σ を正方向へ θ 回転した座標系を Σ'とします。平面上の点P のそれぞれの座標系での成分が,

Σ 静止座標系で  r x
y
Σ' 回転座標系で  R X
Y

とすると,正方向へのθ回転行列をP(θ)を用いて,r =P(θ)R ,(R =P(-θ)r )となります。成分では,

x cosθ -sinθ X
y sinθ cosθ Y

もし,時間t とともに座標系Σ' がΣに対して角測度ωで回転しているとすると,θ=ωt として,

x cosωt -sinωt X  ・・・・ [*]
y sinωt cosωt Y

[2] 時間 t で一回微分すると

dx
dt
=ω -sinωt -cosωt X cosωt -sinωt
dX
dt
dy
dt
cosωt -sinωt Y sinωt cosωt
dY
dt

もう一回微分すると,

d2x
dt2
=ω2 -cosωt sinωt X +2ω -sinωt -cosωt
dX
dt
cosωt -sinωt
d2X
dt2
d2y
dt2
-sinωt -cosωt Y cosωt -sinωt
dY
dt
sinωt cosωt
d2Y
dt2

整理すると,

d2x
dt2
cosωt -sinωt
2X−2ω dY d2X
dt dt2
  ←少し工夫していますよ,注意!
d2y
dt2
sinωt cosωt
2Y+2ω dX d2Y
dt dt2

[3] この両辺に質量として m をかけ,ニュートンの運動方程式 ( F=mx'' ) を思い起こせば,左辺は,

m・ d2x
dt2
fx
m・ d2y
dt2
fy

つまり,「静止座標系Σにおける力 f の各座標成分」と見ることができます。 一方,右辺の列ベクトルを,

−mω2X−2mω dY +m d2X
dt dt2
FX
−mω2Y+2mω dX +m d2Y
dt dt2
FY

とおけば,これを「回転座標系から見た力F の各座標成分」とみなすことができます。なぜならば,回転行列を用いて,

fx cosωt -sinωt FX
fy sinωt cosωt FY

と表記できるからです。(↑ 回転する座標系間の座標成分の変換式[*]を参照して見てください。)

[4] ここで力が 0 である場合 ( fx=fy=FX=FY=0 ) を考察します。そのとき,運動方程式は各座標系で,

0
m d2x
dt2
    [静止座標系]
0
m d2y
dt2
2X
2mω dY
dt
m d2X
dt2
     [回転座標系]・・・・[**]
2Y
−2mω dX
dt
m d2Y
dt2
遠心力 コリオリの力

となります。これを解くと,静止系ではよく知られているように等速直線運動 (x'=定数,y'=定数) を表す解が得られます。ところが,回転座標系で解くべき方程式は1回微分の項を含む複雑な2階微分方程式であり,一般には複雑な加速度運動が予想されます。

  [**]のように書いた回転座標系の運動方程式の左辺が実在の力(重力,静電引力など)が存在しないもかかわらず 0 とならず,回転座標系では質点に加速度が生じているのです。この加速度を生じさせる見かけの力はふつう2つに分解して,

[**] の第1項を遠心力,第2項をコリオリの力

と呼びます。

 




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